“犀川殖産“ 日本にも、ワイルドレインボーが釣れる本流がある。
外国や北海道で釣るような、大きくて美しいニジマスが、本州のど真ん中を流れる川で一年中狙うことができる。
釣れればアベレージ40cm越え、60cmオーバーも珍しくない。そんな、上手い話しは本当なのか、試しに実釣してみよう。
トラウト界のスーパースター
今回の記事は、釣り人からレインボートラウトと呼ばれるニジマスが主人公だ。
美しい魚体と、ジャンプを繰り返しながら疾走する強い引き味で、世界中の釣り人を魅了している。
因みにニジマスは、カムチャッカ半島から北米にかけての地域を原産とする魚であり、日本のネイティブトラウト、すなわち在来魚ではないことも忘れずに記しておこう。
日本一長い川、信濃川水系“犀川(さいがわ)”
大きなニジマスを狙うことができることで有名な犀川は、長野県の松本盆地を北流する信濃川水系の一級河川だ。犀川の中でも、犀川殖産漁協が管轄するキャッチ&リリース区間では、1年中魚釣りを楽しむことができる。
遊漁券は日釣り券1000円、年券5000円と比較的安く、周辺のコンビニでも購入できるので早朝からの実釣も可能だ。
遊漁券取り扱い店舗と遊漁区間については、犀川殖産漁協のHPを参照されたい。
“釣れる”と“狙える”の違い、釣れれば40cm越えとは…
僕は、釣果情報や釣り人の自慢話に対しては、めっぽう疑り深い男である。
犀川殖産エリアに関する文章を読み込んでいくと、『釣れれば大きい』とか『ヒレピンのレインボーが狙える』というワードが気になった。
“釣れれば”、“狙える”、実に怪しい。そしてもう一つ気になったのが、釣り人の多さだ。
特に、多くの河川で禁漁となる10月以降は、水温低下によりニジマスの活性が上向くことと相まって、ポイントを選ぶ余裕などないくらい釣り人が来るという。暗黙の了解として、声がけをした上で60mほど間隔を空ければ、同じストレッチの下流側にも入川して良いという記事すら見受けられた。
因みに、本流釣りでは、渓流とは真逆で上流から下流に向かって釣り降る。釣り上がりや、先行者の下流側への先回りは、高確率でトラブルになるのでご法度だが、混雑時の犀川殖産エリアはそうもいっていられないようだ。
早起きは三文の徳
初めてのフィールドはいつだってワクワクするものだ。
ヤクルトスワローズのCSを車内で観戦しながら、iPhoneで航空写真やストリートビューを使って、キャッチ&リリース区間でニジマスが釣れそうなポイントや駐車場を候補にあげていく。
人気河川なだけあって、他の釣り人と譲り合いながらの実釣は避けられないだろう。
朝一だけでも、自分が先行しながら釣り降りたいと思い、入川地点が上流部に限られ先回りできないと思われる、ストレッチを目指して夜明け1時間前に車を出発した。
本流の流れの中でガツンと来た!
