遙かなるコンゴの呼び声
010年6月「コンゴへ行きたい!!」と謎の使命感?むしろ強迫観念に近い症状に突如として襲われていた。
ダグラス・ダンと言う渋いおっさんが釣り上げた写真を見たのがきっかけで僕はこの怪魚に恋をした。
ゴライアスタイガー、現地名でムベンガと呼ばれる犬歯が異常に発達した悪魔のような顔つきの魚がコンゴには存在する。
5種存在するタイガーフィッシュの中で最も巨大化し、最大で2m、70kg近くになると言われていた。
しかし、現地での釣りは難易度が異常に高いらしく、淡水界のエベレストと言っても過言でない怪魚のようだ。
「この怪魚をどうしても仕留めたい」そう思っていた矢先、現地で40年間ロッジのオーナー兼ガイドをやっているヨーロッパ人の老人と知り合う。
彼の名はレイモンド。
レイモンドにはムベンガを釣る方法や月周りの重要性など様々なことをメールでやり取りし、教えを乞いながらコンゴ行の準備を始めた。
渡航の準備を開始すると同時に、コンゴ民主共和国の事を調べれば調べるほど色々と不安になった。
当時、内戦の影響で治安や衛生状況が極度に悪化し、殺人や強盗、強姦などの犯罪が蔓延し、キンシャサの殺人率は上昇傾向にあるようで当時の世界危険度ランキングでは当時10位以内に入るような国だった。
この国ヤバくね?すげー怖いんですけどwww
ある程度は覚悟していたが、降りかかるリスクを想像するだけで眩暈がした。
正直怖かった。
「行きたくねえ・・・コンゴ行きたくねえ」
生まれて初めて海外へ行く事に恐怖を感じた瞬間だった。
まだまだ修行が足りないと思った僕はその年の渡航を諦めた。
自分で渡航を断念したにもかかわらず、内心ホッとしたのは言うまでもない。
それから3年後の2013年、経験値そして精神的にも自信が付き、再びコンゴ行を決意。
「ようやくコンゴへ行けるぞ!!!」そう思っただけで心が躍った。
しかし嬉しさの傍らに絶えず存在する不安感。
「やっぱりコンゴ行くの怖えーwww」
そうは言ってもチケットも既に購入し、ビザも取得した。
後は行って巨大なムベンガをこの手に収めるのみ。
行けば何とかなる。そう言い聞かせた。
渡航が近づくにつれ、良い意味で緊張感が増していった。
そして渡航2週間前、事件が起きる。
レイモンドから一通のメールが届く。
「私が本国ベルギーへ帰国している間にコンゴのロッジが襲われてました。全ての物資が盗まれたので運営できません。貴方の受け入れは出来なくなった。40年創業して以来こんなトラブルは初めてだ!!支払ったお金は必ず返金します。様々な手続きが終わるまで待ってくださいプリーズ」
メールを読み終えると同時に思考が停止した。
「ええええええ!?ありえねー!!!コンゴありえねー!!!」
ようやくコンゴへ行けると思った矢先、登りかけの梯子を外されそのまま後頭部から地面に叩きつけられたような衝撃を食らった。
黙って待っていても始まらず、打開策は無いか必死に模索するも、これと言った解決策は無く、結局コンゴ行は水の泡と化してしまった。
泣いた、日本中が泣いた
そして必ず返金すると言った代金も帰って来ることなく、レイモンドからの連絡は途絶えた。
「くそったれえええ!!!」
泣いた、全米が(特に僕)
どうしてもコンゴへ行きたい僕は片っ端からコンゴルートを持っているエージェント達に連絡。
しかしコンゴでプロのガイドはレイモンドのみらしく、エージェント達は僕の身に起こったトラブルを哀れんだ。
