北海道・福島県・滋賀県を主に生息していたウチダザリガニだが、ここ近年、他のエリアでも捕獲・発見事例を聞くようになった。特定外来生物に指定され、生きたままの移動が禁止されているにも関わらずの結果。2022年8月。裏磐梯・桧原湖から流れ出る河川へ現状を確認しに行ってみる事にした。
兎にも角にも、このウチダザリガニは良い食材になる。不謹慎にも舌鼓を打ちながら車を走らせた。
ウチダザリガニとは
雑食性で体長15㎝程までになり、日本で観られるザリガニの中では大型種。日中は岩陰などに姿を潜め、夜間に活動的に捕食をおこなう。元々日本へは、食用として輸入されたものが拡大・繁殖されたと言われているが、北海道の阿寒湖で繁殖したものは『レイクロブスター』と、なんとも美味しそうな名前を付けられ食されている模様。上記したように特定外来生物に指定されており、日本の侵略的外来種ワースト100にも選定さている。
こちらはメスの個体。
尾の裏面には腹肢(小さな足)が付いており、この腹肢を使ってメスは数百の卵を抱える。
こちらはオス。
尾の裏面の最上部についているのが生殖器である。驚異の2個持ちである。
ハサミの根元にある白い斑点が特徴的。
爪の大きさはアメリカザリガニと比較するとかなり大きい。
ウチダザリガニのメインの可食部はこの立派な爪と尾の部位となる。
ウチダザリガニを捕まえよう
今回のポイントは福島県、裏磐梯。水量の多いポイントで、ハーフウェーダー程度が必要。冷水を好む彼等だが、出現率が高まるのは7月中旬以降で、雪解け水が河川に流れ込んでいる時期は活動的ではない。また裏磐梯の気温は、8月中頃であっても夜間は少々冷え込むので、濡れるのを覚悟のショートパンツ等での入水はお勧めしない。また、近隣にお住いの方もいらっしゃるので、夜間は大勢で大騒ぎするのは避けましょう。なんといっても、通常は人気のない暗い河川。あの川に河童が出たなんて、近所で噂になったりして平和な観光地を恐怖のどん底に陥れるようなことになっては大変です。特に、頭髪が少なめの方は河童に間違えられる可能性が高いので気を付けてほしい。
標高の高い桧原湖から流れ出る綺麗な水は綺麗で冷たい。まさに清流。
日中のウチダザリガニは水草の影や岩の間に隠れ、その姿を見せてくれることは少ない。スルメやサキイカを紐に付けて、岩の間へ垂らして釣るザリガニ伝統釣法で狙うのも良い。しかし、一旦夜間のウチダザリガニの出現率を観てしまうと、日中の釣りは少々効率が悪く感じてしまう。
日中ネットにスルメなどを入れ、川の流れに流されないように淀みに数時間放置しておく、日が暮れて1時間もすれば、匂いに誘われた無数のウチダザリガニが群がってくる。その彼らを片っ端から捕獲するという、少々怠慢なやり方で私はいつも楽しませていただいている。
さて、辺りの日が暮れ、すっかり暗くなった。
再び河川に降りてみると、川の様子も一変。ウチダザリガニも岩陰や水草から這い出て、撒き餌さの入ったネットめがけて続々と集結中といった状況。
土煙をあげながら水中を進む、その姿はまるでアメリカンブルドーザーの様だ。実に素敵で男心をくすぐる。
隠れ家から這い出て、浅瀬の撒き餌に寄ってくるお利口さんザリガニたち。次から次へと網や素手で捕獲され、バケツに放り込まれていく。ウチダザリガニ達も、両爪を広げて最後の抵抗をみせるが、あとの祭りである。
まだまだザリガニ祭りは続く。
本日一番の巨体を誇るウチダザリガニ。
美味しそうだ。特に立派な爪が食欲をくすぐる。
結果、捕獲時間は僅か20分程度。あっという間に一人で食べるには十分なウチダザリガニが確保できた。
スルメの匂いは本日も偉大であった。
ウチダザリガニを食べる
先ず、持ちかえる前に必ず現場でウチダザリガニを締めてください。生きたまま移動すると厳しく処罰されますのでくれぐれもご注意を。
歯ブラシなどで表面をしっかり洗った後、塩水でかるく茹でます。生のまま背ワタを抜く方法もありますが、素人さんは茹でて殻をむいた後に爪楊枝などで抜き取った方が確実で容易です。
先ずは茹でウチダザリガニ。
夏の伝統料理として、北欧フィンランドでは人気のある料理だそうです。
3パーセントほどの塩水に砂糖をちょっと。香草ディルで香りづけして茹で上がったら出来上がりです。ただの塩茹でより、異国の雰囲気を楽しめますよ。
そして、一番シンプルなこの料理、尾の部位はほとんど海老。爪の部位は、蟹の食感に似て非常に美味しい。
ウチダザリガニは茹でるだけで、プリプリの海老と柔らかい蟹の身が味わえる、至高の食材である。
続いてトマトソースパスタ。
茹で上がったパスタとザリガニの身に卵を加え、ガーリック&トマトソース&ウチダザリガニ出汁で仕上げた一品。口いっぱいに広がるザリガニの香りを食いつくせ!
今や中国でもザリガニは人気食材。今回は蟹の食感に似た爪の肉で仕上げた、ザリ餡かけチャーハン。餡にもザリガニだしを使う。パラパラに仕上がった米とザリガニの風味が漂う餡の相性は最強だ。
最後は世界三大スープの一つ、トムヤムクンを模したスープ。非の打ち所がない美味さ。
凄いぞ!ウチダザリガニ。
フィンランド・イタリア・中国・タイの料理にベストマッチングだ。
食材としてのキャパシティが凄すぎる。
昨今、輸入食材が値上がりを続ける世の中。こんな美味しい食材が川や湖に潜んでいる事を忘れてはいけない。しかも捕り放題。まぁ高速代とガソリン代を計算すると大赤字確定なのだが‥‥
次回はコスト計算をしっかりとして、近所のアメリカザリガニの方を頂きたいと思う。
*ザリガニ類は寄生虫などの宿主となるリスクがあります。綺麗な水が流れる場所で捕獲し、しっかり火を通して召し上がってください。