河原で夜明けを待ち、明るくなってきたら実釣開始。想像通り、上流側には数人の釣り人が見え、少し時間が経つと対岸にも釣り人がやってきた。
これほどの釣り人が、毎日釣行していると思うと、相当なプレッシャーが掛かっていることは間違いなさそうだ。
250m程あるストレッチを丁寧に探りながら釣り降っていると、流心の向こう側でガツン!と当たってきた。
竿を煽ってあわせると、豪快にジャンプした!早速良いサイズのニジマスが掛かったのだ。
強い流れに乗って疾走するレインボー
あっという間に流心に飲み込まれ、ジージーとドラグを鳴らしながら流され始めたので追いかける。
流心から引っ張り出したら、足元の岩盤に気をつけながらランディング。
網を覗き込むと、体側が赤く染まる綺麗なニジマスだ。確かに、美しい魚体だし、サイズも40cmを優に超えている。
噂通りの大きくて綺麗な魚が釣れて、大満足の朝マヅメとなった。
釣り人の多さに戸惑う
お目当てのストレッチを探り切り、移動を試みる訳だが、目星を付けた流れには先行者が入川している。
4カ所連続で先行者がいたところで、やや途方に暮れ始める。きっと上流側なら入っても良いのだろうけど、どのくらい間隔を空けるべきなのか、60mって意外と狭く感じるし…。
そんな、悩みを抱えながら時計を見ると9時30分。道の駅が時合を迎える時間だ。
道の駅で旬の山キノコを買う
信州町の道の駅までは、車で20分ほどの距離だ。店内に入ると、採れたての天然キノコが沢山売られていた。栽培のマイタケも合わせて、10種類ものキノコを購入し、再び殖産エリアへ戻った。
釣り人がいないストレッチを探す
もはや、10月の犀川殖産エリアは、自分が釣ってみたいストレッチではなく、空いているストレッチを釣るという釣り場なんだとハッキリ理解したところで、釣り人がいない場所を探して入川した。
朝は両岸が岩盤のエリアだったが、今度は砂が体積したポイントだ。
流心の脇を丁寧に探って行くと、このストレッチでもアタリが出た。
ニジマスらしいジャンプと走りを存分に味わいながらランディング。
この魚は色が濃く、いわゆる放流魚といわれるカラーだがヒレは綺麗で体格も良かった。
個人的に、トラウトは色が濃い方が好みだ。
小さなブラウントラウトが連発
このストレッチでは、サイズこそ小さいもののブラウントラウトも掛かってきた。
犀川殖産漁協では、ブラウントラウトは放流されていないが、自然繁殖したものが定着しているようだ。
次は、大型のブラウントラウトを狙ってみても、面白そうだなと感じさせられる区間であった。
因みに、ブラウントラウトも、ニジマスと同様に日本のネイティブトラウトではなく、外来魚であることを忘れてはいけない。
犀川殖産の駐車スペース
さぁ、本日2度目の移動だ。釣果面で充分満足できたので、もし、犀川を再訪することになった時に備えて、釣り人が入っているストレッチと、釣り人のものと思われる車が駐車されているスペースを地図に記録していく。
キャッチ&リリース区間を上から下まで両岸ともに見て回ると、ポイント以上に駐車スペースが少ないことを実感する。
規模の大きな駐車スペースには、漁協や釣り具メーカーの幟が立てられているので分かりやすいが、そのような場所は当然のように先行者が入っていた。
探せば車1~2台を止められるスペースが所々あるのだが、初見ではこのような駐車スペースを探すのに少し苦戦するかもしれない。
夕マヅメのチャンス
3か所目のストレッチは岩盤エリアを選んでみた。
足元の岩盤で生じた流れのヨレに、ミノーを流し込むとグングンッ!と重たいアタリがロッドにのしかかってきた。
フッキングの時は、グングンと首を振るような引きを見せたので、大きなブラウントラウトが食ったかな?!と思った瞬間、流心に向かってギュッギュッギュッ!と走り出した。
慎重なファイトの末に、上がってきたのは60cmに迫る大きなニジマスだ!
10月の犀川殖産C&R区間はよく釣れた
当初は厳しい釣果になるのではと、坊主まで覚悟した今回の犀川殖産釣行だったが、結果的には3か所のポイントそれぞれで1匹ずつ良いサイズのニジマスを釣ることができて、良い意味で期待を裏切られた。
これだけの人数の釣り人が毎日入川しても、しっかり魚がルアーを追ってくれるということに驚いたが、きっと川の状況や環境が良いことに加え、漁協が行っている定期的な放流の効果があってのことだろう。
太く重たい流れの中で、力強く育ったニジマスの引きを味わってみたいという方は、ぜひ犀川殖産エリアを訪れてみてはいかがだろうか。