インド北部の冬は皆様が思うより遥かに寒いです。中々魚が釣れなくなります。そんな時期、魚達に会うのはガサガサが最善の方法。ガサガサがインドでも流行るかもしれない、更に、インドガサガサの先駆者になれるかもしれないという壮大な野望を持って、今日も活動しています。
[Tricogaster fasciata]
バンデッドグラミーやストライプドグラミーと呼ばれていて、東南アジアに広く生息している魚です。
最初見つけた時は驚きましたが、胸鰭が進化したのか、退化したのかはまだわからないと言われている触手のようなものがあり、何かを探すかのように四方八方に器用に動かしながらゆっくりと泳ぐ魚です。水槽の中でサスペンドするのも良い感じです。
この種は、ガサガサをするとかなりの確率で捕まえることができるグラミーです。
冬場に捕まえるこのグラミーの色は全体的に地味な感じがしますが、時期によってはヒレの先端が鮮やかなオレンジ色、胴は青とオレンジの縞々で綺麗な魚です。
メスはオスに比べて地味な感じがします。
一方のオスは大きくなるにつれ、顔がちょっとグロテスクになる傾向にあります。オスメス共に人間にもすぐ慣れ、飼っていると3日くらいで餌をねだるように集まってきます。
大きくなると10cmを超えるみたいですが、現在のところ大きくて7cm位のサイズまでしか見つけられていません。
キッシンググラミー同様、触手らしきものを振り回し、オス同士キスをしながらケンカしています。
もう少し仲良くして欲しいものです。
[Trichogaster lalius]
こちらはドワーフグラミーです。「Colisa lalia」という学名から変更されたらしいです。
南アジアのパキスタン、バングラディッシュにいて、上のバンディッドグラミーより生息範囲は狭く、いつものガサガサポイントでもあまり見かけない貴重なグラミーです。
捕まえたサイズは5cmくらいまでのサイズが多く、体色はオレンジの縦シマが強く鮮やかな色をしています。
バンデッドグラミーの様に群れで泳いでいる印象はなく、ほとんど単体でしか捕まえたことがありません。
インドで捕まえられる魚は銀色、茶色など大体地味な色をしているのですが、配色豊かなこの魚だけは捕まえたら持って帰りたくなる美魚です。
グラミー界では原種と言われているみたいですね。貴重な魚に出会えて、ストレスばかりのインド生活でもたまには良いことあります(笑)
今のところは2種類のグラミーしか捕まえられていませんが、インドには他の種類かいるみたいなので、方々の怪しい場所で網を振り回してみます。
[Badis badis]
東南アジアや南アジアに生息している魚で別名カメレオンフォッシュと呼ばれているバディスバディスです。
普段は白っぽく薄茶の縦縞なのですが、この魚は興奮すると体色が濃くなり、綺麗な縞模様になります。
まるで水槽内を張り込みやパトロールでもしているかのようにゆっくりと泳ぎ、エサを探します。
餌は生きたものしか食べません。小さいタニシを選んで持ってきてあげるのですが、タニシを見つけると、体色を濃くしながら、ゆっくり近づきます。タニシを観察しながら餌かどうかを確認し、餌だとわかると弾丸のような速さで飛びつきます。捕食の瞬間が面白くて水槽をずっと眺めてられます。
以前はごく稀に見つかっていたレア魚でしたが、近年の冬場のガサガサでは数が取れています。
何匹か水槽で飼う為に連れて帰ったのですが、エサの調達が大変。しかもタニシのサイズがお好みに合わないと食べてくれません。なかなかわがままな魚です。
別の水槽でタニシを養殖して生まれた小さいのをせっせとあげていましたがタニシの養殖が間に合いません。だんだんと魚達が痩せていってしまったので、仕方なく元の場所に戻しました。日本の様に活き餌が簡単に手に入らないインドでの飼育はなかなか大変です。
隣のエビ専用水槽のエビ達にすごく興味を持った様で、ガラス越しに優雅に泳ぐエビたちをいつも凝視していました。好奇心旺盛な魚でもあります。
[Chela cachius]
有名なダニオの仲間のネオンブルーハチェットバルブかと思いますが、この魚は東南アジア、南アジアで生息しているようです。
お尻の辺りが青っぽく光って見えたりするのでネオンっぽいと色々調べましたが、インドには何種類かのハチェットバルブがいるみたいです。詳細はまだ良くわかっていません。
同じ水系で過去2回しか見掛けた事がない、貴重な魚です。
デリー周辺の河川は水の状況がすぐに変わってしまいます。その変化に魚達はすぐに移動してしまいます。一週間後に同じ魚を狙って行ったとしても同じ場所で全く違う状況になってしまいます。その時に捕まえておかないと後悔することになります。
この魚も観察してみたくて水槽で飼っていましたが、比較的穏やかな性格の魚で、他の魚たちと仲良くやってくれています。
[Esomus danrica]
この魚はインディアンフライングバーブです。グラミーとは違い、口元から臀鰭くらいまである長いヒゲが臀鰭まで伸びている珍しい容姿の魚です。
東南アジアやネパールやパキスタン、海を渡ったスリランカにもいるらしく、広範囲に生息している様です。頻繁にジャンプするからフライングという名前がついたと言われていますが、飼っているとそれほどジャンプをする気配もなく、落ち着いた魚です。
フィールドの水面を見ているとチョボチョボしている波紋があればこの魚の可能性があります。
エサもないところで一体何をやっているかは分かりませんが…
あまりよくわからない写真ですが、上から見るとかっこいい形の胸鰭をしています。淡水のトビウオの様です。水質の変化にも強く、比較的飼いやすい魚だと思います。
ガサガサで獲れるのは稀ですが、下記の様な魚達もニューデリー近郊の河川に生息しています。
[淡水ハゼ]
このハゼと思われる魚も他の魚と同じところで捕まえました。淡水ハゼと思うのですが、名前がよくわかりません。
腹鰭もちゃんとハゼのように吸盤型になっています。
[Lepidocephalichthys guntea]
グンティアローチというらしいドジョウも他の魚達と同じ水系で捕まえました。今までに2〜3回しか捕まえられていません。南アジアと東南アジアにいるグンティアローチはこの場所ではまあまあ希少です。
インドにいるいろんな写真を見ても同じような模様のドジョウはいなかったのですが、インドの魚博士に聞いたら1発で答えが出てきました。凄いですねー。インドにも博士クラスの人がおりました。
この魚、ごま塩みたいな模様に愛嬌のある可愛い顔をしています。
釣り部の会長の家では今も元気にゴソゴソしています。
次回捕まえたらうちの水槽の清掃係に持って帰ろうと思っています。
[Amblyppharyngodon mola]
モラカープレットと呼ばれているこの魚は今まで1回しか捕まえていませんが、ほとんど見掛けないので全くの不明な魚です。
ネット調べによればアフガニスタンからミャンマーまで生息は幅広く、20cmくらいまで大きくなる魚だそうです。ただ、成魚サイズも見た事もなければ、一度のみの採取で現在まで至ります。
市場では何度か見たことがある魚で、食用にもされているようです。
レストランで素揚げの小魚を出されたりしますが、もしかしたらこの魚だったのかもしれません。
前編・後編にて紹介した魚達は広大なインドでは極々一部です。まだまだたくさんの面白い魚が生息している筈です。今後のガサガサにとてつもないワクワクを感じます。
これから冬になってくるのでガサの頻度が増えていくと思います。またの機会にさらに珍しい生き物たちを紹介できるよう、これからもガサ網を振り回します。