何億年も前からその姿を変えず生き続けている彼らを生きた化石と呼ぶ。
ピラルク
ピラルクに興味がある方はこちらヘラチョウザメ
カブトガニ(山口県)
アマミノクロウサギ(奄美大島)
生きた化石と呼ばれる生物は世界そして日本においても観ることはできる。家に現れてはお母さん&娘を恐怖に陥れ、父がその唯一の威厳で叩き潰すという日常で登場するゴキブリも実は生きた化石だ。
植物も加えると更に数多く存在する彼ら、今回は身近な田圃で観ることができる3種の生きた化石をご紹介することにします。
田圃に水が張られる季節。1週間ほどで彼らはその姿を現す。
ホウネンエビ
豊年蝦とも書き、水田で見かけるとその年は豊作になるとも言われる甲殻類の仲間。体調は最大でも2㎝程と小さく、水中の植物性プランクトンを主食とする。また遊泳脚を駆使して泳ぐが身体を支える足はなく逆さに泳ぐことが多い。彼らは三葉虫等が生息していた2億5千万年前まで続いた古生代からほぼ姿を変えずに命を繋いできた生きた化石である。
カイエビ
ホウネンエビや後程紹介するカブトエビに比べると圧倒的に知名度が低いカイエビ。田圃を覗くとくるくると回る様に泳いでいる小さな生き物がカイエビである。貝の中に海老が綺麗に収まり泳ぎ回る様な姿は圧巻。奇妙で格好良い。日本には7種。世界には約200種のカイエビが存在する。そして彼らも、中生代、所謂恐竜が栄えた時期の化石として確認されている。
カブトエビ
そして今回の主役カブトエビ。日本には北海道の一部に僅かに生息する可能性があるヘラオカブトエビを除けば4種のカブトエビが比較的多く生息する。今回は和歌山に生息するオーストラリアカブトエビ以外の三種を田植え時期にあわせて観察できた。アジアカブトエビ・アメリカカブトエビ・ヨーロッパカブトエビの三種だ。
アジアカブトエビ
日本では静岡から西日本にかけて疎らに生息域を広げる。今回は友人の協力のもと山口県で観察。
田圃の片隅で数匹が交わる。どうやら産卵行動のようだ。
僅かな時間、観察水槽にホウネンエビと一緒に泳がせていたら….ホウネンエビが捕食されていた。カブトエビは雑食性だ。
アメリカカブトエビ
関東以南から九州まで最も幅広く生息する。今回は栃木県の某所で観察。
腹部を観ると遊泳脚とその先端にみられる鰓。そして、身体を支える歩脚がみられる。
ヨーロッパカブトエビ
宮城県・山形県の限られたエリアに生息する。
三種の外観はほぼ変わらないが、挿し絵の様に尾節部分の棘の配列で区別することができる。非常に細かい部分の観察となるので老眼の方は虫眼鏡かハズキルーペを持参して欲しい。
アジアカブトエビは元々日本に生息していたという説があるが、他の2種は名前の通り外来種と言われている。しかしながら、カブトエビは雑食性で水田に生える雑草の芽を食べ、そして泥を巻き上げ泳ぎ回ることにより日光を遮り、新しい雑草が育つのを妨げる。稲作への貢献度が非常に高いとされている。そんな彼らが何故数億年もの間、姿を変えず生き続けることができたのか?
それは彼らの産卵する卵に秘密がある。彼らは水田に水が入るとともに孵化し、短期間で成長を遂げ、1~2カ月でその短い一生を終える。その僅かな期間で産卵を行うが、その卵は耐久卵と呼ばれ。乾燥や気温の変化等への強さを持ち合わせている。1年間のうち殆どの時間をこの強靭な卵で過ごす彼らはあらゆる環境変化へ対応可能。環境変化に適応するために進化する必要もなく何億年もの間命を繋いできたと言う事になる。
彼等の成体としての出現時期は短い。是非田植え時期に無農薬栽培を行う田圃を覗いてみてほしい。