今から遡る事3億6000万年年前のデボン紀、最初の両生類と言われるイクチオステガが魚類から進化し、水中から陸上に上がったという説がある。気の遠くなるような長い年月を経て、進化を遂げた両生類たち。現在も繫栄しサンショウウオやイモリを含む、有尾類・無足類そしてカエルで構成される無尾類の3グループで構成され、全世界に分布そして繁栄している。
そんな両生類の一角無尾類カエルは、世界に約5400種以上。日本に外来種を含めると48種確認されており、身近な住宅街・田畑で観察できるものから離島にのみ生息している種。そして人里離れた山奥・ジャングルの奥地でのみ会うことができる、珍しい種まで様々である。
カエルを少しだけ知ろう
カエル類は水への強い依存性を持つ。何故なら彼らは、水中もしくは水場の上の樹葉で産卵を行うからである。また、呼吸の大半を皮膚呼吸に頼っているカエルは、皮膚を湿らすことにより皮膚呼吸を潤滑に行う。今回はそんなカエル達の体の各部について少々ご紹介します。
カエルにはまぶたがありません。その代わりに瞬膜で目を覆い眼球を守ります。写真の様に変わった瞬膜を持つ種も存在します。目の後方にある丸い円が耳腺(じせん)、所謂、鼓膜となります。またカエルの皮膚は鱗で覆われることがなく、地上を歩き回ったり跳ねたりする際に傷つきます。その為、彼らは皮膚を湿らせ、非常に微弱な毒素を皮膚に纏うことにより、細菌などを殺菌する力を持っています。口内には歯はありますが捕食した獲物を噛み砕くと言うより、獲物を逃がさないようにすることに役立っています。
四肢は生活環境が大きく影響し、種によって違いがあります。樹上で生活しているカエルは指先の吸盤が発達していますが、一方ヒキガエル類等地上生の強い種類は、歩くのに適した尖った指先。水中で生活するカエルは、指先の間の水掻きが発達しています。
カエルが鳴くために、鳴嚢(めいのう)という器官が役立ちます。基本的にオスが発達しており、産卵期にメスに求愛を行う際に大活躍します。種により鳴き声は様々で、鳴き声によって種類を特定することも可能です。因みに根性やらド根性と鳴く種は、残念ながら存在しません。
世界のカエル
マダラヤドクガエル(Dendrodates auratus)
上記したようにカエルは皮膚に微弱な毒をもつが、このヤドクガエルは捕食者から身を守るための毒を蓄えます。中には人間を死に至らしめる程の毒性を持っているヤドクガエルの仲間もいますが、その毒は蟻やダニなどの餌を食べることによって体内に強力な毒が蓄積されます。
アラハダヤドクガエル(Dendrodates granuliferus)
非常に似た種で有名なイチゴヤドクガエルがいるが本種は別種である。コスタリカの一部のエリアにのみ生息する。
エメラルドグラスフロッグ(Espadrana prosoblepon)
半透明の皮膚を持つグラスフロッグの仲間。特に腹部の透明度が強く内臓まで透けて見える種もいる。
アカメアマガエル
熱帯雨林の代表格のカエル。非常に有名でコスタリカでは切手などにもなっている。
キスジフキヤガエル(Phyllobates vittatus)
ヤドクガエル科の一種。
日本に生息するカエル
オキナワアオガエル(Rhacophorus viridis)
沖縄本島に生息するアオガエルの一種。産卵は12月頃から始まる。
ミヤコヒキガエル(Bufo gargarizans miyakonis)
国内在来種のヒキガエル4種のうちの1種。イメージの悪いヒキガエルの中で群を抜いた可愛さを持つ。
宮古島諸島に生息する。
ハロウェルアマガエル(Hyla hallowellii)
本州に分布するニホンアマガエルに似る樹上性のカエル。沖縄諸島一部と奄美大島に生息する。
シロアゴガエル(Polypedates leucomystax)
アジアに広く生息するカエル。日本では沖縄諸島、石垣島などで観ることができる。
特定外来種に指定されている。
アマミイシカワガエル(Odorrana splendida)
国内在来種で最も美しいと言われるカエル。奄美大島に生息する。
さて、下記では本州でもタイミングがあえば逢うことができる美しい森のカエルと美しい声で鳴く渓流のカエル2種のカエルを紹介していく。
今回のフィールドは山口県・島根県県境近郊の里山。ちょっとした田舎だ。
森の妖精・モリアオガエル
本州全域の山奥に生息している、とても美しいカエル。伊豆大島には、人為的に移入されて個体数が多い。大きさはメスが特に大きく、80㎜に及ぶ個体も観られる。アオガエルの仲間は国内に4種いるが、その中でも最大の大きさを誇る。樹上性が強く吸盤がとても発達しており、産卵行為は、水場に突き出た樹上に泡状の産卵巣を作り、包接を行う。卵からオタマジャクシが生まれると、産卵巣から水場に落ち成体へと成長を始める。
普段は山奥で暮らし、我々が目にする機会も少ないモリアオガエル達だが、産卵期を迎える春、人里近郊の水場にも集まる。彼らの産卵巣も、水辺に行くと観ることができる。
一匹の大型なメスに、数匹の小柄なオスが何匹もしがみつくという、独特の包接を行う。その光景は、男の悲哀を感じざるを得ない。まさに恋の争奪戦だ。
一晩中続いたのであろう産卵行為。翌日には眠そうなオスが取り残されていた。
清流の美声カジカガエル
茶色いカエルは可愛くないと敬遠されがち。しかし、侮ることなかれ、このカジカガエルは飛び切りの美声を奏でる。江戸時代には多くの人が『河鹿籠』なる飼育箱に入れ、その美声を楽しんだと言われている。河鹿籠の河鹿が示すように、鹿の鳴き声に似た鳴き声で雄が雌を誘う。
生息域は本州・四国・九州の渓流及びその近郊に生息する。大きさは大型のメスで80mm前後。
日中は清流の石の下などに姿を隠し寝ていることが多い。静かに石をめくってみると…..
周囲が暗くなると彼らはいっせいに姿をみせ始める。
川の流れの中を泳いでは石に辿り着きメスを呼ぶために鳴き始める。なんとも涼しげで風流な鳴き声。
オスの美声に誘われたのか大きなメスも姿をみせてくれた。
容姿だけではなく、美声で異性のハートを射止めることもできるのだね。そんな大切な事を、カジカガエルに教わった暗闇の渓流だった。あいにく僕は飛び切りの音痴である…ということはさておき、清流の音とカジカガエルの美声を聴きながら、益々風流な夜が更けていく。
次回の「カエルの世界へようこそ」は、奄美大島の山奥に住むカエル達をお届けします。カエルが好きな人も嫌いな人もお楽しみに!