2022年夏。
世界情勢はロシアのウクライナ侵攻、コロナウイルスの蔓延、世界経済の低迷と混沌を極めており、先が見通せない不安な世の中となってしまった。
人間というのは自己都合の塊で、こんな時に限ってこそ、縁起物や神様へすがったりするもの。勿論、恥ずかしながら私もその一人で『幸せの青い鳥』『平和の象徴』この2つのキーワードを兼ね備える強力な縁起物を拝みに、神奈川県大磯市の照ケ崎海岸へ足を運ぶこととなる。
日本の鳩
世界には約300種。日本には6種（亜種含め13種）の鳩が生息している。寿命は長くて20年ほど、穀物や虫などを食べる雑食性で、一夫一妻で数羽の群れで行動する。一見温和で平和に見える鳩だが、実はそうでもないようで、縄張り意識が非常に強く、同種でも彼らの縄張りに入ると攻撃的に排除しようとする。
彼らが平和の象徴とされたのは『ノアの箱舟』の物語に起因している様だが、実際は人間と同じ様にテリトリーをめぐって争う訳で…いささか残念である。
皆さんがよく見かける鳩は下記の2種。
ドバト（Columba livia）
最も我々が見掛けるのは、このドバト。多くの人がハトはこの一種しか認知していないのではなかろうか。生息域が都心や住宅地など我々人間と同じで、繁殖力も非常に強い。発情期にはなんと1日10回以上も交尾を行うお盛んぶりである。
キジバト（Streptopelia orientalis）
ドバトに比べると若干、郊外の山や里山に生息しているイメージだが、最近では都心部でも見掛けることもある。『ポーポーポポー』とリズミカルに繰り返し鳴くのが、このキジバトである。
ズアカアオバト（Treron formosae）
そしてこちらは少しだけ珍しいハト。今回の主役アオバトに非常に似る。生息地は屋久島以南の南西諸島。フィリピンや台湾にも生息している。
アオバトに会いに行こう
さて、アオバトに逢うなら此処。大磯港脇の照ヶ崎海岸だ。5月～10月頃（ハイシーズン7月～8月）にかけて海水を飲みにこの海岸にある岩場をめがけて飛来する。ハイシーズンの多い日では1000羽を超えて飛来することもあるが、飛来が多い時間帯は夜明けから午前中にかけてと夕方の時間。
彼等が何故此処に集まるかは生息地の丹沢山地からの距離、満潮でも姿が見える岩場があるなどの理由が関係している様だが、なぜ海水を飲み来るか？は、産卵期の栄養を補給するためナトリウムを摂取する為ではなかろうかと言われている。しかし、明確にはなっていないようだ。何れにしても照ヶ崎海岸は、日本で最もアオバトが集まる海岸として神奈川県指定の天然記念物に指定されている。
早朝6時。カメラを担いで海岸沿へと進む。早速、凄い数のアオバトが次から次へとやってくる。
それを迎えるのは私も含めたカメラ＆野鳥大好きの中年男性達。
アオバトの飛来は止むことなく。1時間程の観察で優に1000羽は飛んできていたのでははなかろうか。
岩場に降りたっては海水を飲み、そして、再び飛び立つ。
波にうたれながらも命がけの海水飲み会は続く。
さて、お気付きの方も多いでしょうが、アオバトは青くない。どこからどう見ても緑色だ。
日本は昔から緑色を青と表現することが多いようで、青信号・青りんごと同様にアオバトは緑色です。アオバトの英語表記もwhite-bellied green pigeon。白い腹の緑色の鳩だ。
平和の象徴で幸せの青い鳥は、テリトリーを巡って争う緑色の鳩へと姿を変え、富士山の脇の丹沢山地へと飛び去って行った。
仕方がないので、幸せの黄色いハンカチでも通販で探すことにします…
さて、奥さんと子供を置いてアオバト観察に出掛けた際には、車で5分程の老舗の豆屋さん『豆よし』でしっかりお土産の豆を買って帰ろう。世界平和と同じように家庭の平和も大切。
勿論、そのこころは鳩に豆鉄砲….
今夜は豆を頬張りながら嫁と美しいアオバトの写真でも眺めることにしましょう。