半ば諦めかけていた時、一通のメールが届く。
「とんだ災難でしたね。私の知っているガイドを使えばムベンガを釣る事が出来ます。連絡待ってます」
エージェントの名はロバートと名乗った。
とりあえず、どう足掻いても2013年の釣行は無理と言われ、2014年の9月に行く事を約束しデポジットを送金した。
そして2014年、今年こそコンゴへ行けると息巻いていたが、年明けから不穏な空気が西アフリカに立ち込めた。
エボラ出血熱だ。
西アフリカで猛威を振るったエボラ出血熱は感染者と死者を増やし続けていた。
「かなりヤバい」と思いつつもロバートも「大丈夫、気にするな」と言っていたし、流石にコンゴまでは来ないだろうと高をくくっていた。
2014年7月、コンゴでエボラの感染者が確認されたと同時に勤務先からアフリカへの渡航禁止命令が言い渡された。
またしても・・・またしてもコンゴ行の梯子を外される羽目に・・・。
全世界が泣いた(完全に僕が)
何故だ、何故コンゴへ行こうとするとトラブルが起きるんだ。鬼門すぎだろコンゴwww
「諦める訳にはいかんのや。ここまで来たら絶対にコンゴへ行ってやる」
過酷すぎるコンゴの洗礼
もはやムベンガ云々よりもコンゴへ入国する事が最大のミッションになっていたかもしれない。
しかし、こればかりは休暇を取るタイミングの問題なので、どうする事も出来ないわけで。
そして2015年10月、3度目の正直で遂にコンゴへ行ける事となる。
行こうと決めて5年もの歳月が過ぎていた。
魚を釣った時に襲って来るやり切った感が既に脳内から噴出しているのが分かった。
いかんいかん、旅はこれからだ。
気を抜いているとトンデモナイ事件に巻き込まれるに違いない。
飛行機がコンゴ民主共和国へゆっくりと着陸し、次の瞬間、俺は飛び跳ねて喜んだ。
やったぞー!!!!遂にコンゴへ来ることが出来たんやー!!!ハッハッハッハ
3度目の正直でようやくゴライアスタイガーの生息するコンゴへ行く事が出来たのだから少しくらい声出して喜んだって良いじゃないか。
と言うのは夢の中の話で実際は機内で飲み過ぎて爆睡、起きたら機体は既に着陸し、乗客も出る準備を始めていた。
感動するはずだった着陸の瞬間を逃した僕はコンゴ民主共和国の地へ足を踏み入れた。
今回のコンゴ遠征は僕以外にもヤプ、サブ、大ちゃんの3名も同行していた。
釣りを全くしないヤプが何故コンゴに来たのか若干、理解に苦しむ所はあるが仲間がいるのは心強いので良しとしよう。
良い遠征になる事を祈りながらイミグレに向かっていると。
沖山さん、ボクのロッド無いんですけど・・・・・・機内中探したのに無いです
サブが機内に持ち込んだパックロッドが紛失するというトラブルが発生。
全ての荷物棚を探したがロッドは無かったようで客室乗務員に追い出されたそうだ。
可哀想なサブwww
笑いをグッと堪え、サブを慰め悪評高いコンゴのイミグレを何とか通過し、バゲッジを待った。
イスタンブールからキンシャサまでの区間はビジネスクラスでチケットを取っていた為、荷物も早々に来てホテルへ向かうはずだった。
が、何故かビジネスクラスの荷物だけが来ず、嫌な予感しかしない・・・・。
案の定、職員が来て「此処にある荷物で全部だ」と言い渡され、ビジネスの乗客は頭を抱え発狂していたwwww
勿論、僕、ヤプ、大ちゃんも発狂し怒り狂った。
何故ビジネスの荷物だけが飛行機に乗ってないんだ!!!陰謀だ!!これは何かの陰謀だ!!!
