秋はバッタ達の恋の季節。
バッタ達は子孫を残す為に、この時期せっせと交尾を行う。世界的に観ると一部のバッタ達は、しばしば爆発的に数を増やし、集団で農作物も襲う。所謂、蝗害を引き起こす害虫として、恐れられています。
最近では2020年、アフリカで大発生したサバクトビバッタの大群が、アフリカ・中東・インドへと移動し、農作物を食い荒らした。その大きな群れは、東京都全域を凌ぐ面積を覆いつくす程で、農作物を容赦なく消失させた。世界的な食糧難を引き起こすとまで言われていたが、寒さに弱いサバクトビバッタは、ヒマラヤ山脈を越えることなく、中国で更に大きな被害をもたらす以前に終息したようだ。しかしながら、今後も温暖化の影響や、物流に紛れ込んで国境を超える事も想定でき、大きな脅威となる可能性が高い。
さて、その蝗害だが、かつて日本の北海道でも何度か発生しているそうだ。その原因となったのは、今回の主役トノサマバッタになる。殿様なのに大群で我々庶民の農作物を食い荒らすとは、殿ご乱心か?としか思えない所業である。
こちらは今回の主役日本在来トノサマバッタだ。殿様の名前が付くほど、他の在来バッタと比較しても大型で堂々としたバッタだ。
こちらは中米コスタリカで見かけた、鮮やかな色彩のバッタTropidacris cristata。このバッタが蝗害を引き起こす種であるかは定かでないが、日本のトノサマバッタの1.5倍ほどの全長。もし、このバッタの大群が裏の畑に向かって襲ってきたと考えると….
トノサマバッタを捕まえて観察してみる。
さて、今回のフィールドは実家の前の畦道。なんとも壮大な蝗害な話の後で、取材費も超格安の優良記事と続いていく。
畦道へと歩みを進めると、色んなバッタ達が驚いて飛び跳ねる。なんだか懐かしい光景。その中で一番警戒心が強く、跳びはねる俊敏性と跳ねた後の飛行距離を兼ね備えたのが、トノサマバッタである。
298円の虫取り網を持ち、追い掛け回すこと1時間、中々手強い。50歳を超えた捕獲者の俊敏性に課題を残しながらも、なんとか計8匹のトノサマバッタを捕獲した。
捕獲したトノサマバッタの内6匹は、この状態で飛べない状態でしたが…
捕まえたトノサマバッタの細部を観てみよう。
先ず触覚。優秀なセンサーで、臭いや振動を感じ取ることができる優れもの。また大きな目は、複眼で小さなレンズの集合体。この目で物体を認識し、色を判別する。また複眼の前方と、顔の中央にある小さな目は単眼です。単眼は明るさ・暗さを判別します。
胸部には前足、中足、後足が計6本と前翅、後翅の計4つのはねが付いています。
腹部になります。お腹に観える小さな穴は気門です。この穴を使い呼吸を行います。
こちらは後ろ足。昆虫屈指の強靭さを持ち、関節部分にはレジリンというゴム状のタンパク質を有します。これを使い強力なジャンプ力を演出します。
トノサマバッタの雄雌の見分け方は、大きさとお尻を正面から観ることで容易く見分けられます。
大きい個体でお尻の先が縦に割れているのがメスです。
一方の雄は、比較的小型でお尻の先が縦に割れていません。
トノサマバッタの細部は如何だったでしょうか?苦手な方もいるでしょうが、観れば観る程、子供の頃に憧れたヒーローを彷彿させる容姿ですね。それではそのヒーローを有難く&美味しく頂く事にします。
トノサマバッタを食べてみよう。
2020年に大発生したサバクトビバッタは、食べても非常に美味しくないと聞きました。トノサマバッタはどうでしょうか?今回は天婦羅で頂く事とします。
先ずはお決まりの、1晩かけて糞をしていただきます。雑味がなくなりますので、早く食べたいと言うせっかちな方も辛抱ください。
熱を通すと、ほんのりと赤くなります。サクサクの衣の中に更に歯ごたえの良いサクサク感。小エビを殻付きで揚げた食感に似ています。香ばしく、特に嫌な臭いなどはしません。ほんのりと、甘味と旨味を感じます。
トノサマバッタは大きく食べ応えもあり、過去一番の美味しさ。非常に優秀な昆虫食で星3つです。
いつの日か日本で蝗害が起きたとしましょう。その時、食べるか?農作物を食べられるか?選ぶのは貴方です。