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極上食材“フエダイ”を求めた磯釣り

初めての1匹との出会いに最も価値を置き、世界中何処へでも行く怪魚ハンター山根ブラザーズの兄。釣りや採集だけでなく漁業者や研究者と協力してまでも、まだ見ぬ生き物を追い求めてフィールドに立つ。 テレビ東京・緊急SOS池の水全部抜く大作戦やNHK・ダーウィンが来た、TBS・VSリアルガチ危険生物などに出演したり、魚類生態調査に参加したりと幅広く活動中。

旨い魚を食べる為に釣りに行く。これもまた釣りの醍醐味である。
シロテン、シブダイ、ホシタルミ、ナベワリ、スタースナッパー……。
多くの呼び名を持ち、脂肪がどえらい派手な色をした魚が主人公だ。

 

フエダイ科フエダイ属フエダイ(Lutjanus stellatus)

フエダイ シブダイ シロテン今回の記事の主人公を務めるのはスズキ目フエダイ科フエダイ属に分類されるフエダイという魚だ。
フエダイの仲間と聞いて、釣り人がパッと思い浮かぶ魚といえば、きっとマングローブジャック(ゴマフエフキ)やクロホシフエダイなんかが一般的だと思う。
今回は、読んで字のごとく、フエダイ類の直球ド真ん中を行く魚をご紹介するのだが、ご存知ない方も少なくないだろう。
それもそのはず。フエダイは釣り物としても食材としても割とレアな魚なのだ。

 


フエダイの生態と特徴

フエダイ シブダイ シロテンフエダイ シブダイ シロテンフエダイ シブダイ シロテンフエダイは南日本から台湾および中国にかけて生息する魚で、フエダイの仲間としては最も北まで分布する種類であり、その北限は千葉県とされている。
最大で50cmから60cm程度まで成長し、フエダイの仲間としては中型種と言えるだろう。
ヒレは黄色く、体色は黄褐色で赤みの強い個体もいる。
形はタイの仲間のように側編し、体側には小さな白点が1つ目立ち、これがシロテンと呼ばれる由来となっている。
余談になるが、タマンの呼び名で親しまれているハマフエフキはスズキ目フエフキダイ科フエフキダイ属に分類されている。

 

 

フエダイは格別に旨いらしい

フエダイ シブダイ シロテン実は、数年前に27cmくらいのフエダイを一度だけ釣り上げたことがあった。
当時はフエダイに強い思い入れなんてなく、魚種集め的に珍しい魚が1種増えてラッキーってくらいの感動であった。
勿論、旨い魚ということくらいは知っていたので持ち帰って食べてみたのだが、とりたてて感動的ではなかった。
今思えば、ちょっとサイズが小さすぎたのかもしれない。
そんなフエダイを釣って食べたいと弟のマサから電話が掛かってきた。
なんでも、デカいシブダイは究極的に旨いと友人に聞いたらしい。

 


課金に課金を重ねて沖磯へ

フエダイ シブダイ 和歌山フエダイの釣果情報を頻繁に更新していた渡船屋に予約を入れ、オキアミとキビナゴ、エビとイカ、集魚剤も含めて大量に餌を買い込んだ。
いくら使ったかは、我らの名誉にかかわるため非公開としておこう。
実釣当日は波風穏やかだったのでフエダイの実績が高いという磯に渡してもらうことができた。
フエダイはどちらかというと夜に釣果が上向く傾向にあると聞いていたので、今回は夜釣りでの挑戦だ。




 

集まる魚全部釣る大作戦

イスズミ 鹿児島 伊豆 フエダイ シロテンオジサン 伊豆 大島 フエダイ シロテンタイワンカマス 伊豆 和歌山 フエダイ シロテン沖磯 渡船 シロテン シブダイ フエダイ タマン竿に電気ウキを取り付けて実釣開始。オキアミと種魚剤をバンバン撒く。キビナゴも撒く。
あっという間にとんでもない数の魚が足元に集まってきて、入食いが始まった。
夜光虫が湧いているようで、餌を撒く度にまるで流星群のようにギュンギュンと海中が光りまくる。
ジャンボイスズミに始まり、イサキ、ハマフエフキ、イトフエフキ、オジサン、イットウダイ、アカマツカサ、ハタンポ、アカハタ、タイワンカマス、ウツボ、……。他にも釣れた気がするが、とにかく日暮れから日の出まで、大小様々な魚が永遠と釣れ続けた。特に、イスズミとオジサンの数は尋常じゃなかった。
恐るべし、撒き餌効果。しかし、途中から我ら兄弟は察した。
こんな水族館のような状況を作ってしまっては、本命フエダイは釣れにくいのではなかろうかと。

 

 

 

リベンジマッチは地磯へ

シブダイ 餌 撒き餌 キビナゴ スルルー イワシシブダイ 餌 撒き餌 キビナゴ スルルー イワシ釣って、釣って、釣りまくった我らは猛省し、リベンジ釣行は極端に質素な釣りを計画した。
撒き餌は格安で入手したカタクチイワシを気休め程度に用意し、キビナゴは付け餌分だけ。集魚剤やオキアミはなし。餌代は1/10になった。
釣り場もマサの経験からフエダイが潜んでいそうな地磯に変更した。
実績場よりもスレてない場所が良いのではという考え方だった。

