前編はこちらから
困難続くよどこまでも
夕陽を見ながらビールを飲んでいるとタンクトップ姿が似合う村人が現れた。
どうやら彼が僕達のガイドをしてくれる漁師のようだ。
彼はピーシェと名乗った。
彼は英語が全く分からない為、オニギリに通訳をしてもらいながら釣りの状況を聞く。
ピーシェ:正直・・・言いますと既にシーズンは終わりかけています。釣るのはかなり難しいかもしれません・・
一同:え・・・・・・
俺たちは耳を疑った。
どうやら僕達が来た時期はシーズンが終わりかけていたようだ。
三年越しでやっと来たっていうのにコレかよ!!!
ピーシェ:でも、あなた達ならきっとムベンガを釣る事ができるかもしれない。その為なら私も全力で協力します!!!
ピーシェ良いやつジャン!!!
その言葉に気分を良くした大ちゃんは持ってきたビールを2本ピーシェに差し出した。
大ちゃん:エエ奴そうやし、明日から頑張ってもらうからビールあげよか
感動したピーシェは「家に帰って嫁と飲む」と言って嬉しそうに小走りで帰っていった。
ピーシェが帰った後、若干テンションが落ちたのは言うまでもなく・・・ビールを飲み続けた。
僕は全身に悪寒を感じ、皆より早めにテントに潜り込み眠りについた。
翌朝、全身の寒さに耐えかねて目が覚める。
昨日の悪寒は発熱の前兆だったようだ。
海外釣行をしてきて熱が出たのは初めてかもしれない。
コンゴへ来て5日目、ようやく釣りが出来ると思ったのに熱で今にもダウン寸前である。
皆はと言うとやっと釣りが出来る嬉しさでテンションがおかしかった。
それに水を差すのも悪いわけで、僕は熱の事は言わず黙って釣りの準備をしたのだが、ここに来てトラブルが発生する。
当初、ボートを2艇用意しろと頼んでおいたのだが、用意されていたのは1艇のみ。
丸太をくり抜いたような永細い木製のボートに僕達4人とピーシェ、それに操船のサンブーン、通訳のオニギリの計7人が乗るという。
あり得ない!!!あり得なさすぎる。
もう一艇ボートを用意するようエヴリンに掛け合ってもらうも答えはNOだった。
この時点で2名は釣り竿が出せない状態が確定した。
何故なら流れの中で餌を流して釣りをする為、釣り人が多いと仕掛けが絡んで釣りにならないからだ。
ヤプは釣りをしないから良いとして、3人の間隔を上手くとってやらないとストレスが溜まってしまう。
とりあえず釣行初日は様子見でブラックウォーターの流れる支流へ向かうことにした。
支流は見た目には魚が居そうな雰囲気を漂わせ、ムベンガが潜んでいそうなポイントがいくつもあり期待が持てた。
まずはルアーで攻めようとボートを岸に接岸させそこからキャスティングでムベンガを狙う。
僕は体調がかなり悪く、椅子に腰かけたままルアーもキャストせず彼らの様子を眺めながら意識は朦朧としていた。
深場を探るディープクランクを投げていた大ちゃんに魚がヒットした。
大ちゃん:来た!!!魚や!!!