幸いにもエコノミーで搭乗したサブの預けた荷物だけは無事に到着していた。
ひとまずロスバゲ申請をしに事務局へ向かうと共に、空港へ迎えに来ている通訳を探す。
僕らの名前が書かれた画用紙を持った人間が此方をじっと見ている。
多分あいつだ。
彼の名はノーベル、フランス語圏のコンゴは英語が通じないので彼に通訳をしてもらう。
顔が小さく頭の形も良かった為、オニギリと言うあだ名をヤプが付けた。
オニギリにロスバゲの事を説明し、一緒に事務局へ行ってもらう。
英語が堪能な大ちゃんが手続きをしている間、僕とヤプは荷物が来ない場合の事を話し合っていた。
ロスバゲが起きた時点で出発が一日遅れる事になる。
最短で明日の夜に荷物が届けば次の日に出発は出来るが、荷物が来なければ更に出発は伸びていく。
ロスバゲの荷物はホテルに預け、そのまま明日出発するか荷物を待って出発するか悩ましい所ではあった。
機内でロッドを紛失したサブだが、スーツケースの中にもロッドは4本入っており、釣りをするには十分な装備が揃っていた。
しかし問題はサブ以外のメンバーがスーツケースに全ての物資を詰め込んでいた為、このまま出発するのは難しい。
したがって明日は荷物を待ち、明後日ポイントへ出発する事を決めた。
これからの事を決めている間に大ちゃんの方も手続きを終えていたが、手続きを担当した職員の女性が大ちゃんをナンパしだした。
よほど気に入ったのか大ちゃんに名刺を渡し、この時間が空いているからどうだ?などと迫っていた。
女好きな大ちゃんも流石にたじろいでいた。
空港から出ていないのに既に疲れがどっと出てきた。
用意してあったワゴンに乗り込みホテルへ向かった。
空港から20分ほどの所にホテルはあり、チェックインをする。
ロビーに置いてある冷蔵庫を勝手に開けビールを飲みだす大ちゃん。
自由過ぎる。
オニギリと明日の事について軽く、打ち合わせをする。
自由時間が出来てしまった為、コンゴで有名らしいサプールと呼ばれる収入の大半を使い高級ブランドを身に纏う世界一オシャレな集団を探し、その後ボノボと呼ばれるチンパンジーに似た霊長類を見に行こうと言う話になった。
打合せが終わるころには22時を過ぎており、ホテルの敷地内からは出るなと念を押されオニギリは帰って行った。
小腹も空いていた為、ホテルの敷地内にあるレストランでビールを注文し、まずは無事?に到着した事に祝杯をあげる。
空腹を満たす為メニューを見るがフランス語で書かれており、意味が解らない。
適当に頼んで出てきたメニューを食べると言う手もあるがコンゴの主食が良くわからんので皆、注文を躊躇していた。
大ちゃん:あ!こうゆう事もあろうかと、フランス語のアプリを携帯に入れてきてん!ためしてみよか
流石大ちゃん!!!
給仕を呼び、フランス語アプリで会話を開始するもあまり意味が通じていないwwww
困った顔をする給仕に畳み掛けるように「愛してる、あなたが欲しい、付き合いたい」などの恋愛フレーズを連発する大ちゃん。
あんたもう酔ってるだろwwwww飯注文しろよwww
苦労してフレンチフライとフライドチキンを注文し、ビールと一緒に摘まみながらムベンガの話で盛り上がった。
疲れと眠気のピークが来ていた僕達は自室に戻って休むことにした。
エレベーターに乗り込みしばらくするとエレベーターが突然真っ暗になり、ガタンと言う音と共に止まった。
あ、これもしかしてヤバい奴?
またしてもトラブルかよ!!!
いい加減イライラしていた僕はエレベーターを無理やりこじ開けようと試みた。
ヤプは危ないからヤメロと言いながら狼狽えている。
力づくにこじ開けようとすると少しずつ扉は開き運よくフロアのある階に止まっていた。
エレベーターが動き出すと危ない為、ドアを開けた瞬間に全員脱出することが出来た
いい加減にしてほしい!!!まだ到着して数時間しか経っていないのだが!!!
早朝、エアコンの効きすぎで目が覚める。
オニギリが迎えに来る9時、まだ時間はたっぷりあった。
釣り道具のセットをしようにもスーツケースはロスバゲ中の為、何も出来ず待つしかない。
ホテルを出て朝の散歩でもしたい所だが、室内から敷地外を望遠カメラで覗き込むと怪しい輩が歩いているのが確認できる。
アカン、これアカン奴や!!!
オニギリが迎えに来るまで自室でじっとしとこうと決めた。
すると相部屋のサブがモゾモゾと起きだし、外を散策したいと言い出した。
ヤメロ!!!サブ!!!
