フェモラータオオモモブトハムシの幼虫を食べてみた(愛知県)

フェモラータオオモモブトハムシの幼虫を食べてみた(愛知県)

魚類に留まらず両性爬虫類から昆虫まで探して国内外を旅する 嬉し恥ずかしの51歳。福岡県出身・おうし座。

人類は恐るべきスピードで進化を遂げ、文明社会を築き上げた。そして近年では世界はボーダレス化が進み。人類はいとも簡単に国境を行き来するようになった。

しかし、国境を越えて行き来することになったのは人類だけではなかった…..

現在日本国内に生息する外来生物は2000種を超えていると言われており、同時に日本国内の生物も海外に渡って大繁殖しているケースも見受けられる。池の水を少々抜いたくらいでは、もう取り返しのつかない状況となっており、外来種が侵入したエリアでは国内在来種への影響が危惧されている。

今回は、日本の近畿・中部に生息地を凄まじい勢いで広げている、外来甲虫フェモラータオオモモブトハムシにフォーカスをあてる。

 


フェモラータオオモモブトハムシとは

外来昆虫フェモラータオオモモブトハムシとは赤い金属色に輝く体表。まるで宝石の様だ。

 

外来昆虫フェモラータオオモモブトハムシとは成体は6月頃から8月頃の夏場に観ることができる。「オオモモブト」というだけあって立派な後ろ足が目が引く。

 

外来昆虫フェモラータオオモモブトハムと産卵場所となる葛これが彼らの主食で産卵場所となる葛。この葛もアメリカ大陸等に外来として渡り、凄まじい勢いで繁殖しており生態系に影響を及ぼしているらしい。

三重県で最初に発見されたフェモラータオオモモブトハムシ(以下フェモ)。現在は中部地方、関西にまで生息圏を広げている。元々熱帯に生息する甲虫であるが、冬場は彼らの主食である葛の蔓に卵を産み付け、その幼虫は蔓の中で虫こぶ(ゴール)を作り越冬する。

成虫は15㎜~20㎜程の体長で夏場に姿を現すが、金属光沢の赤みの強い美しい体色には目を見張る。尚、体色は日本で多くみられる赤以外に黒、緑、青などがみられる。

 


フェモラータオオモモブトハムシの幼虫は美味しいらしい

さて、昆虫食は近年国際的にも関心を集めている。爆発的に増えた人口に対して不足するタンパク質を確保するために国連の機関が推奨しているほど。

日本国内においても冬季に不足するタンパク質を確保する為、ざざむしが食されていたり、蜂の子、イナゴ等々も昔から食されてきた。そして最近ではハリウッドのセレブ達の間でも昆虫は人気食材として扱われているそうだ。
 

外来昆虫フェモラータオオモモブトハムシ。注目される昆虫食イナゴの佃煮。

イナゴの佃煮。小エビの佃煮と殆ど変わらない。味は佃煮の味しかしないのだが…

 

外来昆虫フェモラータオオモモブトハムシ。注目される昆虫食ざざむし。ざざむし。ヘビトンボ・カワゲラ・トビゲラの三種を頂いた。こちらも佃煮。

 

外来昆虫フェモラータオオモモブトハムシ。注目される昆虫食モンクロシャチホコ。桜の葉に着くモンクロシャチホコの幼虫。所謂、桜毛虫とよばれる毛虫をけんぴにしたお菓子。ほんのりと桜の香りが漂う中々品のあるお菓子であった。

 
フェモの幼虫が非常に美味しいと聞きつけた私は半信半疑で生息地の愛知県のとある河川敷に向かった。葛にできた虫こぶとその中で成長を続けるフェモの幼虫を採取するのが狙い。
念の為、河川敷を監理する役所に葛の一部を採取することを許可いただき、現場に到着した。

なんとも恐ろしいことに、河川敷の木に絡みつく葛の蔓は虫こぶだらけ。あっという間に虫こぶの採取は完了した。

 

外来昆虫フェモラータオオモモブトハムシの幼虫を探す。冬の河川敷。夏場に生い茂っていた葛も枯れ果てていた。

 

外来昆虫フェモラータオオモモブトハムシの幼虫を探す。外来昆虫フェモラータオオモモブトハムシの幼虫を探す。葉の落ちた木に絡みついた葛の茎。処々に虫こぶ(ゴール)を観ることができる。

 

外来昆虫フェモラータオオモモブトハムシの幼虫を探す。採取した虫こぶを割ってみると5~6個の蛹室。蛹室をそっと破ってみると恥ずかしそうに色白の幼虫がお尻をみせた。

 
外来昆虫フェモラータオオモモブトハムシの幼虫を探す。外来昆虫フェモラータオオモモブトハムシの幼虫を探す。

一つの虫こぶからとれたフェモの幼虫。河川敷にはこの虫こぶを無数に見つけることができる。幼虫の大きさは1㎝~2㎝程。

 

 

華麗なるフェモ料理

持ち帰った。虫こぶを丹念にすべてほぐしていく。15個ほどの虫こぶから120匹程の幼虫が出てくるではないか。
流石に昆虫料理を我が家の調理器具を使い、台所を占拠すると嫁が悲鳴をあげそうだ。嫁が友人宅へと出掛けるタイミングを見計らい、そっと調理をスタートさせた。

外来昆虫フェモラータオオモモブトハムシを食べてみる。≪1品目≫
フェモのマカロニパスタ。ボイルしたフェモ、マカロニとパプリカをニンニクの香りを加えたオリーブオイルでさっと炒める。塩コショウで味を調え完成。

シンプルで素材の味を楽しめるパスタ…虫が苦手な方はマカロニの方を良く見て頂いて下さい。

 

外来昆虫フェモラータオオモモブトハムシを食べてみる。≪2品目≫
フェモの3種食べ比べ。向かって左からフェモのバターソテー。塩茹で。そして素揚げ。ビジュアルはまるで魔女の夕食と言ったところであろうか??宅急便ではない。

  

外来昆虫フェモラータオオモモブトハムシを食べてみる。≪3品目≫
フェモの桜チップ燻製。燻製の香りが強くフェモ自体の風味が消えてしまうのであまりお勧めはしない。

 

外来昆虫フェモラータオオモモブトハムシを食べてみる。≪4品目≫
濃厚バニラアイスフェモの素揚げを添えて
穀物っぽいフェモと、バニラアイスとの相性がとても良い。女子力があがりそうな一品。

 

さて、フェモ料理の感想ではあるが、素材自体は穀物的な風味。芋とも豆とも近い臭みのない味。特に2品目の食べ比べ。バターソテー、は全く癖がない。とても美味しい。総じて優秀な食材であるとの認識を強めた。目をつぶって何も考えず食べれば貴女でも貴方でもいける筈です。

しかしながら、食べればハリウッドのセレブになれると言う訳ではないことは追記しておく。

今回美味しく頂いたフェモラータオオモモブトハムシ。その繁殖力は目を見張るものがあり、今後も日本の気候に適応し、その生息域を広げ、個体数を増やしていくであろう。その過程で葛以外の豆科の農作物への影響も出てくる可能性は十二分にある。


外来種問題は非常にナイーブな難しい問題である。外来種が何故やって来たのか?根本の原因を解消しない限り、中途半端な駆除では解決しないであろう。そして、一旦彼らがその土地の風土に適応するとその繁殖力で爆発的に増えていく。
もはや外来種との共生を一考していく時代なのかもしれない。

 

BRECOLで紹介した昆虫の記事はこちら

*この記事は2021年9月30日に掲載されたMonsters Pro Shopのリメイク記事になります。

 

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