引っ手繰るような引きはまさしくムベンガであると推測できた。
しかし掛りが浅かったのか上がってきたのはルアーだけだった。
釣れなかったにしてもルアーにムベンガは反応する。
それが分かっただけでも苦労してここまで来た僕達には嬉しい出来事だった。
しかしその一匹以降、当たりは一切ないまま数時間が過ぎた。
もちろん僕はこの間もずっと寝ていたのだけど。
ルアーはかなり難しいと悟った僕達は漁師から活きの良いナマズを数匹購入し、餌釣りで釣る案に方針を変更。
生き餌は基本的に漁師から買取るのだが、一匹100円位で良い餌になると500円もした。
完全にボラれてる感は否めなかったが、これを購入しないと泳がせ釣りは成立しない為、渋々購入した。
仕掛けは魚の鼻穴にシングルフック1本を刺し、トレブルフックを背中、脇腹、尻尾の3か所に魚が弱らない程度で刺し流れに乗せて泳がせる。
ウキは誘導式にして深さの調節ができるようにした。
本流に出た頃には既に夕陽が見えていた為、沖に出ず岸際に接岸して餌を流して待った。
当たりは一向に無い。
それどころか本流は漁師や物資や人を満載した船の往来が激しく、僕達が釣りをしているのが目に入っていても仕掛けの上を通って行ったり、仕掛けをボートで絡みとったりして釣りにならなかった。
釣行初日にもかかわらずかなりイライラした。
その夜、僕達とオニギリは明日のプランについて話をしながらビールを飲む。
俺:明日は沖に出る。ブラックウォーターと本流の境目で釣りをするからアンカーを用意してほしい
オニギリ:わかった
サブ:魚を生かせるように生簀がほしい
オニギリ:わかった
やぷ:ちゃんとしてほしい
オニギリ:わかった
大ちゃん:皆飲もうぜ!飲もうぜ!イェーイ
オニギリ:わかった
その夜、風が強い事に気づき目が覚める。
テントに叩き付ける風が耳障りで眠れない。
ヤプはと言うと自分だけ蚊帳を持参し、その中で寝息を立てて眠っていて殺意しかない。
しばらくすると風は止み、当たりは静かになったと思ったらゴーッゴーッと遠くからものすごく大きな突風がこちらに向かってくる気配を感じた。
数秒後、吹っ飛ばされそうなくらいの突風がテントを叩き付けた。
嫌な予感しかしないが睡魔に勝てず、僕はそこからウトウトしだし眠りについてしまった。
やぷ:おいしげる!!おい!!しげる!!やばい、テントやばい!!起きろ!!
必死の声に目を覚ました僕は何事かとやぷの方を見ると必死にテントの骨組みを支える姿がそこにはあった。
俺:お前寝ろよ!!いい加減にしろ!!!寝ろ!!!
やぷ:おまえいい加減にしろ!wwww!テント壊れる!!wwwさっきの突風でペグが吹っ飛んだ!!お前も支えろ!!
俺:ふーん、俺眠いから寝るわ・・・・
やぷ:おいwww横雨でテント浸水してるんだぞ!!起きろ!!
浸水の言葉に反応し、起き上がるとテントに放置していた電気製品を安全な防水バッグに梱包をしだす。
やぷ:梱包してる場合じゃねえwwwテントマジで吹っ飛ぶぞ!!!はやくしろ!!!
やぷの危機迫る叫びに梱包を完了した僕もテントを必死で抑えた。
マジで嵐wwwww
どうなんのこれwwwww
既にテント内は水浸し、濡れていないのはエアマットの上だけだった。
やぷと僕は全ての荷物をエアマットの上に置き、体操座りをしたまま夜明けを待った。
翌朝、昨夜の浸水事件から一睡もできないままテントから這い出し、ずぶ濡れになった衣類を無言で干す。
サブや大ちゃんはあの嵐の中、大丈夫だったのか?と聞くと「面倒だったから寝た」らしい。
大ちゃんに至っては寝ている間、ノイズキャンセル機能付きイヤホンをして寝ている為、テントの危機に気づいていなかったようだ。
朝食後、準備が整い全員がボートに乗り込み出船する。
昨日の打ち合わせ通りに川の合流地点で釣りをする。
ここでピーシェ、オニギリ、サンブーンの3スタッフは救命胴衣を着ているのだが、僕達の分が無い事に気づく。
やぷ:なんで俺らの救命胴衣ないの?ここ深いし危ないだろ?
オニギリ:我々は泳げないけど日本人は泳げるでしょ?だから貴方達の救命胴衣は我々が着用しますので
意味が分からないwww何なのこいつら。
大体お前ら日本人と接触したのは今回が初だろ!?
漁師のピーシェが泳げないってどうゆう事なのwww
子供達とかスゲー泳いでたじゃん!!!
僕達の命より自分の命を最優先する優秀なスタッフ達。
活き餌を確保し、合流点に到着すると流されないようにアンカーを投げ込むようオニギリに指示を出す。
アンカーがあるのと無いのじゃ大違いなわけで、これで昨日よりマシな釣りが出来る。
オニギリが勢いよくアンカーを投げ込むとロープが水中へ吸い込まれていった。
アンカーが着底し、テンションが掛かった所でブチっと大きな音がした。
アンカーロープがぼろ過ぎて結束部分から千切れてしまった。
呆然と沈んでゆくアンカーロープを見つめる一同。
俺:おい!!!泳いで取れ!!急げ!!!オニギリ!!!
