今回の記事では、高級食材である“天然スッポン”を首都圏の住宅街で捕まえて食べてみようという企画だ。
スッポンという生き物は意外なほど身近な場所に棲んでいて、思いのほか簡単に捕まえられる食材なのだ。
高級食材“スッポン”について知ろう
日本人なら、スッポンという名前を聞いたことのない人はいないだろう。
ご存知の通り、スッポンとは柔らかい甲羅を持った爬虫類、つまりはカメの仲間だ。見た目から想像できないが、鍋にすると言葉に表現できないくらい旨い出汁が楽しめる。
余談になるが、この柔らかい甲羅は、アカミミガメやイシガメといった硬い甲羅に比べて軽く、発達した水かきと相まって、スッポンはとにかく泳ぎ上手で素早い。
因みに、スッポンの寿命は30年程度と言われているが、中には50年以上生きるものをいるようだ。
天然スッポンの値段
スッポンは、養殖場からの直売価格で概ね1kgあたり4000円程度で販売されている。因みに、天然のスッポンとなると1kgあたり1万円を超えることもあると聞く。豊洲市場でのクロマグロの平均価格が1kgあたり3000~5000円程度だから、いかにスッポンが高い食材か分かる。そんな高級食材が読者の皆さんが棲む街にも棲んでいるかもしれない。
スッポンを探しに行ってみよう
スッポンを釣るべく、郊外の閑静な住宅街を流れる川にやってきた。
両面がコンクリートで固められた、いわゆる都市型の河川だ。
早速、水面を覗き込んでみると、人から餌をもらい慣れたコイ達が水面に鼻を上げてこちらに寄ってくる。
川によっては、このコイの群れにスッポンも混じっていることがあるのだが、今回はスッポンの姿は見えなかった。
日暮れまでの1時間を使って、川沿いの遊歩道をゆっくり歩きながらスッポンが好みそうなポイントを探していく。
そう、スッポンは夜行性のため、夜釣りの方がオススメ。
冬は冬眠してしまうので、春から秋がシーズンとなることも覚えておこう。
流れ込みや堰がスッポン釣りの好ポイント
一見、変化に乏しいように見える都市型河川であっても、支流の流れ込みや堰などがあれば、絶好のポイントになる。
今回は、堰の下流部が周りよりも少し深くなっている場所を見つけたので、そこを釣り座とした。
スッポンを釣り上げるために必要な道具と餌
嗅覚の優れたスッポンは、サバやサンマといった青魚の臭いが大好きだ。
もちろん、カワムツやザリガニといったその場で採れる餌でも釣れるのだが、サンマの切り身の方が食いつきが早い。ミミズは他の魚から齧られやすいのでオススメできない。
スーパーで売られているサンマを三枚に卸し、写真のように18等分にして塩をまぶしておこう。
餌の仕込みが面倒な方は、釣り具店でサンマやサバの切り身が売られているので、針やオモリを購入する時についでに買っておこう。
スッポン釣りに使用する針は、10号前後のチヌ針などがオススメだ。
大きい針より小さな針の方が食い込み良好と覚えておこう。
釣り糸は、PEラインの6号前後をハリスに使う。オモリは小判型の中通しオモリが川底で転がりにくく、扱いやすい。
今回のような小規模な都市型河川では、釣り竿とリールは、ハッキリ言って必要ない。ペットボトルにPEラインを20mも巻いておけば、それだけでOK。無論、釣りの経験も不要だ。
もし、釣り竿を使って楽しみたい場合は、シーバスロッドやサビキ竿で充分だろう。
スッポンは魚のような強いアタリは期待できないので、釣り味を楽しむという意味では電気ウキを使ったウキ釣りがオススメだ。
スッポンが食いつくと、電気ウキがスウゥ~っと動き始める。これが最大の醍醐味だ。
因みに、竿やリールよりも、今回のようにコンクリートで固められた川ではタモ網の方が活躍することもお伝えしておこう。
釣具の他に、スッポン釣りに必要な道具は以下の通りだ。
・蓋ができるバケツ
・ハサミ
・ヘッドライト
・虫よけスプレー
・餌を冷やしておくクーラーボックス
・タモ網(無くても可)
スッポン釣りは簡単だ
