サヨリ釣り タコ公園 碧南緑地公園

はんぺんを使ったサヨリ釣り

初めての1匹との出会いに最も価値を置き、世界中何処へでも行く怪魚ハンター山根ブラザーズの兄。釣りや採集だけでなく漁業者や研究者と協力してまでも、まだ見ぬ生き物を追い求めてフィールドに立つ。 テレビ東京・緊急SOS池の水全部抜く大作戦やNHK・ダーウィンが来た、TBS・VSリアルガチ危険生物などに出演したり、魚類生態調査に参加したりと幅広く活動中。

はんぺんって食材を知らない人は少ないはずだ。
そう。おでんに入った白くてフワッとしたやつ。
これが釣り餌として有能と聞いたらどう思う?

 

“はんぺん”と“はんぺい”で議論勃発

サヨリ釣り はんぺん 衣浦愛知県の実家に帰省しているときのこと。
スーパーに買い物へ向かう母に『ハンペンあったら買ってきて!』と頼んだ。
すると『ハンペイのことかな?あったら買ってくるね』と返された。
この後のやり取りは、きっとご想像の通りだ。
紆余曲折を経てgoogleという名の裁判官に判決を委ねたところ、東海地方ではハンペンのことをハンペイと呼ぶらしい。
ここは愛知県。そして自身も愛知県育ち。1つ勉強させられた。

 


サヨリ釣りとはんぺん

サヨリ釣り はんぺん かまぼこはんぺんが必要となったのは他でもない。
サヨリ釣りを紹介する記事の執筆依頼が舞い込んだためだ。
皆さんご存知の通り、サヨリ釣りと言えば、はんぺんが特効餌となる。
どの本にもそう書いてあるし、そのくらいのこと、子供の頃から知っている定説だ。
なんの躊躇もなく、“サヨリ釣りに適した餌“という項目にはんぺんと書こうとしたのだが、自分の良心が『ホンマにはんぺんでサヨリが釣れると思ってんの?』と待ったをかけてきた。
確かに、かまぼこや魚肉ソーセージではなく、はんぺんという理由も気になる。
試しに地元、衣浦の釣果情報を調べてみるとサヨリの釣果が好調のようで、いっちょ取材も兼ねて海釣りに行くことにした。



 

サヨリとは

サヨリ釣り タコ公園 碧南緑地公園サヨリ釣り タコ公園 碧南緑地公園海釣りをされない読者の方もいらっしゃるだろうから、ここでサヨリという魚を簡単にご紹介しよう。
サヨリは細長い体形と長く突き出た下顎が特徴的な20~30cm程度の魚だ。
寿命は約2年、繁殖期は春から初夏、食性は動物プランクトンを主食としながらも微細な藻類も捕食する雑食性。
個人的な思考だが、和名としては一番可愛らしい名前が与えられていると感じる美しい魚である。

サヨリ 腹黒い 由来因みに、スラッとしたスタイルと美しい輝きがサヨリの魅力であるが、腹を裂くと真っ黒である。
この黒い膜は苦みや臭みの原因となるらしく、心に何か悪だくみを持っている人という意味で使われる“腹黒い人”という言葉はサヨリが由来になっているらしい。
『あなたはサヨリみたいに綺麗な人ですね』なんて言われたら、自分の内面を見透かされていると思った方が良いだろう。


サヨリヤドリムシ 寄生虫 ウオノエついでに、せっかくブレコを読みにきてくれているのだから、もう一つ豆知識を持って帰って欲しい。
サヨリには、殆どと言って良いくらい“サヨリヤドリムシ”という寄生虫が着いている。
寄生場所はエラ。左右に1尾ずつ着いていれば、必ずオスとメスのペアだ。
因みに人には無害だからご安心あれ。
見た目も名前も完璧なのに、内面は色々と問題を抱えている。サヨリとはそんな魚だ。
美人には美人なりの苦労というものがあるのだろう。

 

 

フワッフワ

サヨリ釣り はんぺん 餌さて、話しをはんぺんに戻すとしよう。
釣り場に着いて針にはんぺんを付けようとすると、めちゃくちゃ柔らかくて上手に千切れない。
空気90%ですよ。と言わんばかりのフワフワ感が非常に厄介なのだ。
針につける時点で四苦八苦していると、記憶の奥に潜んでいたはんぺんの使い方を思い出してきた。確か、ストローを使うはずだ。