まだこの土地を完全に把握しているわけでは無く危険度が未知数な為、単独で行動するのは非常に危険だと思い、僕も一緒に同行することにした。
これが間違いだった。
ホテルの敷地から出た瞬間の出来事だった。
軍人:おい、お前ら金だせや
いきなりwwwww
しかもサブは自分に言われた事にすら気づいてない。
僕:カツアゲされてるぞ俺達
サブ:え?まじすか?お金もって無いですボク
軍人:おい、早く金を出せ
機関銃持ってるし、払わなかったら留置所とかにぶち込まれる奴なんじゃ・・・・。
サブ:ノーマニー、ノーマニー、スモーク、スモークOK?
軍人:ウーン・・・・・オッケー!!!
軍人は金品の変わりにタバコで納得、しかも一本で許してくれるって要求低すぎだろ!!
タバコを一本手渡し、カツアゲ記念の写真を一緒に撮って急いでホテルへ戻った。
9時ピッタリにオニギリが迎えにやってきた。
海外の奴らって時間にルーズだが、オニギリは真面目で出来る男なのかもしれないと察した。
オニギリ:今日はボノボと観光をしよう。
一同:オッケー!サプール!!サプール!!ボノボ!!ボノボ!!
1日無駄にはなったが皆ノリノリである。
此処まで来てイライラしていても意味もないし、全てを受けいれ楽しむしかない。
とりあえず、午後の方がボノボの森は歩きやすいと言う事で午前中に観光をする事にした。
大ちゃん:オニギリ、とりあえずサプール探そうや
オニギリは困惑した顔でドライバーと何やら相談している。
オニギリ:さっきからサプールサプール言ってますが、むしろサプールって何それ・・・・・
一同:・・・・・・・・・・えーと・・・・サプールって言うのはファッショナブルな人達で・・・・
そんな奴見た事無いと言われ、車に乗り込み10分でサプールの捜索は終了した。
こうなったら前倒しでボノボの森へ行きボノボを堪能しまくるしかない!!
僕らはボノボ園へ向う。
道中は結構混雑していてアフリカ特有の人間の圧みたいなのを感じ取る事が出来る。
そして人間の持つ生きるパワーみたいなのを感じとれる。
到着するまでに時間は結構掛かったが、僕らには何ら問題がなかった。
何故ならサプール捜索は早々に(10分)終了し、時間が有り余っているからだ。
1時間ほどのドライブで車は停車、大きな塀で囲まれた施設が目に入る。
ボノボが見られると思うと少しワクワクしたのもつかの間、車は元来た道を戻り出した。
オニギリ:残念ですがボノボは見れません。どうやら施設全体がメンテナンス中のようで休園してますね・・・・
駄目じゃんwwwww何のために今日の観光代払ったんだよwww金返せよwwww
どうすんの?この後、もう何もする事無いじゃんwww街歩きとか危なすぎでしょ。
仕方なくムベンガの乾燥標本を作る時に必要な塩とホルマリンを買いにスーパーと薬局へ行く事になった。
メンバーのテンションは若干どころかガタ落ちである。
まずはスーパーへ行き、塩を大量に購入。
意外な品揃えに驚くと同時に車から出る度にシノワ!シノワ!(中国人中国人)と言い放たれる。
コンゴではベルギー人と中国人はかなり嫌われているらしい。
ジャポンだよ!!!と言うとコンゴ人の険しかった顔色は変わった。
大量の塩を購入後、向かったのは薬局。
ホルモール(ホルマリン)を買うためにやってきたのだが、どうやら外国人に販売できないようで何件か回ったが購入する事が出来なかった。
オニギリ:お前らが一緒に付いてくるとホルモールが買えないから次はドライバーに買ってきてもらいます
一緒に付いて来いって言っときながらそれは無いだろ!!!最初からお前らで買ってこいや!!!wwwwむしろ事前に注文してたの買ってないからグダグダしてんだろうがwww
薬局では購入が難しく闇市でホルモールを購入することに。