針にサンマの切り身を付けたら、あとは川に放り込んで待つだけだ。
電気ウキを使う場合は、餌がしっかり川底に着底するようにウキ下を調整しよう。
今回のように川幅の狭いポイントならば、足元に仕掛けを垂らしておくだけでも、サンマの臭いを頼りにスッポンの方から近寄ってきてくれるはずだ。
この時、静かに待つことが重要だ。餌を投げ込んだら30m程離れて待つくらいのことをしても良いだろう。
スッポンは魚と違い、餌に食いついたらほぼ確実に飲み込んでくれるので、タイミングを見計らって合わせる必要は無い。
釣れたスッポンの取り込み方と外し方
30分ほど待ったら、一度仕掛けを上げにいってみよう。
ゆっくりと釣り糸を手繰り、重みがあれば何かが掛かっているはずだ。
スッポン以外には、ナマズやウナギ、コイやアカミミガメが外道として掛かってくる。
水面まで引き上げ、スッポンだったら網で掬いあげよう。
亀の仲間は水中よりも陸上の方が素早く、そして力強く逃走を図るので、釣り上げてからの方が要注意だ。
多くの場合、釣り針は喉や胃袋に掛かっているので、無理に外そうとするとスッポンが弱ったり死んでしまうので、針は外さずにハリスを切ってしまうのが得策だ。
ハリスを長めに残すことで、ハンドリングも簡単になる。
スッポンの持ち帰り方
スッポンは必ず活かした状態で持ち帰る必要があるので、蓋ができる大き目のバケツを用意しよう。
輸送時は水を入れる必要はない。とにかくスッポンに逃げられないようにだけ注意して家まで持ち帰ろう。
注意していても、写真のように気づけば逃げ出している。
スッポンの泥抜きについて
釣ってきたスッポンを美味しく食べるために、数日間泥抜きをしよう。
スッポンを数日飼う容器としては、衣装ケースがオススメだ。
甲羅が水に浸かるくらいの量の水を張り、スッポンを泳がせよう。
繰り返しになるが、この時も脱走にはくれぐれもご注意を。
スッポンの状態にもよるが、よく餌を食べていたスッポンの場合は、6~12時間もすれば、糞をしたり吐き戻しをして水が汚れてくるはずだ。
水が白っぽく汚れたら、その都度ガンガン水替えをしよう。カルキ抜きが無い場合は水道水でも問題ない。
12時間経って水が汚れなくなったら、食べごろだ。
因みに、泥抜きの間に餌を与えては本末転倒。可愛く見えてきても心を鬼にしよう。
スッポンの捌き方
泥抜きが終わったスッポンの首をしっかり掴み、首の根元を包丁で落とし、流水に当てて血をしっかり抜く。
甲羅に包丁を入れパカッとはずし、下半身を引き剥がしていく。
スッポンは食べて害のある臓器は無いが、胆のうと膀胱は苦みやニオイがあるため通常は外してしまう。
また、泥抜きを省略したり足りなかった場合は、胃や腸に食べたものが残っており、強く匂うので潰さないように注意しながら捌いていこう。
一口大の大きさに切り分けたら、スッポンの肉から血の気が無くなるまで大量の流水で洗い流す。
甲羅は80℃のお湯にくぐらせて、薄皮を剥いでおく。
スッポンは、魚の下処理よりも四苦八苦しながら捌くことになるが、何事も初めてのことにチャレンジするのは楽しいものなので、ポジティブに捉えて欲しいものだ。
スッポン鍋の作り方
できるだけ大きな鍋に、スッポン1尾(800g前後)に対して、水1.5L、酒300ml、昆布適量、長ネギ1本、ごぼう1本、生姜大1個の割合で材料を用意しよう。
材料全てを鍋に入れ、水から強火で蓋をせずに煮立てていく。
沸騰直前に昆布を取り除き、灰汁(あく)を取りながら煮込む。
灰汁が出なくなり、出汁が黄色く色づいてきたら、隠し味として醤油を50mLほど入れ、中火で1時間ほど、適宜お湯を足しながら煮込めば、やっとスッポンの下処理が終了する。
土鍋に出汁とスッポンの肉を移し、野菜や豆腐を入れる。
塩と醤油で味を調え、ひと煮立ちさせればスッポン鍋の完成だ。
スッポンは素人が調理しても、とっても上品で旨味豊かなスッポン鍋を作ることができる。
秋に最も脂が乗るとされる天然スッポンを捕まえに、出掛けてみてはいかがだろうか。