ヘラチョウザメを食べに行った(アメリカ合衆国・オクラホマ州)

ヘラチョウザメを食べに行った(アメリカ合衆国・オクラホマ州)

魚類に留まらず両性爬虫類から昆虫まで探して国内外を旅する 嬉し恥ずかしの51歳。福岡県出身・おうし座。

遥か昔からその姿を変えていない魚類たちを古代魚と呼ぶ。その古代魚たちの中でも一際異形の魚ヘラチョウザメを求め、2019年11月タルサ国際空港に降り立った。

 

ヘラチョウザメ

ミシシッピー川水系に生息し、およそ1億2500年前、白亜紀よりその姿を殆ど変えていない『生きている化石』と呼ばれる古代魚の一種。チョウザメの名が付くが、他のチョウザメ類とは別のグループ、ヘラチョウザメ科に属す。また、サメの名前が付くが、サメと同じ軟骨魚類の仲間ではなく、他の一般的な魚類と同じく硬骨魚類である。吻と頭部に無数の微弱電気を発する器官をもち、これを使い水中のプランクトンや小魚を捕食し、成魚平均で150㎝30㎏ほどの巨体を維持する。

残念ながら近年ヘラチョウザメは彼らの卵がキャビアとして利用されることもあり、乱獲により数を減らしている。

 

捕獲方法

前述したように彼らの主食は水中のプランクトン。つまり餌釣りや疑似餌による釣りでは難しくなる。

その為、スナッギング(引っ掛け)による釣りとなる。

今回は現地のガイドさんに依頼したこともあり、ボートを使ったトローリングによるスナッギングを選択した。快適なボートで後方に2本竿を出し中層を探りながら船は進む。ターゲットが引っ掛かるまで殆ど出番がないと言う大名釣りで退屈。しかしながら、今回、へラチョウザメを釣る為に遥々日本からやって来た奇特な釣り人を取材しようとオクラホマのニュース番組のTVクルー達が同乗していた。

無駄に笑顔を作ったり、拙い英語でインタビューに答えたりと空いた時間もお陰様で退屈することがなく、そして、結果いとも簡単に釣れてしまった。

 

確かに釣りは呆気ないものだったが、期待通りヘラチョウザメの異形ぶりが凄すぎて抱きしめるように抱え上げた。TVクルー達も嬉しそうに魚の粘膜にまみれるアジア人の奇妙な姿を興味深げに撮影した。

その翌日に放映されたニュース番組で最大の見せ場になったのかもしれない。平和な街だ。

 

ヘラチョウザメの細部

さて釣り上げたヘラチョウザメ細部まで観察してみた。

身体の大きさと比較すると鰭が比較的小振り。遊泳力は釣った際も感じたが然程ではない。

 

最大の特徴のヘラの部分(吻)表

 

吻の裏。表同様、無数に見える斑点は微弱な電気を発するための機関だろうか。

 

口内には歯は見当たらない。水からプランクトンをこそぎ取る為の器官鰓耙(さいは)がみられる。

 

鰓蓋骨。いわゆる、えらぶた。いかにも古代魚と言った形状。

 

鼻孔と目。目は非常に小さい。捕食は微弱電気に頼っているためであろうか。また鼻孔は他の魚類と同様片方に2個存在する。上部の鼻孔で吸って下部で吐くのだろうか?上部が水を吸い込みやすいように前方に傾いている。

 

個体数が減少しているため保護対象にもなっている。この個体はタグが付けられていた。

 

実食

ニュース番組は翌日放映された。釣ったヘラチョウザメを食べながらテレビを観ようと言う事になり、ガイドのラスティに自宅に招かれ、奥様のベスが手際よくフライにしてくれた。

薄目のサーモンの様な身。

 

若干の臭みはある。これこそ古代の香りか?不快な臭みではない。淡白な味わいで揚げ物にしても沢山食べられる魚だった。残念ながら今回は期待のキャビアはお預けとなった。

 

美味しいフライを頬張りながら観ていたTVには酷い英語を操る、飛び切りニヤけたアジア人が映っていた。

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