ドライバーがホルモールを購入してくるまで日陰の公園バーでビールを飲みながら待った。
結構、コンゴ人も昼間っからビールを飲んでる奴が多い。
ベルギー統治だったせいか?ビールの種類が豊富で知る限りで10数種類あった。
なかでもコンゴ人はプリムスビールがお気に入りらしい。
少し甘くてクセがあったが慣れれば美味い。
待つ事一時間、ドライバーが黒いビニール袋にホルモールを隠し、持って帰ってきた。
塩とホルモールも手に入り、現地で必要な物は揃った。
特に観光もする事が無く、近くの食堂で遅めの昼食をとる事に。
料理は予想以上に日本人の口に合うようだ。
ピリピリと言われる唐辛子、塩、にんにく、玉ねぎをすり鉢ですり潰した物をアクセントで付けながら食べると食が進む。
ビールにも合うし、皆大満足で特にサバの料理がハンパなく美味い。
何故かオニギリやドライバーの飯やビールも奢らされるが気にしない事にしよう。
コンゴの街でやりたいことは全てやり尽くしてしまった。
というか殆ど出来てないわけだが、時間がまだまだある。
オニギリ:そうだ、俺たちの乗る船が停泊している港を見学しないか?雰囲気を掴むために
皆、眠くて乗り気じゃなかったが港へ行ってみることに。
そもそもこれが失敗だった。
行くんじゃなかったwwwwww
そこは港と言うよりスラム街で辺りは混沌としていた。
オニギリに写真は絶対撮るなと注意されていたが、スマホで写真を撮りまくる。
長居する場所じゃないと直感で分かった。
この場所を離れようとオニギリに伝え、車のある場所へ速足で戻っていると後ろから声が掛かる。
警官:お前ら俺を撮影したろ?カメラを確認させろ!!!
案の定である。
僕と大ちゃんが写真を撮りまくっていた為、目を付けられてしまったようだ。
知らんフリを決め込み、遠くの方に目をやり警官の言ってる事に気づかないようにした。
すると警官は僕と大ちゃんの仕業をヤプと勘違いし、ヤプに写真を見せろと詰め寄った。
この騒ぎに周りの住民も集まりだし、取り囲まれてしまった。
ヤバい、まじヤバいwwww
オニギリ:つーか写真を撮ったらダメな法律とかないし、お前らに金なんて払う義務はねーし!!
一触即発の最悪雰囲気の中、空気を読まずオニギリが燃料を投下し、怒る警官と住民
次第に金払え!!!金払え!!!と声が大きくなっていった。
ヤプ:俺写真とか撮ってないよ
警官:うそつけ!!!俺を撮っていた!!!俺は見たんだ!!!早くデータを消して金を払え
ヤプ:ほら、全然お前写ってないし撮ってないだろ?
警官:そんな訳がある!!!あ・・・・ほんとだ、写ってないですね・・・・
今まで怒り狂っていた警官の態度の急変に便乗しようと取り巻いていた住民達もどよめきだす。
住民:おい・・・まさかお前の勘違いだったんじゃないだろうな?
警官:・・・・ハッハッハッハお前らもう誤解されるようなことするなよッハッハハ
俺ら:ハッハッハッハメルシー!!!
住民:ハッハッハッハ
・・・・・・・・疲れたマジで身の危険を感じた。
これ以上色々行くと、行くだけトラブルに巻き込まれそうな感じがしたので散策は中止し、空港へロスバゲの確認をしにいった。
飛行機が到着するまでまだ2時間以上あった。
空港のレストランでビールを飲みながら待っているとロスバゲにあった外国人達も集まっていた。
ロスバゲ外国人:たぶん大丈夫だ、今夜の便で到着するらしい
その言葉を聞いてガッツポーズしたのは言うまでもない。
飛行機が到着し、荷物レーンを見覚えのあるスーツケースが流れてきた時には外国人達と握手を交わし、喜んだ。
コンゴに来て一番うれしい瞬間だったかもしれない。
その夜は全員の荷物が揃った祝いとしてホテルで宴会。
これで明日は出航でき、やっとムベンガに会える!!
