タイドプールには小さな魚や甲殻類、ウニ類、ヒトデ類、ナマコ類など様々ないきものが観察できる、生き物好きにとっては堪らないお祭り会場です。
網を使った採集はもちろん、延べ竿で釣りをしても様々な小魚を釣ることができます。
沖縄の魚といえば!こんなちいさなオヤビッチャも。
そもそもウミウシって?
漢字で書くと"海牛"頭にある触角が牛の角のように見えることが由来となっています。
英語ではsea slug(海のナメクジ)と呼ばれ、分類的にはこちらの方が的確な表現です。
そんなウミウシをものすごくざっくり説明すると"軟体動物の仲間"であり、"貝殻を捨てた巻貝の仲間"ではありますが、貝が完全になくなったものもいれば、小さく縮小したもの、体の中に埋没したものもいて、種によって姿や食性も千差万別。
一言で"ウミウシ"といっても、分類も生態も幅が広すぎて一晩掛けても全てを説明することは到底不可能な奥が深い生き物なのです。
タイドプールでも観察できる!
赤、青、緑、黄色など、ビビットな色で美しいことから"海の宝石"と呼ばれ、最近では写真集が発売されるなどじわじわと認知度を高めているウミウシ。
写真の殆どはダイビングで撮影されたもので、海に潜らないと観察できないのではと思われがちですが、タイドプールのような浅い海に生息しているウミウシも存在します。
タイドプール採集に必要なもの、注意点。
タイドプールでの採集に関して、最も重要なのはタイドグラフを読むことです。
潮の満ち引きの差が大きな中潮や大潮で、水位が低くなる干潮のタイミングをチェックし、磯へ向かいます。
干潮の前後1、2時間ほどが勝負です!
足元が不安定でよく滑るので、マリンシューズのような滑りにくい靴、小さな網、長いピンセット、観察用に白いバッド、夜間ならヘッドライトも用意します。
水中に沈められるカメラがあれば更にウミウシ観察を楽しめます。
妖精のようなウミウシ発見!
今回は潮の関係で夜間に採集を行いました。
ヘッドライトで海面を照らしながらウミウシがいないかよく見ていくと…なんとも美しいウミウシ、"ミスガイ"に出会いました!
ミスガイは貝殻を残しているウミウシの仲間です。
背負っている貝殻が"御簾"のような柄であることが名前の由来となっています。
御簾とは、平安時代に使われていた装飾の美しいスダレのことです。
普段は砂の中に潜っていますが、夜間で砂から出てきていたのか発見しやすい海藻の上にちょこんと乗っかっていました。
ピンクのヒラヒラした体に水色の縁取り、なんとも可愛らしいカラーリング!
しかも写真をよく見ると小さな目が付いていて、なんともユーモラスで美しいウミウシ、ミスガイ。
あまりの可愛さに夢中になってしまいました。
貝を捨てたウミウシ
ミスガイは貝殻を残したウミウシの仲間ですが、先にウミウシは"貝殻を捨てた巻貝の仲間"であると説明しました。
なぜウミウシが貝殻を捨てたのか…そもそも貝殻の役割は固い殻で捕食者から軟体部分を守るためです。
しかしこの貝殻を持つということにもデメリットがあります。
重い貝殻を背負うため移動に時間がかかること、貝殻を生成するために炭酸カルシウムをたくさん摂取しないといけないこと、大変な思いをして貝殻を維持していても、歯の鋭い魚などには食べられてしまうなど…
とにかくコスパが悪い!ならば貝を捨てて毒を持ったり、素早く移動できる方へシフトしよう、と進化したのがウミウシなのです。
他のウミウシ紹介
ミスガイを見つけ、その周りにも他のウミウシがいないかよく探してみると、アメフラシの仲間やノトアリモウミウシなど他の種類のウミウシも観察することができました!
小さなアメフラシの仲間。沢山いました。
1匹だけ見つけたノトアリモウミウシ!紫色のフサフサが可愛いウミウシです。
一瞬ウミウシか!?と見間違えたオトメガサ。
これも体の中に貝が埋没している巻貝の仲間です。
ウミウシには毒がある!?毒の作り方
可愛らしいウミウシですが、派手な見た目の通り毒のあるものもいます。
ウミウシの毒は元々持っているものではなく、後発的に作り出された毒です。
一部のウミウシはクラゲなどを捕食していて、クラゲなどの刺胞(毒の入ったカプセル)を溜め込み、自分の毒としています。
これを"盗刺胞"といいます。
ウミウシの中には人命にかかわることもあるくらい有毒なものもいるので、種類がわからないものは素手では触らないようにしましょう。
魅力的なウミウシ達、ぜひ探してみてください!
ウミウシはとにかく種類が多く、日本では1000種類以上が確認されていて、世界的に見れば未発見なものも含めて5000種類以上になると言われています。
見た目も華やかで中毒性の高いウミウシの世界。
ぜひ海辺を訪れた際は探してみてください!
ウミウシ探しの様子はYouTubeでも公開しています。