小さな小舟、釣り具と網。そして体力と相棒。
これだけのものがあれば、色んな生き物を捕まえることができる。
発信器を取り付ける生き物を生け捕りにする
バイオロギングの為のフィールドワークは、学生の頃からずっと続けている僕のライフワークだ。
これまでに、“NHK・ダーウィンが来た“でビワコオオナマズを釣ったり、”テレビ東京・緊急SOS池の水全部抜く大作戦“でアカメを釣ったり、幻のクニマスや150kgを超えるメコンオオナマズだって生け捕りにしてきた。
“弱らせず、状態良く、生け捕りにする” 言葉で書くのは簡単だが、実際にやってみると知識と経験がものをいう。
微笑みの国“タイ王国”で生物調査
舞台は、タイ国西部を流れる全長140kmのメークロン川。
『戦場にかける橋(1957年公開,第30回アカデミー賞作品賞)』という映画で有名なクウェー川鉄橋が架かる川と言えば、ピンとくる方もいるかもしれない。
映画と調査は無関係だが、そんなメークロン川にどんな魚が棲んでいるのか捕まえて把握しようというのが目標だ。
※DOF (Department of Fisheries タイ水産局)の許可を取得しての調査
ドリアンの旬を迎えたタイ王国
調査を行った7月と言えば、ドリアンの旬真っ盛りだ。
スワンナブーム空港から行きつけの果物屋へ直行し、まずはよく熟れたドリアンを堪能した。
クリーミーでまろやかで、甘くて濃厚で最高に旨い。二度、言わせてもらう。旬のドリアンはマジで旨い。
良い調査にするには、拠点作りが大事
半年前、下見に訪れた際にメークロン川の川辺に建設中のバンガローと交渉し、特別に宿泊させてもらえる手筈になっていた。
新品未使用のバンガローから徒歩30歩で調査地。浮き桟橋と手漕ぎボートまで用意され、この上ない拠点だ。
最高の相棒
ここで僕の相棒、ゲンツを紹介しておきたい。
彼は、メークロン川に生息する淡水エイの行動生態を研究している。
好きな物は筋肉。趣味は筋トレ。主食はプロテイン。
そうそう、今回の採集では淡水エイの生け捕りも重要な仕事の1つだ。
※現在、無許可でのヒマンチュラチャオプラヤの捕獲は禁止されている。
小さなオニテナガエビ
浮き桟橋からミミズを餌に夜釣りを試みると、グングンっと魚の引きと違う感触が竿に伝わってきた。
釣り上げてみると、小さなオニテナガエビだ!
東南アジアのシーフードレストランや釣り堀でお馴染みのこのエビ、実は天然物を狙って釣ることもできる。
今回はオニテナガエビにも発信器を付ける予定だが、残念ながら大きさが足りない。
そこで、そのまま活き餌として川へブッコんだ。
凶悪ナマズの子供
ブッコミ仕掛けの鈴がなり、タイミングを合わせて竿を上げると、白と黒のコントラストが美しいナマズが上がってきた!
日本のアクアリウム界では、ホワイトテールミスタスという呼び名で販売されているが、何でも南米のジャウー並みに凶暴凶悪な性格の持ち主だとか。
メークロン川では、数日に1匹くらいのペースで釣れてくる魚だ。
淡水フグにヒレを食われたクララ
ウトウトとうたた寝をしながらブッコミ釣りを続け、朝までに釣れたのはクララやイエローテールミスタス、アポゴンといったナマズの仲間を始め、ナイフフィッシュの仲間やスパイニーイール、コイの仲間など沢山釣ることができた。
川に潜るゲンツ
まるで川の中で用を足しているように見える写真だが、実際は受信機を浮き桟橋に設置しているシーンだ。
このように、日中は発信器の信号を得るために必要な受信機のメンテナンスや、地元住民や漁業者への挨拶周りなど細かなスケジュールで動きまわる。
供試魚を確保することも仕事だが、その土地に住む人たちの理解と協力を得ることの方がもっと大切な仕事だ。
因みに、夜の採集は僕とゲンツの趣味の時間といっても過言ではないかもしれない。
メインはあくまでも日中のフィールドワークだ。
日が暮れたら生き物採集
日中の仕事を終えたら、釣り具を整え小さな手漕ぎボートで川に出る。
異国の川でエビやミミズを餌にすると、実に色んな魚が掛かってくるから面白い。
発信器を付ける対象の淡水エイが釣れる度に、ゲンツと2人で歓喜し、ただちに発信器を取り付け放流する。
睡魔に襲われれば、交代で仮眠を船上で取る。腹が減ったらポテチを食べる。朝になったら、拠点に戻りその日の予定をこなす。
新品未使用のバンガローで休む暇なんて無く、24時間耐久生活をゲンツと2人で2週間過ごせば、数十種類もの生き物たちと出会えたといっても誰も驚かないことだろう。
メークロン川でガサガサ採集
釣りだけでなく、網を使ったガサガサも試みると淡水ダツやサヨリ、ヨウジウオ、グラミー、そしてタガメまで採集することができた。
上流から流れてくる巨大なホテイアオイの塊に、色んな生き物がついているのが印象的だった。
念願のムカシゴイ(タイガーバルブ)を釣獲
淡水エイ2種類の釣獲と同じように僕が感動したのが、ずっと釣って見たかったタイガーバルブというムカシゴイの釣獲だ。
最大で150cmを超える大型のコイで、ワシントン条約付属書Ⅰに記載される程のレア魚だ。
無事に淡水エイを生け捕りにし発信器からの情報を取得でき、ご褒美のようなタイガーバルブとの出会いもあり、肉体的にはかなり過酷な調査であったが最高な調査となった。
バンコクの夜の過ごし方
過酷だった仕事を終えバンコクで打ち上げをする訳だが、釣り好きな僕たちが向かう場所と言えば、ブンサムランの他ないだろう。
メコンオオナマズ達に癒され、微笑みの国を後にした。
フィールダー村上氏のブンサムランの釣行記はコチラ!