性別や時期によって様相を変える魚がいる。
因みにこのブログのタイトルである“ブレコ”とは、繁殖期にだけ現れる婚姻色を意味する“ブリーディングカラー”を略した造語だ。
銀毛(スモルト)
サケやマスの仲間が川から海へ降る際に、銀色に変化することを銀毛(スモルト)と呼ぶ。
限られた期間に華やかな色合いに変化する婚姻色に対し、銀毛した魚の色合いは特徴が乏しいため僕らのような外見ばかりを気にする怪魚ハンターからは婚姻色の方が好まれる。
怪魚ハンターは釣るのが難しそうな魚が大好物
今回の記事の主人公は、オショロコマというイワナの仲間の銀毛個体だ。
一見ただの銀色の魚なのだが、これを狙って釣ろうとすると難しそうなのだ。
先に申しておくが、かなりマニアックな世界だ。共感や同情なんて求めずに好き勝手書かせていただこうではないか。
アイツ目標を失いかけてるなーとか言わずに、読み進めていただければ幸いだ。
北海道に生息するオショロコマとミヤベイワナ
オショロコマは北海道に生息するイワナの仲間だ。以前、ブレコで紹介したこの写真の魚はミヤベイワナであり、オショロコマとは亜種の関係にあたる。
因みに、ロシアなどでサザンドリーバーデントラウトと呼ばれる魚とオショロコマは同じ魚とされている。
ドリーバーデンとオショロコマの違い
ドリーバーデントラウトは、アメマスのように川と海を行き来する多回産卵魚であり、アメマスのように大きく成長する。
一方で、オショロコマは大きくても30cm前後と小ぶりで、一生を川で過ごすものが殆どだ。
大雑把にまとめると、アメマスがドリーバーデン、エゾイワナがオショロコマといったところだろうか。
怪魚ハンターが目標を見つけた瞬間
ある日、ふと目標を思いついた。北海道のオショロコマがロシアのドリーバーデンと同じなら、きっと海に降るオショロコマもいるんじゃないか。
銀毛したオショロコマを釣ってみたい!思い立ったが吉日。情報収集を念入りにしてから北海道へ向かった。
銀毛したニッコウイワナ
以前、新潟県の小さな川で銀毛したイワナが立て続けに釣れたことがあった。
当時は、今のような価値観をもっておらず、大きなイワナが釣れて満足としか思っていなかったのだが、今となっては僕好みのイワナだ。
そんな経験をもとに、海と山が近い地域を選んで銀毛したオショロコマを狙って実釣してみることにした。
波打ち際でオショロコマを釣る
目標を達成するのに苦労することもあれば、呆気なく釣れてしまうこともある。
海からわずか数十mの地点から釣りを始めてみると、なんと1匹目にして色味の薄いオショロコマが掛かってきた。
明らかに、今まで釣ってきたオショロコマよりも控えめな色合いで、各ヒレに透明感が感じられるが、まさか1匹目から釣れるとは思っていなかった。
とは言え、これが銀毛個体なのか見当も付かず、取り敢えず水槽でキープして2匹目を狙ってみる。
何尾釣っても、色付きオショロコマばかり
北海道のオショロコマの釣れっぷりはとにかく凄い。手付かずの渓流はこんなにも魚が良く釣れるのかと実感するには打ってつけだ。
この川も例外なく、オショロコマが入れ掛かりで釣れてくる訳だが、1匹目のような薄い色のオショロコマはあれっきり釣れなかった。
2色のオショロコマを並べてみる
水槽に2匹のオショロコマを入れてみると、雰囲気の違いが良く分かる。
向かって右側の銀毛オショロコマと思わされる個体は、全体的に銀色で朱点が目立たず、ヒレに透明感が感じられる。どっちが綺麗かと言われれば銀毛していない方が鮮やかなのだが、珍しい方に価値観が向いてしまうのはきっと僕だけではないはずだ。
2匹目の銀毛オショロコマを釣り狙う
撮影がひと段落したところで、数十m川を上って、次のポイントで竿を出してみると、1投目からオショロコマが入れ掛かりとなる。
幾匹か綺麗なオショロコマを同じ淵から釣り上げていくと、ひと際ギラギラと光る魚が掛かってきた。
すぐに銀毛した何かだと確信して、釣り上げるとオショロコマだ。それも1匹目よりも銀毛が進んでいる。
ニッチな遊びだと自覚している
こうして文章に起こしていくと、マニアックな魚を狙っていたんだなと自覚するが…もしかしたらブレコ読者の中には共感していただける方もいるのではなかろうか。
2尾の銀毛オショロコマを手にした後は、オショロコマとしては大型の尺越えや、珍しい背曲がりオショロコマなど色んな個性をもったオショロコマが掛かってきてくれた。
今回釣れてくれた2匹のオショロコマが海を行き来しているのかどうか分からないけれど、色んなことを想像させてくれるとても面白い川とオショロコマ達であった。