花の都・東京を離れ早や3か月が過ぎ、今では福岡県の里山生活にもすっかり馴染んできた。ネオン街なんて全くないが、夜はイノシシ、タヌキ、アナグマが徘徊し、先月は夜空に蛍が美しく舞ったものだ。この時期なんてモスキートが狂喜乱舞で僕を滅多刺し。自然や生き物を愛する者としては決して悪くない環境ではある。
そして6月。おらが村にもいよいよ田植えの季節がやって来た。田圃には水が入り小さな稲が彩を添える。
一体どこから湧いて出たのかジャンボタニシ(スクミリンゴガイ)が這いまわり、そして凄まじいスピードで産卵を行う。
こちらはガムシの幼虫。怪獣感を全身から醸し出す。少年はくぎ付け、少女は悲鳴もの容姿だ。
こちらは昨年のカブトエビの記事でも紹介させていただいた生きた化石カイエビ。中生代、所謂恐竜が栄えた時期の化石として確認されている。
古生代からほぼ姿を変えずに命を繋いできたホウネンエビ。
田圃周辺の生物相も水が入った後、短時間で一変し、多くの生き物達が田圃の作り出した水辺に集まり新しい生命の息吹が芽生え始める。
そして、今回は去年もご紹介させていただいた生きた化石カブトエビについてのお話だ。昨年は宮城県・茨木県・山口県の三県に渡り3種のカブトエビをご紹介させていただいた。しかしながら、なんと福岡の新居近くの田圃に彼らは湧いているではないか。
捕獲は簡単。次々と小さな網で掬っていく。殻は思いのほか柔らかいので捕獲の際には潰さないように。また、田圃の持ち主さんには許可をとり、捕獲の際には稲を痛めたりしない様くれぐれも気を付けていただきたい。
カブトエビを観察しよう
カブトエビは雑食性で水田に生える雑草の芽も食べ、そして泥を巻き上げ泳ぎ回ることにより日光を遮り、新しい雑草が育つのを妨げる。その為、稲作への貢献度が非常に高いとされ益虫と言われる。虫じゃないけどね。
そんな彼らが何故数億年もの間、姿を変えず生き続けることができたのか?
それは彼らの産卵する卵に秘密がある。彼らは水田に水が入るとともに孵化し、短期間で成長を遂げ、1~2カ月でその短い一生を終える。その僅かな期間で産卵を行うが、その卵は耐久卵と呼ばれ。乾燥や気温の変化等への強さを持ち合わせている。1年間のうち殆どの時間をこの強靭な卵で過ごす彼らはあらゆる環境変化へ対応可能。環境変化に適応するために進化する必要もなく何億年もの間命を繋いできたと言う事になる。
さて、カブトエビの細部を観てみよう。
頭部は甲殻類でありながら柔らかい殻で覆われている。前方に2対の複眼とその中央に小さな単眼を持つ。単眼は明暗を識別するノープリウス眼という。
胸部には歩脚。腹部には鰓呼吸を行う器官である鰓脚が観られる。
後方には2本の尾が観られる。また腹部は多くの節で成り立っており逆さに泳いだり反転したりと水中でのアクロバティックな動きを可能にしている。
今回捕獲に至ったのはアメリカカブトエビ。前回ご紹介したように尾の付け根の棘の出方でアジアカブトエビやヨーロッパカブトエビとの区別が可能だ。これを覚えておくと春の田圃ではヒーロー扱い!?是非記憶に留めておいて欲しい。
カブトエビを食べてみる
さて、甲殻類であるカブトエビ。油で揚げると如何なものか。甲殻類でありながら揚げても赤くならない色彩が食欲をそそらない。口に運ぶと広がるサラダ油の香り。味もサラダ油の味。本当に遥か遠くに微かに漂う甲殻類の香りがある様な無い様な…そんな一品でした。
2022年カブトエビ3種についての記事はこちらから