サヨリ釣り はんぺん ストローパックジュースのストローをむしりとり、はんぺんに刺して息を吹く。
すると、きれいにストローの径にかたどられたはんぺんが完成した。
知識を掘り返しただけなのに、まるで発明者にでもなったような気分で袖針にはんぺんをつけて仕掛けを投げ込んでみた。

 


儚く散りゆくはんぺん

サヨリ釣り 遠投 スーパーボール気になる実釣日の状況は、『昨日までよく釣れていたのに…』という典型的な悪いパターンだった。
それでも、岸壁から30~40mほどの場所にサヨリの群れがいるようで、遠投仕掛けを使っている釣り人だけは毎投サヨリを釣り上げていた。
遠くまで投げれば1投目から釣れるだろうと思いきや、ウキに反応はない。
もしや、と思って2投目に飛んでいく仕掛けをしっかり観察してみると、案の定、キャストした時点ではんぺんはどんより曇った衣浦の秋空に散っていた。
結論。はんぺんはフワフワすぎてキャスト不能。
今月、ブレコの記事ははんぺんをネタにしようと思っていたのに。無念である。



 

かまぼこはどうだろうか

サヨリ釣り はんぺん かまぼこサヨリ釣り はんぺん かまぼこまぁー、所詮こんなもんだろうと思って、かまぼこも用意していた。
言わずもがな、石ゴカイも小粒のオキアミも。アジングワームやイソメ系ワームだってある。
という事で、選手交代。かまぼこをはんぺんと同じようにストローを使ってくりぬいて針につける。


サヨリ釣り 餌 かまぼこサヨリ 釣果 衣浦 碧南はんぺんと対照的に力強いハード感。これなら遠投にも耐えてくれそうだ。
着水点が遠くて、かまぼこが残っているか分からなかったが、ゆっくりと仕掛けを引っ張るとウキの後ろでサヨリが水面を騒ぎ始め、ウキが横にギュンっと走った。


サヨリ 釣果 碧南 半田 海釣り公園その後も、かまぼこでは順調にサヨリが釣れた。
気になったことと言えば、石ゴカイよりも手返しが悪いことだが、家でかまぼこを切り出しておけば、良い勝負ができそうだ。
少なくとも遠投が必要な場合、オキアミよりも使い物になる。石ゴカイが触れない方はかまぼこがオススメだ。

 

 

はんぺんを食べてみる

サヨリ はんぺん 餌石ゴカイやかまぼこを使って記事用に30尾ほど釣り上げ、イソメ系ワームでも飛距離に苦戦しながら何尾か釣った。
はんぺんは完全に戦力外。もったいないし、食べちゃおーってことでかぶりつく。
一緒にサヨリ釣りの撮影に来てくれた奥さんがニコニコしながらシャッターを切ったあとに、はんぺんって生で食えるの?って素朴な疑問を投げかけてきた。
確かに…。はんぺんなんて、おでんの具材でしか食べたことがない。
でも、フワフワで旨かった。ほんのり魚のすり身の香りがする極上な空気を味わっている気分。もう一口食べたいくらいだ。
結論は、はんぺんは生でも食べられる食品だ。パッケージにそう書いてあったにも関わらず、先にgoogleに聞いている自分に少しだけガッカリしたのはココだけの話しにしょう。
やっぱgoogleって凄いや。

 

 

最後にはんぺんの威力を知ることに

サヨリ 延べ竿 はんぺんサヨリ はんぺん 釣果そんなことをしている間に、時合が到来したようで、岸壁沿いまでサヨリの群れが寄ってきた。
これは、はんぺんの実力を試す絶好のチャンスである。
のべ竿仕掛けを振り込むと一撃でサヨリがはんぺんを吸い込んだ。
餌が真っ白なので、サヨリが口にする瞬間が丸見えで面白い。これはサイトフィッシングとしての醍醐味要素が大きいと言えそうだ。
そんなこんなで、短い時合だったが足元にサヨリがいる間、はんぺん特有の柔らかさと軽さを武器にサヨリを釣ることができた。
なるほど。確かに、この吸い込みの良さは快感だった。石ゴカイの汎用性には劣るが、興味がある方はぜひはんぺんも使ってみて欲しい。

 

そうそう。帰り道、『私のトロピカーナ飲めなくなっちゃったね!』って微笑みながら笑い話にしてくれた優しい奥さんに、取材手伝ってくれてありがとうねって伝えたのであった。

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