イナゴを捕まえる真髄とは、ひじを左わき下からはなさない心構えで、やや内角を狙いえぐり込むようにして、打つべし!捕るべし!
田圃は黄金色に色付き稲穂は首を垂れる収穫の秋。いなご達は何処からともなくやってくる。彼らと素手でやり合い、捕獲しまくるシーズンの到来である。
イナゴとは
稲を食べる害虫とされるイナゴ。国内に8種のイナゴが生息しているが、その識別はなかなか難しいので割愛。害虫とされる一方で戦前戦後と内陸部農村の貴重なたんぱく質源として重宝された歴史もある。一部の地域では現在でもイナゴが食卓に並ぶ文化が根強く残っている。また世界的にみてもアジア圏を中心に多くの国々で食べられており、最近注目されている昆虫食の初級編としても是非お勧めしたいターゲットでもある。時期的には稲の収穫時期の8月・9月にしっかりと太ったイナゴが出現する。
イナゴを捕まえよう
イナゴは上記したようにイネ科の植物が好物。田圃周りやイネ科の植物が生茂るマイポイントを見つけておくと毎年のイナゴ捕りとイナゴ料理が年間行事の一つとなることだろう。
今回は葦の密集したポイントで捕獲を始める。持ち物は捕獲したイナゴの入れ物だけあれば大丈夫。ただし、虫籠などを使うと捕獲する度に虫籠内のイナゴが逃げ出す恐れがあるので、洗濯用のネットなどを利用した方が効率が良い。
葦の葉にはイナゴに食べられた痕跡が見受けられる。これが田圃の稲であれば、害虫として認識されるのも仕方がない。
最初は中々見つけられないイナゴ達。更に歩くと素早く飛び去ってしまう。しかし、焦ることはない。目が徐々に慣れてくれば効率よくみつけられる。
足元より目線の高さの葉にとまったイナゴを狙おう。
慣れてしまえば簡単。素手で次々と捕獲できる。冒頭で書いたように脇を締めパンチ(ジャブ)を繰り出すように素早くそして優しく手で捕獲する。
素手での捕獲は葉の端で手を怪我をしたり、イナゴと一緒に偶然ハチや毛虫がくつろいでいないとも限らない。虫刺され、かすり傷を恐れる方は軍手などで手を保護した方が身のため&貴女の為でもある。
また、捕獲したイナゴは十中八九の確率で口から茶色い液体を吐きます。これは消化液とイナゴが食べた物のリバース。所謂ゲロです。若干の臭くもありますが、毒ではありませんので恐れることはありません。躊躇なく捕獲を継続しましょう。
成長と共に脱皮を行うイナゴ達。
食欲も旺盛で次から次へと葉を移動し腹を満たしていく。
そして腹を満たして、いざ交尾。イナゴの繁殖力は非常に高い。
脱皮・食事中・交尾中のイナゴは確実に警戒心が薄く、捕獲しやすい。特に交尾中の所謂『おんぶイナゴ』は一度で2匹捕獲の大チャンス到来だ!
イナゴを食べる
さて、持ち帰ったイナゴ達。一晩は生きたままネットに入れて、糞をしてもらいます。そして一晩経って糞を出し切ったイナゴ達に洗濯ネットに入れたまま熱湯をかけて締めます。イナゴが室内で逃げだすことが防げますのでこの方法がお勧めです。その後、イナゴのみをネットから取り出し鍋で10分程茹であげます。
これで下準備終了。真っ赤に染まったイナゴはとても綺麗で食欲をそそるかもしれない?
そして、いよいよ調理を開始する。
先ずはイナゴ料理の鉄板。佃煮だ。
酒・醤油・みりん・砂糖を適量で焦げないように混ぜながら弱火で煮込む。羽と足煮る前に取り除いた方が良いとの意見もあるが、私は気にせず食べてしまう。
味は普通の佃煮。臭くもないし苦みもない。炊き立ての白米との相性最高。
続いてはイナゴのかき揚げそばだ。かき揚げから染みた油がそばと絡んで‥‥普通に美味い。
かき揚げ自体は小海老の食感と味。全く差しさわりのない蕎麦だが、食後の歯磨きをして口をゆすぐとイナゴの足が出てきたことくらいがほんの少しだけ感じる違和感。
味だけは差しさわりのないイナゴ料理。死んだお婆ちゃんを懐かしむ一品としてはお勧めしたいところではある。
しかしながら、秋の食卓の定番になりえるかどうかは、読者さまの家庭での力関係が大きく影響してくることは間違いないだろう。
因みに私のお婆ちゃんは山口県の女性で、一度もイナゴ料理を振舞ってもらったことはないのだが…..