 



撒き餌をしないと……

シブダイ 電気ウキ 撒き餌 キビナゴ スルルー イワシお互い予定をこなしてからの実釣であったため、電気ウキが海面に浮かぶ頃にはすでに深夜となっていた。
餌のキビナゴを針につけて流していくがいっこうに餌が取られない。
撒き餌を巻きまくった前回は、毎投何かしら掛かるような状況だっただけに、この日は辛抱の釣りだ。
同じコースをひたすら流し続けること1時間、ようやく赤い電気ウキの光が海中に消し込んだ。

 



フエダイとご対面

フエダイ シブダイ シロテン 和歌山 鹿児島 伊豆 房総フエダイ シブダイ シロテン 和歌山 鹿児島 伊豆 房総強い引きを往なして海面に浮かした魚をヘッドライトで照らしてみると、本命のフエダイだった。
やっぱり、狙って釣れると一度釣った事ある魚とはいえ嬉しいものだ。
そして、時合なのか間髪入れずにもう一尾フエダイを追加。釣り方とポイントが分かり、マサとハイタッチしながら喜んだ。

 


美味しく食べる為に妥協しない

タマン シブダイ シロテン 和歌山 鹿児島フエダイ シブダイ シロテン 和歌山 鹿児島 伊豆 房総イスズミ フエダイ シブダイ 和歌山 鹿児島 伊豆 房総ゴマヒレキントキ 和歌山 鹿児島 伊豆 房総フエダイ シブダイ シロテン 和歌山 鹿児島 伊豆 房総11匹持ち帰ることができることになったところで、マサがスカリで泳ぐフエダイを車に運ぶと言い出した。
崖を降りたりする関係でクーラーボックスを持ってこられない場所で我々は釣りをしていたのだ。
軽身とはいえ、往復するだけでも結構な時間を食ってしまうが、そんなことより鮮度良くフエダイを持ち帰りたいらしい。
ということで、血抜きをしたフエダイはマサによってたっぷり潮氷が入ったクーラーに入れられた。
結局、この日はフエダイ3、ハマフエフキ2、イスズミ1、イズヒメエイ1、アカハタ1、ウツボ1、タイワンカマス1、ゴマヒレキントキ1という釣果に満足して納竿した。
魚種や数は、前回に及ばないがフエダイ釣りとしては上出来だったと思う。
費用対効果も素晴らしい。そして肝心なサイズも40~50cm程度と良型揃いであった。

 


ショッキングオレンジ

フエダイ シブダイ シロテン 和歌山 鹿児島 伊豆 房総フエダイ シブダイ シロテン 脂肪 オレンジフエダイ シブダイ シロテン 脂肪 オレンジこの記事を読んでくださっている方々の殆どが、釣果なんかよりフエダイがホンマに旨かったのかどうかを気にしていることくらい、僕も分かっている。
50cm近い個体はド派手な内臓脂肪がたっぷり入っていた。
その色たるや。ショッキングオレンジとでも表現しておこう。
40cm程の個体では内臓脂肪はやや控えめ。
因みにタマンは大当たり。お腹は脂肪ではちきれそうだった。

 




フエダイは大きければ大きいほど脂が乗っていた

フエダイ シブダイ シロテン 脂肪 高級食材フエダイ シブダイ シロテン 脂肪 高級食材フエダイ シブダイ シロテン 脂肪 高級食材小さい方のフエダイは翌日、大きい方のフエダイは8日寝かせてから刺身、炙り、塩焼き、鍋なんかで頂いた。
40cm程度の小さい方の個体は、鮮度が良すぎたのか、やや透明感のある身の色で脂の乗りはやや控えめだった。
それでも、旨味は深くて甘みもあり、美味。だけど、個人的には、ハマフエフキの勝ちだった。タマンも大当たりを引くと、めちゃくちゃ旨いのだ。
そして大本命。大切に一週間以上寝かした大きい方のフエダイは3枚におろした時点で別次元だった。
身は真っ白に白濁している。刺身に切り分ける際には、毎回包丁を拭かないといけないくらいベットリと脂がつく。醤油につけても醤油を弾く。
脂が多いため口の中で溶けてしまいそうなのだが、白身魚特有の心地よい食感もある。
味が濃いのにくどくなくて、脂っぽいのにさっぱりとしていて、いくらでも食べられてしまった。
アラで出汁を取って、勿体ないと思いながらも半身を丸っと鍋にした。無論、締めは雑炊だ。
フエダイは火を通しても旨かった。というか、火を通す料理のほうが合っているのかもしれない。
鍋の具材としても申し分なく、出汁も最高だった。言うまでもなく、極上タマンを超える旨さだった。
この美味しさを知ってしまった僕たちは……。今後、定期的にフエダイ釣りに出掛けること間違いなしだ。

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