オニギリ:泳げないんで無理かな・・・
サブ:え・・一番やばい奴ですよこれ・・・・
大ちゃん:まじありえへんwwなにやってんのオニギリwww
やぷ:まじでちゃんとしてほしい・・・・
一同:で、これからどうするの・・・釣りできないじゃん・・・・
ボート内に暗雲が漂う。
オニギリ:とりあえず村へ帰ってアンカーになる物とアンカーロープを探しましょう・・・
ポイントへ到着後、アンカーとアンカーロープの紛失で即座に村へ帰り必要な物資を調達に走った。
オニギリ:あの、アンカーロープは非常に貴重なのでお金が必要です。ですのでお金出して下さい。
お前らがしっかりしないから無くなったんでしょうよ!!!wwwww
怒り心頭である。
しかしアンカーもアンカーロープも無くては良い場所で釣りが出来ない。
こんなところでケチケチしている場合ではない。
事態は急を要するのだ。
結局集まった物資は土嚢袋に石を詰め込んだアンカーの代用品と柔道帯の長さの紐を繋ぎまくったアンカーロープ約15mのみだった。
俺:おい、こんな短いとアンカーロープの意味なくね?ポイント入れないんじゃね?
オニギリ:村人もロープは貴重で余っているものしか売ってくれなかった。我慢してほしい
一同:我慢て・・・・・・・・
グダグダ言っていても仕方ない。
無いものは無いのだ。
不満たらたらだけどな!!!!
気を取り直し、再度ポイントへ入る。
遂に現る怪魚最高峰ムベンガ
ピーシェ曰く、支流の黒色と本流の茶色の水がぶつかり合っている境目に小魚が集まっている為、そこにムベンガが集まるという。
とりあえず言われた通りに境目に生餌を流す。
こんなのでほんとに来るのかよ?と思っていたらソッコーで大ちゃんにヒットした
大ちゃん:来たー!!!ジャーンプ!!!
ムベンガは勢いよく弧を描きながらジャンプを繰り返し、そしてフックアウトし逃げられた。
惜しい惜しすぎる。
大ちゃん:やっぱ気抜いたらあかんなwwww
その後も大ちゃんに何度か当たりがあるもののランディングには至らず、夕方になり納竿の時間が迫っていた。
生簀で泳がせていた餌も底をつき、サンブーンが近くで漁をやっているオヤジを口笛で呼びつける。
明日の餌の事も考えて少し多めに購入することにした。
魚を物色すると見慣れないブサカワ系の魚(モルミルス)に目が行く。
ピーシェ:この魚がムベンガに超良いです。これはすごくいい匂いと微弱電流を出してるのでムベンガの好物なんです。
普通のナマズの5倍の価格に驚きを隠せない。
このブサカワが5倍・・・・・
こんな鈍くさそうな魚食わねーだろwwwwwとかみんなで笑いながらブサカワ魚を付け流した。
ピーシェとサンブーンに餌の付いた竿を持たせて僕達は帰り支度をする。
帰り支度もあらかた済み竿の方を見るとピーシェの竿に魚がヒットしているではないか!?
しかも必死にファイトしてるし。
俺:おいwwwピーシェ!!変われ!!チェンジチェンジwwwそこどけwwwwどけってばwww
ピーシェ:フングウウウウウ!!!!!
サンブーン:ベンガ!!ベンガ!!ベンガ!!ムベンガ!!!
興奮の余り竿を持ったまま頑なに離そうとしないピーシェ。
俺:サブ!!!お前が釣れ!!!早く釣れ!!!やーっぷ!!ビデオビデオ!!!
やぷ:OK!!!
サブ:わかりました!!おいピーシェ!!どけっ!
大ちゃん:サブちゃん頑張ってや!!
ムベンガはジャンプを繰り返し、フックを外そうと必死に暴れ続けた。
この魚を生で見る為、そして獲る為にコンゴまで来た。
そして幾度となく挑戦し、様々なトラブルに梯子を外され、行く事ができなかった。
僕にとっては夢の魚だった。
その夢だった魚が目の前でジャンプをしていると思うと感慨深いものがあった。
そしてムベンガは抵抗虚しくサブの手によって釣り上げられた。
一同:ヨッシャアアアアアアアア!!!!キタアアアアア!!!ムベンガ釣れたあああああ!!!!
サンブーン:ベンガベンガベンガベンガベンガ!!!!
