北海道には善知鳥(ウトウ)という海鳥が生息しています。
5月〜7月の繁殖期、子育て時期の姿は珍妙で一見の価値ありです。
北海道や東北の離島で細々と繁殖している鳥ですが、海鳥の楽園である天売島ではおよそ80万〜100万羽が生息すると言われています。
さほど大きくない島ですが、これは世界最大の生息地です。
そんなウトウに会いに、天売島へ行ってきました。
天売島へは羽幌からフェリーで行けます。
羽幌町のシンボル【オロロン鳥】
子供の頃はずっとペンギンだと思ってましたが、それもそのはず。
元々ペンギンという名は、このオロロン鳥の仲間のオオウミガラスを指す言葉で、現在のペンギンはオオウミガラスに似ているから、南極ペンギンと呼ばれるようになり、オオウミガラスが絶滅した現在では、完全にペンギンの名は南極ペンギンのものとなりました。
完全な別種ですが見た目だけではなく、生態も非常に似ていたようです。
もちろんこのオロロン鳥(正式にはウミガラス、鳴き声からオロロン鳥と呼ばれている)にも会いにいく予定ですが、国内唯一の繁殖地天売島でも2010年には19羽の飛来があったのみで、その後は地元ボランティアの方々の尽力により飛来数が増えているとはいえ中々に幻の鳥です。
ちなみに、オオウミガラスと違いオロロン鳥は飛行も得意です。
さて、僕の住む札幌からは3時間程、信号のほとんど無い海沿いをひたすらに北上という非常に気持ちのいいルートになります。
最北の稚内まで続くこの道路の名前は、オロロンライン。
気分が上がります。
道中にはウミウも沢山います。
羽幌に着いたら、まず行って欲しいところがあります。
北海道海鳥センターという施設です。
ここで海鳥について勉強してからの方が、天売島を楽しめるのは間違いありません。
ありがたいことに入館無料の施設です。
事前学習が終わりましたら羽幌港からフェリーに乗り込みます。
1時間ちょっとの船旅になるのでその間に腹ごしらえです。
羽幌町内にはコンビニもあるのですが、せっかくなので名物を頂きます。
羽幌は甘エビの漁獲量が日本一、ミズダコも有名です。
甘エビファクトリー海老名漁協部さんは、朝の9時から開いててテイクアウトメニューもあるのでお勧めです。
ちなみに町内には、エビタコ街道という道路もありますしこの組み合わせはマストです。
不思議と萌えを取り入れてる街でもあります。
フェリーは焼尻島経由で天売島に向かいます。
ちなみに焼尻島はサフォークが有名で、かの三國シェフから世界一のサフォークとのお言葉も頂いています。
サフォークのジンギスカンはちょっと高級ですけど、非常に美味です。
そして天売が近づいてくると、海鳥の姿も増えてきました。
後日写真を整理してて気がついたのですが、最初に出迎えてくれてたのが目的のウトウだったようです。
天売島に着岸。
目的のウトウは今時間狩りをしているので、帰巣する夕方まで島内を散策します。
島内には野鳥の姿も多いです。
囀りに夢中になると薮からずり上がって来ちゃうコヨシキリ。
ついついおっぱじまっちゃうスズメ達
他にも珍しい野鳥達が居る話を聞いてたので心動いたのですがメインはあくまで海鳥なので程々にします。
島内はやっぱり海鳥推しです。
市街地を抜けて人が住んでないエリアに差し掛かるとそこは海鳥達の楽園です。
聞き慣れた声が聞こえて来ましたが、その数が尋常ではありません。
隣の焼尻島が近い。
ここはウミネコ達の一大繁殖地でした。
大人に混じってホワホワした幼鳥も沢山居ます。
道路っぷちにも沢山居るので望遠レンズなんて要りません。
携帯のカメラで充分に撮影出来ます。
あんまり近づきすぎると親に威嚇されますのでご注意を。(可愛らしい威嚇ですけど)
続いて進むと、
あちこちに猫が入れそうなくらいの不思議な穴が空いていることに気が付きます。
実はこれがウトウの巣穴です。
島内になんと数十万個空いているそうです。
島内に80万羽生息しているとしたら、最低でも40万個の巣穴が必要になりますもんね。
島内は穴だらけです。
ここに、日暮れ時間にウトウ達が帰って来るわけです。
想像すると気分が昂ってしまいます。
あ、猫といえば天売島で捨てられた猫たちが野良猫となり海鳥達に大打撃を与えたことが過去にあったそうです。
現在では猫たちは保護されて、飼い猫として天寿を全うしているそうです。
他には元々キツネ等の哺乳類も居なく、まさに鳥たちの天国となっています。
ちなみに近くにあった公衆トイレには
ウトウが入りますのでドアは必ず閉めてくださいとの注意書きが。
なんとも凄い環境です。
続けて海鳥を観測できる展望台に来ました。
かなりの高さがあるので豆粒みたいにしか見えませんが、ここで目的のウトウやケイマフリ、ウミウやヒメウにウミスズメの観察が出来ました。
ここで奇跡が起こります。
空飛ぶペンギンに会えました。
全部で20羽近く居たでしょうか?
