年間3000㎜程の雨が降り、熱帯雨林が生茂る奄美大島。その雨は多くの生物にも恩恵を与え、素晴らしい生態系を作りあげている。カエルの世界へようこそVol.1でご紹介した、両生類の水への依存性の通り、日本のカエルの半数以上が、奄美大島以南の高温多湿の島々に生息しています。今回はその奄美大島に生息する、日本一美しいと言われるアマミイシカワガエルを中心にご紹介したいと思う。
雨水は亜熱帯雨林を潤し、マングローブ林を通り、海へと流れていく。
アジアからアフリカの亜熱帯林や、マングローブ林でみられるマメ科の植物マダモ。世界最大の豆で、ジャックと豆の木のモデルになったとか。
奄美大島のカエルたち
奄美大島には9種のカエルが生息しているが、下記にいくつかの種をご紹介します。
アマミハナサキガエル
雨の日や、渓流沿いの林道で見掛ける茶色のカエル。緑色が強い個体も見掛け、体色はバリエーションに富む。手足が非常に長くジャンプ力にたけており、繁殖期は秋から春にかけて長期間。沖縄本島のハナサキガエル、先島諸島のオオガタハナサキガエル、コガタハナサキガエルの近似種で、鹿児島県指定の天然記念物となる。
オットンガエル
国内在来種としては大型な種。沖縄本島のホルストガエルに似る。通常、カエルの前足の指は4本であるが、オットンガエルは5本。その親指には鋭い骨が備わっている。オットンガエルも鹿児島県指定の天然記念物となる。産卵期は5月~10月。
アマミアオガエル
比較的樹上性が強い種。産卵期は12月~7月。東京都の八丈島にも移入され定着している。
ハロウエルアマガエル
ニホンアマガエルと非常に似る。奄美大島から沖縄諸島まで広範囲に分布。平地の池や田畑周辺で観られる。産卵期は4月から7月。
アマミイシカワガエルは日本一美しいカエル
他のカエルと同様に、環境変化の影響や、増えすぎたハブの駆除の為に放されたマングースの食害により数を減らし、現在は鹿児島県指定の天然記念物、環境省レッドリスト絶滅危惧IB類 (EN)に指定されている。
沖縄のイシカワガエルと、かつては同種とされていたが、2011年本種は奄美大島の固有種として新種とされた。山地性で山奥の渓流沿いや、雨の日の林道などに姿を現します。日本のカエルの中では比較的大型種で、7cm~14㎝程とされ、繁殖期は4月から6月頃に渓流沿いに集まり産卵を行います。
沖縄のイシカワガエルの外観の違いは体色が明るく、頭部は小さい。また皮膚に観られる突起の密度などにも相違がみられます。イシカワガエル・アマミイシカワガエル双方、緑色の体色に金色の斑紋が散りばめられています。これが日本一美しいと言われる所以になります。
吸盤が発達しており、樹上や岩に登ることが可能で、後ろ足には水掻きも発達しているため、渓流なども上手に泳ぐことができます。産卵期は雄の鳴き声に寄せられた雌が集まり、そのアマミイシカワガエル捕食するために、多くの蛇たちも集まります。その光景は非常に興味深く圧巻です。
奄美大島の爬虫類たち
さて、最後にカエル達の天敵である、奄美大島に生息する蛇の一部をご紹介しましょう。
アカマタ無毒だが気性が荒く攻撃的。ハブさえ襲って食べると言う。
ハブ
ネズミやアマミノクロウサギ等を主食としており、大きな個体は2mを越えてくると言う。猛毒を有しており、フィールドワークの際は最も注意が必要な蛇になる。
ヒメハブ
渓流周辺に多く生息している。ハブ程の毒性はない様だが、同じく注意が必要な蛇になります。カエルを主食とする。
ヒャン
コブラ科の蛇。しかしながら、非常に大人しい性格。一応神経毒を有しているので触らないに越したことはない。
アマミイシカワガエルの美しい容姿を観て、鳴き声をお聞きになりたい方は、是非、奄美大島へ足を運んでみてください。まだまだ多くの両性爬虫類達が、皆様のお越しをお待ちしてます。
奄美大島固有種・有尾類アマミシリケンイモリ