ムベンガのサイズは1m弱とまだまだ子供だったが、そんな事はどうでもよかった。
やっと獲れた!!夢が叶ったのだ。
皆で写真を撮り興奮冷めやらぬ内にサブがムベンガの鰓にナイフを入れ締め、頭を持ち帰る為に切り落とした。
あまりの手際の良さにオニギリが動揺しはじめる。
オニギリ:なんでサブは魚を捌くのが上手いんだ?
やぷ:サブはジャパニーズマフィアの息子でああやって人を・・・
オニギリ:サブさん・・・やばいね・・・・ジャパニーズマフィア怖い・・
サブ:やぷさんwwいい加減な事言わないでくださいww僕は善良な市民ですよ
やぷのいい加減な説明にやたら納得したオニギリはその日以降サブに一目置くようになった。
とりあえず一匹釣れて満足した僕達はムベンガを食す為、キャンプへ戻り身を捌いた。
その間、酔っぱらった大ちゃんは僕達の身の回りの世話を手伝ってくれているピーシェの娘センテの巨乳を常に凝視していた。
ムベンガの身は白身で肉厚だ。コンゴでも高級魚らしく市場に売ると高く売れるらしい。
半身を調理してもらい、焚火を起こし素焼にする。
食してみると太い骨が多いが白身に臭みも無くふっくらしていて美味い。
何とか2日目にして釣れた事で僕達の気持ちはだいぶ落ち着いた。
後はチャンピオン(現地では大物の事を呼ぶ)を狙うだけだ。
今夜は皆機嫌がよく酒が進む(いつもだけど)
焚火の前でダラダラしているとサンブーンが棍棒を持って叫びながら走ってくる。
そしていきなり地面を棍棒で何度も叩き付けた。
サンブーン:蛇だ!!!蛇だ!!蛇だ!!!蛇だ!!蛇・・・
やぷ:それ毒あるの?
オニギリ:サンブーンは毒のない無害な蛇だと言ってます
一同:なんで殺したん・・・・
サンブーン:・・・・
蛇はサンブーンの会心の一撃で絶命した。
蛇も焼いて食おうとサブが焚火でじっくり焼くも焼き過ぎて灰になってしまった。
蛇が哀れすぎて何も言えなかった。
再び困難が立ちはばかる…
釣行2日目にして夢のムベンガは釣れてしまった。
サイズは小さいが満足していた。
この調子で3日目以降も何度かのチャンスがあるものだと思っていた。
しかし簡単に釣れるものでは無いのだと我々は痛感することになる。
まず釣りを邪魔するのが上流から流れてくる大量の雑草だ。
乾季の間、岸で成長した雑草は水位が上昇すると根を地面に張っていない為、そのまま浮き島のような塊となって下流へ流れる。
僕達が釣りを行っている場所は川の合流点の為、その浮遊草が集まり留まり易いのだ。
本来であれば餌を100m以上流したい所だが、浮遊草が行く手を遮ってしまいせいぜい流せても30m止まりだった。
その為、ムベンガの回遊するポイントに餌を思うように通す事が出来なかった。
だが、早朝の1時間だけは浮草も全く流れて来ない為、その時間だけは思うような釣りが出来た。
釣れるか釣れないかは別としてだけど。
早朝の数少ないチャンスに賭ける為、前日から活餌を確保して生簀の水をマメに交換し、翌朝すぐに出船出来るように用意しておいた。
が!!!朝起きて生簀を見ると生餌は居なくなっていた。
オニギリ:スタッフ達が翌朝見た時には死んでいたので処理したようです
あんなに元気で死ににくいナマズが数時間水替えをしなかっただけで死ぬとかあり得ない。
僕達はスタッフの言葉に疑念を抱いていた。
料理は常に船首付近でドラム缶の中で炭に火を起こして調理していた。
ふと調理前の食材を覗き込むと俺達が購入した活餌のナマズがビチビチと跳ねていた。
俺:・・・・・・・・・めっちゃ元気じゃん・・・・死んでないんだが
オニギリ:どうやら彼らの朝食になるようですね・・・・・・
サブ:・・・・・・こいつらを餌にしようかな・・・・
ブチ切れそうになる怒りを抑え、今後は魚が死んでいても絶対に生簀の魚を触るなと警告し、その場を収めた。
結局、活餌の購入に30分程度かかってしまい、ポイントへ到着した頃には浮草の大群が上流から押し寄せようとしているのが確認で来た。
浮草が来る前に餌を投入し少ないチャンスを物にしようと必死な僕達。
そんな事を知るはずもない現地の富裕層が乗るスピードボートが僕達を目がけて猛スピードで突進してきた。
全員で進路変更をするよう合図を送るもお構いなしで突進してくる。
というかその進路だと仕掛けをすべてモーターのペラが絡みとってしまう。
やめろ!!!来るな!!!ボート来るな!!!