色々あったがやる気がみなぎってきた。
翌朝、今日こそコンゴ川へ向け出発することが出来ると思うと心が躍った
オニギリが迎えに来る午前9時には皆準備を済ませ、何時でも出発できる状態になっていた。
9時ジャストにオニギリがやってくる。
オニギリ:ドライバーが少し遅れるらしいのでバーで酒でも飲みながら待ちましょう
そう言われ、バーでしばし待つ事に。
しかし待てどもドライバーは姿を現さず、ビールだけが空いていく。
大ちゃん:おいノーベル(オニギリ)、ドライバー来んやん。どうなっとん
待ち合わせの時間から既に3時間以上過ぎ、オニギリも若干イライラしていた。
結局、ドライバーは5時間遅れでやってきた。
遅すぎだろ!!!!!
車に荷物を積み込み、現地でライブベイトを買うために必要なコンゴフランを両替しに向かう。
ドライバーを待ってる5時間の間に両替すれば良かったんじゃね?と何度も思ったがあえて気にしない事にした。
車に乗り込むと同時に酔っぱらっていた僕と大ちゃんは眠りについた。
サブ:沖山さん、起きてください。沖山さん
俺:ん?着いたの?早かったね
サブ:違います沖山さんwwwパンクして今修理してますwwwwww
寝て起きたら車はパンクし、修理中だった。
しかもサブがパンク修理の指導をしてるっていうwwwww
何なんだよこれ。
パンクを直している間に闇両替商の元へ行き、ドルとユーロをコンゴフランへ両替してもらう。
コンゴではドルとユーロ以外は両替が出来ない為、行く際は大目に持っておいた方が良い。
パンクの修理もサブの手際の良さで早々に修理でき、目的の港まで車を走らせた。
ドライバーの運転は荒く時折、横断している人間を何度もはねそうになり、生きた心地がしなかった。
ようやく昨日の港まで到着した頃には既に夕方、本当に今日中に出船できるのだろうかと不安になってくる。
オニギリ:準備にもう少し時間が掛かるようだから、お前らの乗る船を見に行こう
そう言うと露店で賑わう市場の方へ進んでいくオニギリ。
途中、生活排水や死んだ魚が浮いている大きな水溜まりが存在し、そこを木をくりぬいたボートを橋代わりにして渡った。
ボートの真ん中には通行料をせしめようとする輩が居り、通ろうとすると1000コンゴフランを払えと言いながら足を前に出し通せないようにした。
マジでうざい。
オニギリ:お前らどけよ。俺達は此処にボートがあるから見に来たんだ。さっさとどけ!!!
渋々出した足を引っ込める輩。
暫く歩くとオニギリが一隻の船を指さした。
オニギリ:あの船で上流へ向かうよ!!!
しかし様子がおかしい。
船の周りを大勢の男達が鉈を持って水草を刈っては押しのけ刈っては押しのけを繰り返していた。
嫌な予感しかしない・・・・・。
案の定、指揮を取っているらしき親方風の男が此方に近づいてくる。
親方:駄目だ!!ビクともしねえ!!草が邪魔して動かねえ!!!何度やってもダメだ!!!
親方風の男はお手上げと言った感じで肩をすくめた。
オニギリ:ありえない・・・・こんな事初めてだ・・・一体何やっていたんだ・・・・・・・
何をやっていたんだじゃねーよwww俺らが言いたい言葉だわそれwwwwww
船が動かなければ全てが始まらない。
兎に角、人数を増やして押しまくれと指示し、船を後にした。
岸際で呆然する僕らの元にこの船のオーナーの嫁であるエブリンがやってきた。
エブリン:ごめんなさいね~まだ船が動かないのよ~
彼女は眠そうな目を僕らに向ける事無く、ソーリーソーリーと気持ちの入っていない言葉をつぶやいた。
1時間ほど船の救出作戦を見守っていたが一向に動く気配が無かった。
日も暮れ、いよいよ今日の出船が不可能なんじゃないかと思いだしてくる。
親方とオニギリが何かを話し合っていてオニギリの顔色が見る見る変わっていくのが分かった。
オニギリ:ほんと申し訳ないんだけど、船が水草に覆われすぎて動く気配が無い。それで・・・・
一同:それで?
