2019年ゴールデンウイーク。家族4人での旅行を計画中だが、私以外の妻と娘は韓国グルメ&コスメ爆買いツアーの話で盛り上がっている。多数決での敗北をいち早く察した私は、娘たちを多額のお小遣いで買収。悔しがる嫁を尻目に、コタキナバル行きを確定させた。
数年前からボルネオ島の自然環境下でのラフレシアを観てみたいと、知人関係に調べてもらっていたが、ジャングルで偶然ラフレシアが咲いているのに出逢う事はかなり難易度が高い。コタキナバルの民家に自生するラフレシアに妥協した訳だ。
ラフレシアとは
世界最大の花を咲かせると言われる寄生植物。マレー半島とボルネオ島とその近郊に点在する島々に分布し、最大で約直径90㎝の花を咲かせる。その花はポットン便所の匂いを強烈に放つと言われている。
ブドウ科の植物の根に寄生し、寄生から開花まで1年程を要すが、開花後、僅か2日で枯れてしまうことから、自然下でこの花に遭遇するのは至難の業と言えよう。また、マレーシアではお札に印刷されるほど多くの国民に親しまれている様だ。
コタキナバルの観光
とにもかくにも、我々の家族旅行はスタートした。子供達も喜ぶように他の観光も取り入れ、アクティビティにも参加したが、彼女たちは慣れない暑さと食事の香辛料に徐々にダメージを負い、いつしか顔色が曇りつつあった。
そんな事も気にも留めず、はしゃぐ父親、あきれる母親。
キナバル国立公園で南国の植物を眺めたり、クルージングでテングザルを探したりと、あっという間に旅行は終盤に差し掛かろうとしていた。
キナバル国立公園。南国の植物が楽しめる。蘭や食虫植物なんかも自生して父親のみが満喫していた。
テングザルを観察するクルーズ船に乗船。希少なテングザルもしっかり観ることができ、ここまではコタキナバルの大自然と触れ合うアクティビティは全て成功した。
いよいよ明日メインのイベント。ラフレシアを観に行くぞ。
ラフレシアを観に行こう
最終日。我々を乗せたバスはキナバル公園を越え、山道を走りラフレシアが咲いているという目的地に向かっていた。途中ガイドのアナウンスでは6割くらいの確率で観ることができるとの事。本当に観られるのか?と期待と不安で胸が一杯の父親。
一方の娘達と嫁は、山道のバスで車酔い。3人とも気持ちが悪そうだ。
そんな僕ら4人を乗せたバスは、遂に目的地に到着した。私はバスから飛び降りラフレシアが自生しているという民家の入口に走った。その後を、青ざめた三人が続く。
入口には立派なカウンターと看板が設置されており、そこで金額を支払って中に入る様だった。なんだか植物園みたいだなと、いささか拍子抜けしたが、支払いを済ませ奥へと進む。
VIVIAN`S GARDENの文字とカウンターには驚かされた。まぁ自分の庭に咲くラフレシアを利用し植物園にした訳だ。
少し進むとラフレシア咲いていますとの看板に安堵する。後は満開であることを祈るばかり。
更に歩みを進めると大きさにばらつきはあるが、花芽が地表にいくつか観られた。直径は15㎝~25㎝程だろうか。花芽は小さいうちは成長が遅いが、ある程度の大きさを超えると急激に大きくなり開花へと向かう。
そして花芽の奥に咲いていたのは飛び切りの異色を放つラフレシアだ。しかも満開状態!!花の直径は80㎝を越えている。花弁を触らせていただいたが、発泡スチロールの様で、水分を感じるような植物的な触感は全くない。
実は、ラフレシアの仲間は種類が多い。この種はラフレシア・ケイシー(Rafflesia keithii)と言う種類になる。日本にもヤッコソウと呼ばれる寄生植物が限定的な地域で観られる。姿や大きさは全く違うが、ラフレシア科の仲間とされている。
ラフレシアは雄と雌の花に分かれる。激臭を放ち蠅を誘引させ雄花と雌花を行き来させることによって受粉を促す。
因みに、気になるラフレシアの放つ便所臭だが、想像より遥かに臭くはなかった。臭いのは臭いのだが、臭味の強さは然程ではない。いずれにしても、その存在感と大きさは、まさに異形の巨大花。当初ジャングルで発見された際に人食い花と間違えられたのも理解できる。
満開のラフレシアの片隅には長い月日をかけ開花し、開花から僅か数日で枯れ果てたラフレシアが飾られていた。
『花の命は短くて苦しきことのみ多かりき』
無事コタキナバルでの予定を終えた僕らは帰国の途についたが、トランジットで寄った韓国での待ち時間6時間を利用し、グルメとファッションとコスメの街、明洞で観光を楽しんだ。その時に娘達が魅せた笑顔は旅行中一番のものであった。
年頃の女の子はやはり花よりコスメと言う事だ。