カリマンタン島に行けばいとも簡単に釣れる。しかも今回のターゲットは生息地での個体数も多いフラワートーマンだ。爆釣しか想像していなかった。
まさかここまで苦戦を強いられるとは、その時は思いもしなかった。
フラワートーマン(Channa pleurophthalma)とは
オセレイトスネークヘッドまたの名をフラワートーマン。インドネシアのスマトラ島・ボルネオ島(カリマンタン島)に多く生息し、生息域においては比較的個体数が多いと言われる。
体長は40㎝程でスネークヘッドの仲間の中では中型種で性格はおとなしい。
体色はバリエーション豊富で黒・エメラルドグリーン・ブルー等。体表に並ぶ黒をオレンジ色で縁取りした大きな斑紋が美しい花に観える事からフラワートーマンの名が付いた様だ。生息地はタンニンを多く含む綺麗なブラックウォーターで比較的流れのある河川にも生息する。フラワートーマンの遊泳力は高いとされている。
フラワートーマン釣行
さて、意気揚々と訪れたカリマンタン島ではあるが、海外釣行あるあるで、数日前から大雨が降り続いた。河川はみるみるうちに増水したようで、河川から流れでた水は周辺のジャングルへと流れ込んだ。その状況に落胆する私をよそにフラワートーマン達は狂喜乱舞の大喜び。ブラックウォーターの大水と共に餌が豊富なジャングルの奥へと姿を消した。
余裕をもって3日間を用意した遠征釣行も既に2日間が経ったが、本流はお留守であったようで全く魚からの反応は無い。昼食時に水上家屋周辺で魚肉ソーセージを餌に釣れたテナガエビに歓喜したのみだ。
そして、あっという間に最終日が訪れた。わざわざ日本からやって来た哀れな釣り人にフラワートーマンをなんとか釣らせてあげようとボートマン達は小型の船を用意してくれた。今日は浸水したジャングルに入り込んで釣ってみようと言う事になった。
ベテランのボートマンの操船で船はジャングルの奥へと進んでいく。本流とは様子が変わり多くのストラクチャーが点在し雰囲気最高だ。釣れそう感が漂う。
早速最初のポイントから魚からの反応があり、立て続けに2匹のフラワートーマンを手にすることとなる。まさに『虎穴に入らざれば虎子を得ず』である。
先ず一匹目釣れたのは薄っすらとエメラルドグリーンが体色に入った個体。状態も良く美しい個体だ。
続いての2匹目。こちらは黒い体色が強く出た個体。体表にならぶオレンジに縁取りされた花模様が非常に美しい。兎にも角にも一先ず釣れて良かった。
安堵したのもつかの間、まもなく事件は起きる。
ボートマンも更に釣らせようと奥へ奥へと船を進める。そして、ある立ち木に船がかすめた次の瞬間、無数の小さな羽音が聞こたかと思うと、左足に走る激痛。次は腕、そして背中へと激痛が続く。
『うびゃぁぁぁぁぁ!!』悲鳴を上げる私に異変を察し、ボートを後ろへと慌てて漕ぎ始めるボートマン。
あまりの痛みに倒れ込み船は傾く。
羽音はなおも執拗に私を追いかける。
慌てるボートマンと同行者。
犯人はどうやらクロスズメバチの仲間の様だ。とにかく、滅茶苦茶痛い!泣き叫ぶほど痛い!
ボートの上で逃げ場はなく次々と襲い掛かるクロスズメバチの猛攻はなす術もなく続いた。
その後、あまりの恐怖にジャングルの奥へと船を進めることはなく、夕暮れが訪れ、そして釣行を終えた。
フラワートーマンを食べてみた
気を取り直し、折角なので釣れたフラワートーマンを肴に反省会&宴会をしようと言う事になった。
スネークヘッドの仲間は何度か食べてみたことがある。身の締まりが良くプリプリの食感で美味しい魚だ。
今回は同行したインドネシア人の一人がホテルでコックをしており、スネークヘッドの炭火焼きを食べる為にわざわざ、炭、コンロ、そして、自作のソースを持参してくれた。
立ち上る煙と共にソースの甘辛い香りが食欲をかきたてる。
出来上がった炭火焼を口に運ぶ。サンバル(唐辛子)の刺激とニンニクの香りが広がり、その後にジューシーでプリプリの身が非常に良い。淡水魚の臭みも全くなく、いくらでも食べられる。用意した沢山の温いビールもあっという間に空となった。
海外に行けば爆釣は約束される訳ではない。しかしながら、それはそれで貴重な経験は人生の宝になりえる。
フラワートーマン:2バイトの2キャッチ
黒スズメバチ:13バイトの17悲鳴
まさに泣きっ面に蜂を絵にかいたような結果となる。
今回の教訓。いくら降参して手をあげたところでクロスズメバチは決して容赦してくれないです。