しかし願いも虚しく、僕達の流した仕掛けをボートのペラが巻き込んでしまい一瞬にして300mのラインは出され切られてしまった。
危険な運転に怒るピーシェとサンブーン。
滅茶苦茶切れている。
猛抗議するも富裕層の若者はどこ吹く風で再び猛スピードで走り去っていった。
そんな事をしている間に、水草は押し寄せてしまい、数少ないチャンスタイムは終わっていた。
一気にやる気がなくなる。
こうなってしまうと水草が通る手前に餌を流して待つのだがコレがまた釣れない。
水深の問題が大いに関係しているのだが、ボートにあるアンカーロープの長さ問題で泣く泣く此処でしか釣りが出来なかった。
アンカーを下ろしているポイントはブラックウォーターのど真ん中で、船の往来が非常に激しい場所だった。
ブラックウォーターは飲める為、長旅の乗船客達はそこで給水をするのだ。
僕達がアンカーを下ろして釣りをしていても大抵の船は避けてくれるのだが、ギリギリで避けるような船もいる為、衝突や接触事故を起こしてしまうと非常に危険だ。
何度か危険な目に合うも、スタッフ達は僕達に救命胴衣を貸してくれようとはしなかった。
なんなんこいつ等wwww
そして魚も釣れず、待ちながらうたた寝をしているとボートに衝撃が走る。
大型木造船の船尾が避けきれず、ボートの船首に激突したのだ。
そして船首からアンカーロープを垂らしていた為、木造船はそれを引っ掛けてそのまま航行し続ける。
僕達のボートは木造船に引っ張られるも、幸いアンカーロープがボロかったお陰で千切れて大事故は免れた。
危なかった・・・・・・。
あと少し航路がずれていたら僕達の船は沈没していたかもしれないし、救命胴衣来てないから溺れ死んでいた可能性大だった。
そして釣りの命綱でもあるアンカーロープは全て無くなってしまった。
立て続けに襲い来るトラブルに対応しきれない。
なんなんコンゴ。半端ねえなコンゴ!!!
キャンプに戻り再度ロープを集めなんとか5mのアンカーロープを作った。
もはやアンカーロープとして機能しないレベルなわけでwwww
水深2mくらいの所にアンカーを下ろしてそこから流すしかない。
難儀過ぎる。
やる気がどんどん削がれていく・・・・。
ムベンガのいるポイントは目と鼻の先だというのに・・・・。
くそ!!!くそ!!!くそ!!!くそ!!!
そして釣れないまま数日が過ぎた。
明日はヤプと大ちゃんが日本へ帰る日だ。
ヤプは辛いコンゴ生活からようやく脱出できる安堵感からか、滅茶苦茶嬉しそうな顔をしていた。
オニギリ:ヤプ、ダイ、明日は迎えが来るまで釣りをするか?多分7時間くらい釣り出来るよ。
初日のトラブルで釣りが2日間ほど短くなってしまった事もあり、それを聞いた大ちゃんは大喜びだ。
翌日、コンゴの空は晴れ渡り、風もなく最高のコンディションで幕を開ける。
今日は何か起こるかもしれない。
そう、奇跡が起こるかもしれないと予感した。
さっそく最高の餌を買いに漁師を探すが、何故かこの日だけは漁師の姿か見当たらなかった。
いつもなら向こうから買ってくれと近寄ってくるのに。
1時間ほどボートを走らせ探すも結局、餌を買うことが出来なかった。
オニギリ:そういえば村人達は教会へ行ってお祈りをしているので漁はその後からだとおもいますわ
一同:・・・・・それ最初から分かってたんじゃ・・・
オニギリ:・・・・・・・・あと2時間もすれば漁師が出てくるかと・・・
そして2時間後、いくら待っても漁師が現れる気配がなかった。
オニギリ:そういえば、今日はサッカー中継が2試合あって皆それを観戦していますね。今日は漁しないですね。
期待させといて落とすなよ!!!!大ちゃんめっちゃ楽しみにしてたんだぞwww
釣りが出来ない為、しかたなくキャンプへ戻り帰り支度をする大ちゃんとヤプ。
そこへピーシェがやって来て
ピーシェ:あの、俺釣りやりたいんでタックル貸してください。
この言葉で大ちゃんは完全に切れてしまった。
溜めていた我慢が一気に噴出し、オニギリに猛抗議をし、その後ヤケ酒。
飲んで飲んで飲んで。
僕はその間、用事を済ませようとテント内に籠ってた。
そして1時間後、テントから出るとそこには衝撃の光景が・・・・
WWWWWWWWWWWW
何wwwwどうしたのwwwwどうしたのこれwwwwww
やあああああっぷ!!!!
