ツシマヤマネコを探せ 『対馬の生き物たち』

ツシマヤマネコを探せ 『対馬の生き物たち』

魚類に留まらず両性爬虫類から昆虫まで探して国内外を旅する 嬉し恥ずかしの51歳。福岡県出身・おうし座。

対馬島は朝鮮半島との国境付近、玄界灘に浮かぶ606㎢の島。
大陸に近く自然が多く残るこの島は独特の生物相を有し、数多くの大陸系統の固有種が生息している。
我々のような生き物好きにとって『生きた化石』『希少種』『固有種』などのキーワードは心躍らせるものであり、対馬は生き物探し・採取を行うには非常に魅力的なフィールドとなる。

美しい海と森が多く残る島。

 

対馬の大自然ツシマヤマネコ標識ツシマヤマネコ看板ツシマヤマネコ注意喚起の標識これでもかという程を見掛ける。

 

 

対馬の生き物たち

これから対馬に生き物探しに出掛けようと言う猛者もそうでない方も是非参考にしていただきたい。

 

ツシマヒラタクワガタ(Dorcus titanus castanicolor

ツシマヒラタクワガタ雄ツシマヒラタクワガタ雄本土ヒラタクワガタの亜種で対馬の固有種。
大きさはヒラタクワガタの仲間で最大種とされ80㎜以上になる雄個体もいる。対馬には本土と同種とされるカブトムシ、ノコギリクワガタ、コクワガタそして幻のキンオニクワガタ等も生息する。

 

 

ツシマカブリモドキ(Damaster fruhstorferi

ツシマカブリモドキツシマカブリモドキトラップ日本では対馬にのみ生息するカブリモドキ類を唯一構成する種。土の中にプラスチックのカップを埋めカルピスの原液を入れて一晩放置した。16個のカップで唯一1匹を捕獲。

 

 

ヒメダイコクコガネ(Copris tripatitus

ヒメダイコクコガネ・糞虫ヒメダイコクコガネ・糞虫こちらも日本では対馬のみで生息している糞虫。想像していたよりも実際手に取ってみると、かなり小さく15㎜程。名前の通り公園の公衆便所(大)に夜間集まっていた。しかしながら、深夜の公衆トイレは独特の雰囲気が漂い少々おそろしい。トイレのドアは決してノックしないことをお勧めする。

 

 

ツシマジカ(C.pulchellus

対馬の鹿・ツシマジカ 本州に生息するニホンジカの亜種とされている。夜間にかなりの個体数が現れ、住宅地、道路を闊歩している。近年、外敵がいない対馬で個体数が増加し、農作物への被害など問題視されているという。

 

 

対州馬(Equus caballus

対州馬・日本固有の馬・タイシュウバ・タイシュウウマ こちらは野生の生き物ではないが、対馬を中心に飼育されている日本在来の小型の馬。

 

 

ツシママムシ(Gloydius tsushimaensis

対馬の蛇・ツシママムシ 対馬には3種の蛇が確認されている。アカマダラ、アオダイショウそしてこの固有種ツシママムシだ。強い毒を持ち攻撃性も強いと言われる。

 

 

ツシマアカガエル(Rana tsushimensis

対馬のカエル・ツシマアカガエル 対馬にのみ生息する4㎝以下の小さなアカガエルの亜種。

 

 

チョウセンヤマアカガエル(Rana dybowskii 

対馬のカエル・チョウセンヤマアカガエル
ツシマアカガエルと比較すると若干大型のアカガエル。日本では対馬のみに生息している。

 

 

対馬のニホンアマガエル

対馬のアマガエル現在はニホンアマガエルとされているが、大陸のアマガエル同様ニホンアマガエルと比較するとかなり大型である。大陸系統のアマガエルなのだろうか?一部の研究者にニホンアマガエルとは別種であると研究されているとか。

 

 

ツシマサンショウウオ(Hynobius tsuensis

対馬のサンショウウオ・ツシマサンショウウオ対馬のサンショウウオ・ツシマサンショウウオ対馬のサンショウウオ・ツシマサンショウウオ卵塊渓流などの流れがある綺麗な水場に生息する対馬の固有サンショウウオ。幼体であれば比較的簡単に観ることができる。卵塊と成体♂を観察できたのは4月。

 

上記、対馬に生息する固有種や珍しい生き物をご紹介させていただいた。しかし今回出会えなかったツシマテンとアカマダラ(蛇)また、それ以外の魅力的な生き物たちが対馬には沢山生息している。是非、探してみてほしい。

 

 

 

ツシマヤマネコを探せ

今回で3度目の対馬遠征。ツシマヒラタ♂の大型個体を主たる目的としていた。ヤマネコを観てみたい気持ちは強かったが、かなり難易度が高いと半分諦めていた。
初日夜に68㎜のヒラタクワガタを捕獲。その日の成果としては満足し、帰路につこうとした深夜。田圃のあぜ道に黒くて大きなものが落ちているのを運転席から見つけた。わざわざ車を停めたのはその黒い物体が超大型のヒラタクワガタに見えたからだ。

 

対馬の固有種ツシマヤマネコの糞

車を停め近づきライトをあててみると、その黒い物体は立派な糞であった。しかも、80㎜はゆうに超える大型。無性に腹が立ち『糞が!!』と糞に糞と吐き捨て立ち去ろうとするが、糞に集っていた糞虫に後ろ髪をひかれ、観察を始めることにした。

内容物を観ると野生動物。しかも哺乳類の糞であることは容易に判断できた。内容物には笹などの植物が含まれており、形状と大きさを考えると消去法で、ツシマジカとイノシシとツシマテン、そして農家のおじさんの糞の可能性は消えた。と言う事は、この糞はヤマネコの糞の可能性が高い!いつしか私の興味は糞虫から糞本体へと変わっていき、一人糞の観察会は夜更けまで続いた。

翌朝は、対馬散策最終日。甲虫採取の本番となる夜までの間は、この田圃周辺を隈なくツシマヤマネコを探すことにした。糞が新鮮であった為、まだこの周辺にいる可能性が高いと判断した訳だ。

午前中・午後と何度も何度もこの周辺を車で行ったり来たり。全く異常なしで時間だけが悪戯に過ぎ、夕方を迎えようとしていた。

 あぁ。やはり駄目だったか‥

 諦めかけたその時、田圃の上空をカラスが旋回し、時折地上の何かを襲おうとしているのが目に留まった。まさか!ゆっくりその場所に車を走らせる。

すると‥‥

対馬の固有種ツシマヤマネコ

いたぁぁぁぁっ!
ツシマヤマネコだ!!

カラスに気をとられているのかこちらにはまだ気づいていない。
震える手で何度もシャッターを切る。

 対馬の固有種ツシマヤマネコ

暫くするとヤマネコは私の方に目をやり、そして静かに田圃の稲の中へと消えていった。
その日の晩は甲虫探しをそっちのけで、ヤマネコの姿をもう一度拝もうと朝まで捜索を続けた。 
しかしながら、ヤマネコが再び姿を現すことはなかった。すっかりヤマネコの虜である。

  対馬の固有種ツシマヤマネコ看板

日本に生息するヤマネコは2種。

ツシマヤマネコとイリオモテヤマネコだ。
どうやら西表島へ行く日も遠くはなさそうだ。

 

 

1 / 4