印旛沼に定着したカミツキガメは爆発的に繁殖を繰り返し、個体数を激増させた。2005年には特定外来種に指定され、駆除活動も頻繁に行われるようになる。
その努力が実を結んだのか、ここ数年は若干個体数が減少傾向に転じたとのうわさが流れていたが、その真相を確かめるべく2015年・2017年・2020年に引き続き2022年夏の印旛沼近郊に足を運んだ。
カミツキガメとは
北米原産のカメ。
大型の個体は甲羅の長さが50㎝で30㎏を越えてくる。
その名の通り噛みつく力が非常に強く、人間の指くらいであれば食いちぎる事も可能である。また、繁殖力も非常に高く40個ほどの産卵を一回に行う。
日本において成長した成体のカミツキガメには、外敵はいない。その為、一旦環境適応し定着したカミツキガメの数を減らすことは容易でなく、駆除活動の継続以外にない。
また、過去に何度も食べてはいるが、食材としては非常に優秀で身に歯ごたえがあり味も悪くない。
カミツキガメを捕獲しよう。
過去三回の結果。15個ほどのペットボトルに、タコ糸と釣り針の簡単な仕掛けに魚の切り身付けて水路に投入する。
僅かな時間で、2015年6匹、2017年3匹、2022年3匹を捕獲している。
今年も同仕掛け、餌、で何匹捕獲できるであろうか?
2022年は4月、7月と2回にわたり捕獲を試みた。
釣り針はカミツキガメが針を飲んでしまわないように、オフセットフックを使用している。しかしながら、この大きさの針を使用しても、殆どのケースで飲んでしまう。
ポイントは写真のような場所。
印旛沼水系の河川本流よりその周辺の小さな水路が生息密度が高く、捕獲しやすい。ペットボトルの仕掛けを次々と投げ込んでいく。夜間であれば、ペットボトルの中にケミホタルを入れておけば見失うことはないぞ。
15個の仕掛けを終えて、帰り道に仕掛けを観ていくと、早速ペットボトル仕掛けが引きずられている。非常に獰猛で食欲旺盛。仕掛けを投入した場所の近くに居ればすぐにでも餌を食ってくる印象だ。
結果から言うと、2022年4月(日中)1匹・7月(夜間)1匹という結果となった。
捕獲したカミツキガメを観察してみよう
残念ながら厄介者となってしまったカミツキガメだが、元々はとても魅力的な生き物だ。細心の注意を払い捕獲したカミツキガメを観察してみよう。尻尾を持ち、持ち上げると首を出し頭部を観察しやすいので試してみてほしい。
頭部は大きく歯は鋭い。顎の筋肉も非常に発達している。そして、噛みつこうとするときのスピードと殺気がもの凄い。
爪は非常に鋭く、皮は非常に厚い。恐らく面の皮も厚い。
尻尾は日本在来の亀類と比較しても、非常に長い。
背甲(甲羅)には三本の隆起したような線が縦に並び、甲羅の後方はキザギザにとがっている。
そして、中々のスピードで移動する。素早い亀に驚愕する事だろう。
お腹側の甲羅、腹甲は非常に小さく四肢を覆う構造にはなっていない。人間で例えるなら、半袖半ズボンで出勤するサラリーマンに等しい無防備さだ。まさに恐れ知らずである。
カミツキガメだけあって、目の前にあるものは全て噛みつく。たとえお友達や恋人であっても容赦なしだ。
カミツキガメを食べてみよう
カミツキガメはお世辞抜きで非常に美味しい。
是非機会があれば召し上がっていただきたい。しかしながら、特定外来生物のカミツキガメ。生きたままの運搬は禁止されている。持ち帰る場合は現場で〆る必要がある。〆る際は首にナイフを入れるのが良いが、非常に皮が厚くナイフの刃が中々通らない。
持ち帰った亡骸。
しっかりブラシで擦りながら洗おう。基本水中の泥の中に隠れているので体表も泥だらけ。胃腸にもしっかり泥が入っている。しっかり洗っても若干臭みは残ってしまう。臭い消しには生姜や香草が強い味方だ。
先ずはカミツキガメのもつ煮。色んな食感が楽しめて美味しい。中でも雄亀のシンボルは非常に歯ごたえが良く珍味中の珍味だ。
タイ料理トムヤムでも頂いた。これは中々の失敗。スッポン鍋と同じレシピで食べた方が圧倒的に美味しい。
カミツキガメ料理定番のから揚げ。結局、身の部分はから揚げが圧倒的に美味しい。
カミツキガメ料理を食べながら思う事。
2022年捕獲数は一回に1匹。
少なかったとはいえ、大幅に数が減っているようにはとても思えない。
如何に駆除を継続したとしても、この怪獣の様な素敵なカメを根絶させることは困難であろう。