サアアアアアアブ!!!!
大ちゃんwwwwww
シュール過ぎるんだがwwwww
遂に三人共、精神が崩壊したようだ。
可哀想に、本当に可哀想に・・・・・
お前らコンゴの地で成仏してくれや・・・・
ヤプが去り際に餌の調達に必要な軍資金をサブに手渡す。
俺:なんで俺じゃなくサブに管理させるんだよ!
ヤプ:お前は散財しそうで危ないからサブちゃんに管理してもらう
サブ:ヤプさん!確かに受け取りました!
どうも僕よりサブちゃんの方が真面目でまともだと思っている所からまず間違ってる気がしてならないんだが!
案の定、ヤプ達が帰った途端、サブはコーラが飲みたいと言い出す。
無類のコーラ好きでコンゴに来てからビールばかり飲んでいた為、味に変化がほしいようだった。
サブ:オニギリコーラ、オニギリコーラ、オニギリコーラ、コーラプリーズ
オニギリも何とか飲ませてやりたいと村に買い付けに行くが、半端なく甘いファンタの偽物しか売っておらず、サブは満足する事が出来なかった。
コーラが飲めずイライラが募るサブ。
サブ:アッー!!コーラ飲みてー!!!!!コーラ!!
俺:ビール飲んどけよビールwwww
サブ:ビール要らないんでコーラが飲みたいです
オニギリ:30km先の村に行けばコーラが売ってるみたいですがどうしますか?
サブ:買って来い!!!早急に買って来い!!!
村の青年を呼びつけ30km先の村まで買いに行かせるサブ。
やっとコーラが飲めると分かり気分が良くなるサブ。
しかし待てどもコーラがくる気配はなかった。
結局コーラにありつけたのは買い出しにでてから2日後の事だった。
冷蔵庫で冷やしたコーラを一気に飲み干したサブの顔は悦に浸っていた。
サブのコーラ飲みたい問題は解決したものの、一向にムベンガの釣れる気配はなかった。
むしろ、1週目よりコンディションが悪くなってるんだがwww
ヤプ達と一緒に帰っていればと2人して後悔したのは言うまでもない。
釣れる気配の全くしない川に出て生餌を大量に購入し、無駄にする毎日。
頭がおかしくなりそうだ。
スタッフ達は死んだ魚を自宅に持ち帰り、食材にするから有り難いみたいだが。
余りにも釣れなさ過ぎてムベンガ釣りを一度切り上げ、他に釣れる魚はいないのか?とロジャーと言う村一番の漁師に尋ねるとボトと呼ばれる魚なら釣れると言う。
俺:どこで釣れるんだ?
ロジャー:マザーボートの周りで釣れるよ。大きい物だと1m位になる
俺:は!?マジで!?そんなのが近くにwwww
ロジャー:ボトはマンゴーで釣れる
そう言うと村から摘んで来てた完熟マンゴーを賽の目に切って針につけて投げ込む。
なかなか繊細な釣りのようで、ラインに伝わる微かな当たりを頼りに合わせを入れるが、マンゴーはまんまと食われて針だけになっていた。
それが何度も何度も続く。
まるでカワハギを釣っているようだ。
俺:くそー!!なかなか釣れねー!!!
サブ:難しっすね
持ってきたマンゴーもそろそろ底をつきかけた時だった。
ラインの動きを読みながら早合わせをするとロッドが撓る!!!\\\\\\\\\\\\\\\\\\
久々の魚の引きを味わい喜びがこみ上げる。
上がってきたのは良型のボト!!!
