北海道の春
長かった冬が終わり、雪や凍結した路面から解放された道民たちの気持ちの高まりは物凄いです。
僕もウキウキワクワクが止まりません。
冬眠から目覚めたばかりのエゾアカガエル
こんな時期に心躍らせる釣りのターゲットがサクラマスです。
サクラマスとは渓流の女王ヤマメの降海型のサカナです。
河川残留型であるヤマメは体側に美しいパーマークがあるのが特徴で、その配置には個体差があります。
川で生まれ海で美味しいものを沢山食べて育ったサクラマス達は、大きなもので体長60~70㎝にもなります。
桜の咲く時期になると、成長したサクラマスは産卵遡上のためにまた産まれた川に帰ってきます。
サクラマス水中写真
海へ旅立ったサケマス類は基本敵に産まれた川(母川)へ帰ってくるのですが、サクラマスが最も正確に帰ってきます。
ちなみに余談ですが、最も母川回帰率が低いのがカラフトマスになります。
カラフトマス
これはカラフトマスの能力が低いわけではなく、母川の環境に異常があっても生き残るための戦略だと思われます。
その証拠に、サケマス類の中でカラフトマスが世界的に一番分布域が広いのです。
さて、サクラマスに話を戻します。
サクラマスは産卵のために川を遡上するという最後の大仕事に備え、浅瀬に集まってきます。
この時が釣りで狙えるタイミングになる訳です。
釣り風景
サクラマスはルアーへの反応が良く、掛かると力強い引きとトラウト界一のスピードで釣り人を楽しませてくれます。
魚体が大きいので、足場の高い磯や漁港で釣るときには玉網は必須です。
玉網に入ったサクラマス
釣るとウロコがポロポロと剥がれます、なのでウロコがキラキラと散っている場所を見つけたら、最近サクラマスが釣れた場所という目安になります。
サクラマスウロコ
釣り中に美しいさえずりが聞こえ振り向くと、イソヒヨドリの姿を見ることが出来ます。
イソヒヨドリ
そしてサクラマスは大変美味しい魚ですので、釣れたら是非食べてみてください。
というか釣れたらウロコが剥がれて痛々しいので、リリース前提のゲームフィッシングにはお勧めしません。
太った個体は脂のノリが素晴らしく、刺身(寄生虫が怖いので一旦冷凍しましょう)やフライ、ムニエルとどう調理しても美味いです。
個人的にはシロザケなんかより断然美味しいです。
ただサクラマスはそこまで簡単に出会えるサカナではありません。
せっかく釣りに出かけても、サクラマスの気配もなく帰ることも珍しくありません。
そんな時に癒してくれるのがホッケです。
ホッケ
ホッケは開きの状態のイメージが強いでしょうが、こんなサカナです。
釣れる大きさは20~40cmくらいですがなかなかに引きは強く、数も狙えるためサクラマスが釣れなかった時の癒しになります。
もちろん美味しいのは言うまでもありません。
僕も釣れたら、よっぽど難所で釣れたとき以外は持ち帰って開きにします。
ホッケの開き
オキアミ類を偏食していなければ、様々なタイプのルアーにも反応が良いです。
過去に、バス用のクランクやジグヘッドにコンビニ袋の切れ端をつけたものでも釣れたことがあります。
狙うときはサクラマス釣りよりゆっくり誘う、ボトム付近を狙うといったことが大事になりますが、そこまで難しく考えなくても釣れてくれます。
そしてサクラマスやホッケが接岸する時期は、それを狙ったトドやアザラシやカマイルカといった海獣類も姿を現します。
ゴムボートで釣りをしているときに、近くでカマイルカがジャンプを始めたり、磯場でクライミングをしていると、上陸したトド(余裕で3メートルとかあるので圧が凄いです、てか臭い)に出くわしたり、けっこう怖い思いをすることもありますが、遠目に見ている分には楽しいです。
トドやアザラシなんかは好奇心が強いので、頭だけ出してジーっとこちらの様子を見ていることもあります。
ただし、彼らが現れるとサカナが釣れなくなるので釣り人には嫌われています(笑)
トド
カマイルカ
もちろん海辺でもヒグマに遭遇する可能性はありますので、対策は必要になります。
ではここからは漁師や釣り人に捕まらず、無事に産卵遡上を始めたサクラマスのその後についても触れたいと思います。
春に遡上を始めたサクラマスですが産卵シーズンは秋です。
こんなにも長く産卵遡上を続けるサケマス類は他にいません。
秋に遡上を始めるシロザケの群れの中に混じっている光景も見かけます。
シロザケ
ちなみに北海道の河川でサクラマスやサケやカラフトマスを釣ることはご法度ですので気配を感じたら移動しましょう。(リリース前提でも逮捕案件ですよ)
産卵時期になるとメスは懸命に産卵床を掘ります。
ここに卵を産み、オスが放精する訳です。
この写真ではオスのサクラマスが見えませんが・・・ 実は居るんです。
小さなヤマメのオスたちが。
北海道だと殆どのメスのヤマメは降海し、サクラマスになります。(なのでヤマメに関しては北海道で大物を釣るのは難しいです。)
それに対してオスのヤマメで降海するのは河川での生存競争に負けた弱い個体たちです。
オスのサクラマスは数が少ないのでこのように、オスのヤマメとメスのサクラマスといった何十倍もの体格差のあるカップルも珍しくないわけです。
サクラマスもヤマメも同じ種類のサカナなので問題ありません。
そしてこちらは別河川の産卵の様子になります。
こちらは立派なオスが数匹いてメスを取り合って喧嘩していました。
無事産卵まで観察できましたが、その瞬間に沢山の岩魚たちがイクラを狙って飛び出してきました。
イクラは人間だけでなく、サカナ達にとってもご馳走なんです。
サクラマス産卵動画
こうして彼らの長い旅は命を次の世代に繋いで終わります。
その亡骸は森の栄養となり、海にも恩恵を与えます。
サクラマス亡骸
僕は普段から川に入ることが多いのでこのような光景にも良く出くわしますが、
誰でも簡単に立派なサクラマスの様子を見れる場所があります。
北海道の東部にある清里町の【さくらの滝】です。
さくらの滝地図
さくらの滝前景
時期は6月~8月くらい。
落差3メートル程の滝を色鮮やかな婚姻色に染まったサクラマスたちがジャンプして越えようとする姿を観察できます。
殆どの個体が滝越えに失敗しながらも、何度も何度もジャンプを繰り返しています。
彼らの旅の終わり間近の最大の難所になります。
サクラマスジャンプ
サクラマスの滝越えの様子
ということで今回はサクラマスについて語らせてもらいました。
次回もお楽しみに。