オニギリ:今回の釣行は中止に出来ないかと・・・・・・・
一同:は!?
耳を疑った。
まさかここまで来て中止と言う言葉を聞くなんて。
武装勢力・・・・エボラ・・・・今度は水草・・・・・・・。
どれだけ呪われてるんだよ!!!コンゴ!!!
大ちゃんは怒っている。
サブも怒っていると言うか悲しそうな顔をしていた。
ヤプはどっちに転んでも面白うそうなのでニヤニヤしていた。
オニギリ:もちろん!!!滞在中のホテル代はこちらが全て出すからキンサシャで観光でもします?
10日もキンサシャに居て何をしようって言うんだ!!!
船が無くては釣りが出来ないし上流のポイントへは行く事が出来ない。
どうする、どうする。
考えろ、考えろ。
よし!中止にしてキンサシャから出る。それで経由地のトルコへ戻ってマンガルを探そう!!!
サブ:本気で言ってます?沖山さん
ぐずぐずしていたら時間がもったいない。
一週間組のヤプと大ちゃんは可哀想だが、仕方ない。
そうと決まればイスタンブールまでのチケットを買う手配をしよう。
大ちゃん:ちょっと待ってちょっと待って!!!しげるちゃんホンマにそれでええの?ずっと来たかったんやろ?おい!!!オニギリ!!!船動かせや!!!しばくぞ!!!
怒り狂う大ちゃん。
オニギリも自分達の段取りの悪さに悔しそうな顔をしていた。
大ちゃん:おい、1人1000コンゴフランやるから皆集まって船押せー!!!!
1000コンゴフランは因みに1ドルだ。
それでも周りで休憩していた男たちには効果があったようで次々と船の方へ駆け寄った。
そして小屋の奥からモーターを持ち出し、代船に取り付け水草に囲まれた船を引きずりだすようだ。
頑張れ、皆頑張れ!!!!
男達は船を力強く押し続けた。
代船もエンジンを唸らせ引っ張っている。
左右に揺れ出す船。
少しずつだが船が動き出したように見えた
俺:あ、行けるかも
大ちゃん:オラアアア!!!いけええ!!!いったれー!!!いけえええええ!!!
俺:いけー!!!!いけー!!!!いけー!!!!
サブ&ヤプ:いけー!!!!!!
俺達の声援に男達もマネしてイケーイケーと叫んだ。
周りにいた子供達にもその熱は伝染し、イケーイケーと叫んでいる。
全員:イーケ!イーケ!イーケ!イーケ!
コンゴに来て初めて全員が同じ目的の為に一体化した瞬間だった。
そして船は水草から見事脱出することに成功した!!!
全員:ウオオオオオオオオオオオ!!!!
全員でハイタッチした。
一時はどうなるかと思ったが何とか船は出船することが出来るようだ。
船が桟橋まで来る間、役人にパスポートを渡し乗船手続きを行う。
此処では船に乗るのにもパスポートが必要なのだろうか?
大ちゃんが役人の方をパスポートを盗まれないように見張っていると。
役人:おい、お前。ジロジロこっちみてんじゃない。
問題が無い事を確認した役人はほどなくしてパスポートを返却。
エブリン:大、20ドル貸してちょうだい。今手持ちがないの。
そう言ってエブリンは20ドルを大ちゃんから借りて役人に支払った。
恐らく手続きを円滑に進めるための賄賂だったのだろうが、何故に俺らが此処まで待たされて払わなければならないのだろうか。
結局その後、エブリンから金を返してもらう事は無かった。
船が到着し、大量の物資を手際よく運び込んでいく。
オニギリはその仕事を腕を組みながら眺めているとエブリンの激が飛んだ。
エブリン:ノーベル(オニギリ)!!!あんた何で手伝わないのさ。あんたなんて給料半分カットよ!!!
俺らの通訳として同行しているオニギリの今回のギャラは半額になってしまった。
可哀想なオニギリwwww
オニギリは完全に不貞腐れ、何を言っても口をきこうとしなかった。
全ての荷物を積み込み、出船の準備が出来たと思ったら今度はジェネレーターの調子が悪いみたいでそれを修理しだすエンジニア達。
何なんなのwwwだから出発まで時間あったんだから!!ちゃんとしろよ!!