グレの淡水版って感じ。
マザーボートから釣れた魚を見ていた家事手伝いのエステーは大喜び。
エステー:オキー!!!サブー!!!ボト!!!ボトー!!!!
どうやらこの魚、市場で売れば高く売れるし、食えば美味くて最高らしい。
とりあえず久々に魚が釣れて嬉しかった。
この頃から釣りはいつも早上がりをし、テントの前で飲むことが多くなっていた。
もちろん釣りに出てもムベンガが釣れないからなのだが。
俺:まじで釣れないね。難しすぎじゃね?
オニギリ:南アフリカから撮影チームが来ていたんだけど、彼らはもっと上流で釣りをした。そこは水深も深くて30キロが釣れたよ。
俺:は!?そこに行こうよ。
オニギリ:時間がかかるし、燃料がそこまでないから今回は難しい。
聞いてねー!!!そんなポイントが存在していたなんて聞いてねー!!!
今回の釣行は段取りが悪すぎると言うか、オーナーに対しての不信感しかない。
僕達の不満もオニギリは感じ取っていて、どうにか打開しようと色々と交渉はしてくれるのだが、オーナー側はNOの一点張りだった。
夜になると焚火の炎を眺めながら色々と語らう時間が多くなった。
オニギリ:俺は起業したいんだ。まずは一台の車を購入してタクシー運転手をする。そこから事業拡大してタクシー会社を経営したいんだ。
俺&サブ:いいねー!!!いいねー!!!
こういう人材がガイド業とかしたら良いと思い、オニギリに進めてみると意外とまんざらでもない様子で行きたい人が居れば手配は出来ると言っていた。
ムベンガガイドの話で盛り上がり酒が進んだ。
オニギリ:ところでオキは結婚してるのか?
俺:コンゴに来る2週間前に別れたんだが?
サブ:wwwwwwwwww
オニギリ:そうかwwwwすまないwwwww良い人が出来るといいな
酔いも一気に覚めてしまい今夜の宴会はお開きとなった。
そして自分達の思うような釣りが出来ず、最終日が来てしまった。
ビールをヤケ飲みしたい気分にも拘らず、肝心のストックは既に底をついていた。
そんな僕達をよそにオニギリは自分で持ってきていたビールを美味しそうに飲んでいる。
僕達もオニギリが温存していたビールを飲もうと冷蔵庫を覗き込み、取り出そうとすると。
オニギリ:それは俺のビールです。あなた達のビールは全て飲んでしまったでしょ
何言っちゃってんのwwwオニギリ!!!
お前も俺達のビールをアホみたいに飲んでたよな??
それなのにビールを分けてくれないとかどんだけ鬼なんだよwww
しかも持って来ていたミネラルウォーターも残り少なくなっていた。
潤沢にあるのは川の水のみ。
支流のブラックウォーターだから煮沸すれば十分飲めるっちゃ飲めるんだが。
そういえばコーラを買った時にファンタもあったはず。
もしかしたらファンタは残っているかもしれない!!
しかしファンタを探すも見つからない。
おかしい、コーラは飲んだがファンタは飲んでないはずなんだが・・・。
その時、家事係のエステーと目が合った。
「しらね?」とファンタの空瓶を指さすとエステーはニヤっと笑った。
エステー:ファンタはあたしの物よ!!!毎日料理作ってあげて、洗濯もしてあげてるんだからこれくらい当たり前でしょ!!!
ファンタはエステーにより全て飲み干されてしまっていた。
図々しすぎるし、口調が強すぎてウゼーwww
後半に入り、エステーの図々しさに拍車がかかって来ているのは薄々感じていたが・・・。
サブの衣類を異常に欲したり。
サブを自分のテントに異常に連れ込もうとしたり。
サブの食べかけの物を食おうとしたり。
サブの・・・・。
あ、エステーはサブが好きなのか・・・・www
おそらく読者の殆どが何時出てくるのかと気になっている肝心の最終日の釣果だが・・・・。
早朝の短いチャンスタイムにバイトがあった。
しかしフックにかかる手前でナマズの胴体は切断されていて惜しくもフッキングせずに終わった。
惜しい!!惜しすぎる。
その後ポイントを転々とするも結局釣れず、心が折れた僕達にこれ以上コンゴ河での戦いは精神的にきつく無理だった。
そしてコンゴの釣行は終わりを告げた。
不完全燃焼感が否めない・・・・。
それはここに居る全員が感じている事だろう。
しかし、僕は諦めない。
今回は釣れなかったが、来なければ解らなかった事が沢山解ったし次回の挑戦に繋がる布石だと思えばいい。
また来れば良い問題ない。
4度目の正直で次は怪物獲る!!!
