日本のシジミ
日本には三種のシジミが生息している。市場に一番流通しており汽水域に生息するヤマトシジミ。琵琶湖の固有種セタシジミ。そして淡水域に生息するマシジミ。いずれの種も古くから日本の食卓を彩る馴染みの深い食材である。しかしながら現在では、環境の変化・乱獲・外来種の侵略等により在来のシジミたちは数を減らしている。
タイワンシジミ
一方、数を減らした在来種にとって代わり、日本の水辺で強くたくましく数を増やしているのが、外来種タイワンシジミである。元々中国・台湾原産のシジミ。食用の為に輸入されたシジミの中に混入し、稚貝が流れ出し排水などをつたい定着した様だ。同じく淡水域に生息するマシジミと交配を行うが、生まれるシジミはタイワンシジミとして入れ替わる。環境適応力も非常に強く、水質が悪い環境にも難なく生息できる。食味は非常に評判が悪く、味がない・生息域に伴い臭い、などと言われている。
捕獲
栃木県のとある水路。この場所は以前も来たことがあり、非常に綺麗な水が流れている。この場所のタイワンシジミであれば、安心して食べられるであろうと再び足を運んだ。
早速ウェーダーを着込み水路に入る。当然のこと、水路脇を散歩する人たちからは、好奇な目にさらされることになる。幾人かに『何か捕れましたか?』と尋ねられたが、『いや、シジミを探していて…』と答えると、少し距離をとられて『頑張ってください』と足早に立ち去られてしまう…。
カワシンジュガイだろうか?絶滅危惧種に指定されている。
ギバチ。ナマズ目ギギ科の魚。関東より北の方に生息している。
網で水路の土を掬い上げると、カワシンジュガイやギバチ等が網に入る。正直タイワンシジミが網に入るより数倍嬉しかったりする。
暫く水路をさかのぼりながら網を入れ続けると、遂にタイワンシジミが姿を現す。泥質の場所に全くいなかったタイワンシジミが、砂利質の川底に局所的に生息している。網で掬うと10~20匹が網に入ってくると言うシジミフィーバー状態。あっという間に数百のシジミを手に入れることに成功した。
嬉しさ反面、あまりの数に恐怖を感じながら、採れたシジミを持ちかえることにした。
タイワンシジミ料理
生息地の水が綺麗であった為、砂抜きは1日のみ、調理に取りかかる。
1.タイワンシジミ汁
味が非常に薄いと言われるタイワンシジミ。通常の2倍のタイワンシジミを投入しシジミ汁を作る。
そして完食。中々の薄いシジミ汁。貝の出汁も香りも乏しい。どうやらシジミの量を倍増して補えるようなものではなさそうだ。全ての貝の身も残さず頂いたが、元々乏しい旨味成分を僅かな出汁として放出した為か?味のないガムを食べている様だ。
2.台湾風シジミの醤油漬け
本場の台湾・中国では如何にこの味気ない食材を如何にして美味しく食べているのか?非常に興味深い。
生姜チューブ小さじ1・ニンニクチューブ小さじ1・唐辛子1本(種を抜き刻む)・醤油大さじ2・酢大さじ2・氷砂糖2欠片・きざみパクチーを混ぜる。
別途タイワンシジミ200gを水から沸騰しないように殻が開くまで煮る。殻が開いたら水気をとり上記のソースと混ぜ合わせ1晩冷蔵庫で寝かせる。
これは摩訶不思議。滅茶苦茶美味しい酒の肴。手をどろどろにしながら食べて欲しい一品。
まぁ貝の味は何処へ?といった感じではあるのだが….
3.四種のシジミ味比べ
今回の原稿のために在来三種のシジミも方々から取り寄せた。折角なので4種の味比べを行う。浜焼きで醤油などの調味料は使用しない。
【ヤマトシジミ】汽水域に生息しているためか多少の塩味を感じ美味しい。
【セタシジミ・マシジミ】小さいながら貝の旨味を感じる。
【タイワンシジミ】…..という結果であった。