近くに居た地元でガイドをしている方と話しましたがこの時間帯でこんな沢山のオロロン鳥の群れを見たのは初めてだそうです。
なんとも嬉しいアクシデントでした。
展望台を後にしようとしたら、こんな階段の下もウトウの巣穴だらけなのに気がつきました。
もう凄まじさに笑ってしまいます。
続いてウミネコの看板を見つけました。
ウミネコの繁殖地は最初に見たよなと思いながら進むと、そこに居たのは。
元々ウミネコ達の繁殖地だった場所を奪い取って、最初にウミネコ達を見た海岸に追いやったそうです。
ウミネコと見た目は似てますが性格は獰猛で、身体も大きく島の生態系の頂点です。
他の海鳥の幼鳥も食べてしまいます。
クチバシの赤の有無とずんぐり大きな体型で、ウミネコと区別が付きます。
他にもウミウやヒメウの繁殖地を見ているうちに良い時間になって来ました。
ウトウの繁殖地へ移動します。
繁殖地近くではウトウを見にきたギャラリー達の他にもウミネコやオオセグロカモメも目立ちます。
潜水して魚を獲ることが出来ない彼らは、ウトウが持ち帰る獲物を横取りしようと待ち構えている訳です。
日が落ちて暗くなるとウトウ達が帰ってきます。
写真では分かりづらいですが凄い光景でした。
獲物を取られまいとするウトウ達は、凄い勢いで巣穴近くに着陸します。
いや、着陸というより墜落するような勢いでした。
身を高くするとウトウに激突されるという話を聞いて出来るなら当たられたい…という欲求が湧いてきて気持ち身を高めにしてましたが残念ながら接触ならずです。
近くに激突された人が居てそれはもう羨ましかったです。(出血は無かったけどかなり痛かったとのこと)
そして暗がりの中の藪では生き物の気配がしだします。
カモメ達の目を掻い潜って着陸したウトウ達が、自分の巣穴を目指して走り回っているようです。
目を凝らして待つと、ついに間近に姿を現してくれました。
ついにウトウとご対面です。
クチバシにあるサイのツノのような突起と頭の飾り羽は、繁殖期特有のものですが何とも珍妙な鳥です。
英名ではサイを名前に冠しますし、アイヌ語でも突起を意味するウトーと言う名前です。
ちなみに撮影に望遠レンズは必要ありませんでした。
携帯電話のカメラでも充分かと思います。
あ、フラッシュは厳禁ですよ!
柵にLEDライトを着けてくれるので、その灯りで撮影出来ます。
鳩をひと回りくらい大きくしてずんぐりさせたような体型でしょうか。
決して上手とは言えない歩き方で藪の中を彷徨っています。
カモメ達に獲物を横取りされたのでしょうか?あちこちで獲物の奪い合いをしたり、間違えて他所の巣穴に入り込んで追い出されたりと見ていて飽きません。
そしてやっと撮りたかった瞬間を撮影出来ました。
沢山の獲物を加えて巣穴に入る瞬間です。
感無量でしたが観察には制限時間があり、タイムオーバーとなりました。
本当に大事にされていますね。
さて宿に戻り、翌朝はボートに乗って更に間近で海鳥達を観察します!
豆粒みたいにしか見れなかったオロロン鳥やケイマフリやウミスズメ達の生き生きした姿を撮影です。
深酒もせずに早めの就寝。
早起きをして身支度を整えていたらまさかの欠航の連絡…
なんとも残念ですがどうしようもありません。
近場で少し遊びました。
アブラコ
ガヤ
海鳥の楽園はロックフィッシュの楽園でもありました。
ボートでの海鳥観察が出来なかったのが残念ではありますが、必ずまた天売島に訪れようと思います。
最高の旅をありがとうございました。