一本のビールを回し飲みしながら出船するのを待った。
何故かその中にオニギリも加わってビールを飲んでいる。
ギャラが半額になったし、可哀想だからビールくらい飲ませてやるか・・・・。
乗船してから1時間後、ようやく船が動き出した。
やっと動いた-!!!
オニギリ:ここから6時間上流のポイントへ向かいます。
真っ暗闇の中船はゆっくりと上流へ動き出したと思ったら港近くの小島に停船した。
オニギリ:夜は危なくて航行できないので今日はここで野宿です
いきなりwwwwwwwwwwwwwww
だったら今夜もホテルで良かったんじゃねーの?
結局今夜も俺達はビールを飲み続けるしかなかった。
出船した安心感でビールを大量に飲みまくる大ちゃん。
僕はと言うと気疲れで早々に寝落ちてしまったようだ。
僕が寝ていると大ちゃんとサブの嬉々とした笑い声が聞こえてくる。
こんな夜中にアイツ等何やってんだ?
兎に角気にしないようにして寝ることに集中した。
大ちゃん:しげるちゃんwww大変やで魚一杯獲れたからちょっと見てよ
サブ:めっちゃ獲れてますwwwこっち来てください
無理やり起こされ、状況が把握できてない僕に何故か一匹のナマズを持たせて写真を撮ろうとする2人に怪しさを感じていた。
大ちゃん:いつものように魚持って写真撮るでーー!ちゃうってもっとちゃんと持ってや!!こう、ぎゅーっと掴むように!!あれ?何も無い?おかしいな
サブ:沖山さん、ちゃんと持ってください寝ぼけてないでちゃんと持ってください
あれ?いつも通り普通に持ってるんだけど何でそんな強く握らないといけないんだろ?
怪しい、怪しすぎる・・・・・。
二人の言動に怪しさしかない僕はそれでも言われるがままにナマズを握った。
しかし何も起きなかった。
気づいた方も居るかもしれないが、このナマズはデンキナマズ。
大ちゃんとサブはデンキナマズを握り感電したようだ。
そこで僕にも感電させようと必死だったらしい。
つまらなそうな顔でこちらを見る二人を於いて再び眠りにつくことにした。
早朝、出船の準備で船は慌ただしくなり、仕度をしようと起きると指の節々に激痛が走った。
良く手を見ると何十ヶ所と蚊に刺された跡があり、皮膚が腫れあがり指が動かないくらいになっていた。
幸い他の箇所は刺されていなかったが何故指だけ指されたのか未だに謎が残った。
オニギリ:ここから5時間ちょっと上流へ進んだ所にポイントがあります。昼前には到着しますね。
どうやらそこが目指すポイントのようで彼らはブラックリバーと呼んでいた。
コンゴ川へ出ると兎に角広く、まるで海のようだった。
水草が上流からゆっくりと流れてくるのを眺めながら、これから向かう先でどんなドラマが待っているのかとワクワクした。
船の往来もかなり多く、今にも沈没しそうな木造の船ばかりだ。
僕らの乗船する船はまだ綺麗な方かもしれない。
出船してから5時間が過ぎようとし、そろそろ目的のブラックリバーへ到着する頃のはずなんだが、船は一向に停船する気配を見せなかった。
大ちゃん:おい、オニギリ。もう着くんやろ?
オニギリ:実は問題が発生しています。2機あるエンジン一機、デカイ方が故障して最初から動いてないんです。なのでまだまだ掛かりますね・・・・・
一同:・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
分かっているなら出船前に言ってほしかった!!!!
皆、長時間の移動で疲れているようだ。
流石にオニギリも疲れ果てて爆睡をかましていた。
しばらくすると支流から流れ出るブラックウォーターと本流の黄濁した水がぶつかり合っているポイントを発見する。
オニギリ:やっと到着した。此処が俺達がキャンプする場所だ。
結局、5時間で着くはずのポイントへ12時間以上もかけてようやく到着することが出来た。
長かったwwww
此処まで来るのに4日も掛かった。
続く