キャンプに戻り、明日の出発に備え荷造りをしているとエステーが近寄ってきた。
エステー:このクロックスくれない?
俺:いいよ。ヤプが捨てて帰った奴だし
エステー:サンキューオキー!!!ラブ!!!
俺:ニヤニヤ
エステーはヤプが捨てて帰った汚かったクロックスを丁寧に洗い、汚れを落として陰干し、上機嫌でマザーボートへ戻っていった。
その後、今度はピーシェが訪れた。
ピーシェ:あの・・・クロックスをあっしに頂けませんでしょうか・・・
サブ:OK
ピーシェ:ありがとうございますメルシーボクゥ
俺:エステーにあげたのに大丈夫なの?wwww
サブ:バレなきゃ大丈夫っす。
エステーにはクロックスを絶対に見せるなとジェスチャーし、ピーシェも分かったと言わんばかりに親指を立てた。
数時間後、村から買ってきてもらったリキュールを飲んでいるとエステーの怒鳴り声が響き渡った。
どうやらピーシェがクロックスを履いているのを目撃し、エステーが癇癪を起したようだ。
全くピーシェが理解してねー!!!!バカすぎる!!!
酷い口論がしばらく続いたと思ったら今度は僕達にもエステーの怒りは飛び火。
色々面倒なことになり、正直うんざりしていた。
仲裁に入ったオニギリにも飛び火し、結局全員に引火し炎上した。
ヤプのクロックスのせいで我がパーティの雰囲気は最悪なものになっていた。
もはや僕達に出来ることは一刻も早くエステーに機嫌を直してもらうほかないのだ。
オニギリ頑張れ!!ちゃんとしてくれ!!オニギリ。
しばらくするとオニギリが帰ってくる。
あれ、なんか様子がおかしいぞ・・・。
オニギリはムスッとした顔で自分のテントに戻り、自分の衣類を焚火の中に投げ入れていった。
一体オニギリの身に何がwww
不気味な笑みを浮かべこちらを見るオニギリ。
おそらくエステーに何か言われブチ切れたに違いない。
毎日丁寧に洗濯していた衣類を燃やすなんて・・・全部ヤプのせいだ・・・・。
着用している以外の全ての衣類を燃やし切り、オニギリはスッキリしたのかテントへ戻っていった。
翌朝、「オニギリ衣類燃やし事件」を不憫に思ったサブが自分の速乾シャツをプレゼントするとオニギリはとても嬉しそうにしていた。
だったら衣類燃やすなよっていうwww
なんか2週間長いようであっという間だった。
コンゴに来るまで物凄く遠回りをしてきたような気がするけどこのトラブルのおかげで色々と成長できた事もあるかもしれない。
そんな事をキンシャサに戻る車中で考えながら次回のリベンジに向け思いを馳せるのであったが、やっぱり納得出来なくて
帰国後、速攻でオーナーに怒りのメールを送りまくると謝罪と共に今度はちゃんとすると連絡がきた。
それから一年後の2016年、再びコンゴへ戻る事になる。
前回あった幾多のトラブルを回避できるように今回は入念に事前準備をした。
もうコンゴと言う国に恐怖心もなく、後は釣れるのみ!
再び舞い戻ったコンゴは勝手しったる場所になっており、全てがスムーズに進行した。
そして上流部のポイントへ向け2日かけてボートで移動し、村の村長に挨拶してキャンプをさせてもらう許可を得た。
子供が多すぎて賑やか過ぎたけど、みんな友好的で農村部の人間はみな良い人ばかりだった。
釣りの方はというと相変わらず浮草は流れまくっていて難しい釣りだったが釣行初日に運よくムベンガを釣る事が出来た。
チャンピオンサイズでは無かったけど、自分の手で釣る事が出来たし一つ目標が達成できた。
しかしそれ以降はヒットするも釣る事が出来ず、10日間釣りをしたが本当に難しい魚だと再認識させられた。
まだまだ夢のあるフィールドであると確信し、再訪することを心に決めた。
実際は行きたくない(面倒過ぎてwwww)でも行かないと後悔しそうなので後悔しながらコロナ明けたら行こうと思う。
完