2018年夏もそろそろ終わり、秋への季節の変わり目で台風が日本列島に向かっている。台風の進路のその先を行くように、女満別空港に降り立った。
今回の目的は、カラフトマスである。
河川へ遡上するために、河口周辺に集まってくるカラフトマスを海で迎え撃ち、新鮮なうちに食べつくそうという計画である。そしてもう一つの目的は、背が大きく張り出した、たくましいオスのカラフトマスを釣って、この手に抱きたいというものだ。
カラフトマス(Oncorhynchus gorbuscha)
カラフトマスは、サケ科サケ属の一種。サケ属の仲間の中では、比較的小型の種とされているが、それでも80㎝程にまで成長する。他のサケ属と見分けるには、背面や尾鰭などに黒い斑点を確認すれば容易い。
産卵時期に河口周辺に集まってくるが、河川や時期により釣りに関して規制がかかっている場合があるのでご注意いただきたい。
羅臼の街並と遡上魚
羅臼と知床近郊の河川周辺へのカラフトマスの遡上は、7月中頃から始まる。僅かに遅れて、鮭の遡上が開始される。その時期にあわせて、多くの釣り人が道内もしくは日本全国から訪れる。
羅臼の街もカラフトマスや鮭の遡上は大きな存在として位置づけされている様で、河口の橋やその道路等至る所にその姿を象ったオブジェが施されている。
鮭類の中では最も資源量が多いとされており、加工品として流通するケースが多いとされている。特にこの時期は、河口付近に多くの定置網が置かれ、カラフトマスの遡上の後のサケの遡上も含め、漁獲量が街の産業に大きく影響するようである。
カラフトマス釣行
AM3:00札幌から車で走って来てくれた友人であるfielder斉藤大介氏(以下大ちゃん)と合流し、ウトロから知床峠を超え羅臼の海岸を目指した。
知床峠を越えて羅臼へ向かう道中。エゾシカやキタキツネが姿をみせてくれる。
いくつかある流れ込みから良さそうな河口を選び、車を停めた。周りは既に明るくなっており、良さそうなポイントには既に数人の釣人達が陣取っていた。
海は台風の接近にもかかわらず比較的静かで、問題なく釣りになる状況だ。僕と大ちゃんは河口から少し離れた場所に入れてもらいキャストを開始した。
遠くに薄っすら見える国後島が見える。絶景の中でキャスト開始。
僅か3投目。『カツン!』というアタリと共に竿先から伝わる生命観を手元に感じた。中々の手応えを味わいながらも一気に波打ち際から引き抜くと、銀色の魚体が海岸に敷き詰められた黒い石の上に輝いた。
その後数時間で、雄雌5匹のカラフトマスを釣り上げると同時に、20匹以上のカラフトマスをバラすという失態を2名で演じた訳だが、中でも大ちゃんのバラす様は、我が目を疑うほど壮絶なものがあった…
その日は早々と、午前中には釣行を終えた。
僅かにではあるが背が突き出したオスも手にすることができた。
体表に黒い斑点を確認した。間違いなくカラフトマスだ。
雌の尾鰭にも斑点がしっかり入っていた。
写真上がメス。下がオス。
僕等らはその場で釣りたてのカラフトマスを捌き、白子と魚卵を抜きだし、身はクーラーボックスに入れて保存した。海辺でマスを捌いていると、無数の水鳥が僕らの貴重な食料をくすめようと隙を狙っている。なんとか彼らの猛攻をかわし、慌ててその場を立ち去った。
推奨タックル
7フィートのスピニングロッドに2500番代のリール、PE0.8号にリーダーが12ポンド。
ルアーは7g〜14gのスプーンを多用。8〜9フィート程度のシーバスロッドが推奨されていますが、基本カラフトマスは然程の遠投が必要無いので、7フィート程度のロッドで充分釣りになります。
しかし、混んでいる釣り場ではゴリ巻きで釣り上げないとならないので、ある程度強いタックルも用意しておくと良いでしょう。
基本的に推奨されているのがルアー単体だと10〜20gくらいの赤やピンクベースのスプーンですが、魚がスレている場合は5gくらいのナチュラル系のカラーのスプーンを使用。また、スイミングフックを付けることによりフッキングの成功率の向上、フック自体がユラユラ揺れるごとによる誘いを期待できます。アピールが足りない時はタコベイトを付けると更に効果があることも。
北海道のローカル釣方としてのド定番が、浮きルアーです。遠投出来るように20〜30gのスプーンを使い
それをゆっくり引くために浮きを装着。アピールを強めるためにフックにはタコベイトを付け、集魚効果を高めるためにフックにはカツオや紅イカなどの餌を付ける。
これは鮭釣りでも共通の釣り方である。
カラフトマス調理編
翌日の深夜から、何もお腹に入れていなかった僕らは、早速獲れたばかりのカラフトマスを野外で調理。その旨さは五臓六腑に染みわたった。
*白子の煮つけ
多少の苦みと臭みがあり、お酒のアテにピッタリの出来上がりだった。大ちゃんは運転があるので飲めなかったが、私は冷えたビールを片手に舌鼓を打った。
*石狩鍋
石狩鍋は味噌味だと主張する私と、塩味だと主張する大ちゃん。口論となったが彼曰く『本場は塩味だ』に押し切られ、白菜、エノキ、人参そしてぶつ切りのカラフトマスに、水と塩そして昆布で一気に炊いた。
素朴な味だが、野菜の甘みと昆布の旨味、そしてカラフトマスから出た出汁が、冷えてきた身体に染みわたる。まるで北の大地が育んだ大地と海の幸の玉手箱や~。因みに後程確認すると、石狩鍋は味噌を入れるのが通常だった。
*カラフトマスのイクラ丼
鍋の締めは半日漬けたイクラを白米に乗せて頂いた。半日も経つと非常にねっとりと口に広がる濃厚なものに仕上がっていた。ただし海岸で取り出したイクラには、無数の小石も混じっており、時折ガリガリという食感がアクセントになったのは、イクラをしっかり洗わなかった大ちゃんの隠し味である。
現場で最高の味を満喫し、残ったカラフトマスの身は東京の自宅へ郵送した。
カラフトマスのメスは卵に栄養が行き、身が美味しくないと言われており、イクラを抜いた身を廃棄される方もいらっしゃると聞いた。私はその身を調理方法で補い美味しく頂こうと目論んでいた。
*カラフトマスの塩鮭
約3%の塩を擦り込み新聞紙に包んで1晩置いた。手前がオス。奥がメスの焼き鮭である。
正直オス・メス双方パサパサの食感。メスだけでなく双方お世辞にも美味しいとは言い難いものであった。
塩鮭をつくり毎朝塩鮭定食を家庭で頂こうという私の目論見は崩れた。
*秋のキノコとカラフトマスのクリームパスタ(メスの身を使用)
キノコとカラフトマスを炒め、塩コショウで味を調える。生クリームを足してソースの出来上がり。パスタにフィットチーネを使用した。
油で炒めた事でパサパサ感を解消。絶品のクリームパスタに仕上がった。
*塩鮭の混ぜご飯(メスの身を使用)
鍋で御飯とキノコを焚き上げ炊きあがった後で骨を丹念に抜きます。その後、骨を抜き取った身と御飯を混ぜ、胡麻と紫蘇を添えて出来上がり。こちらも御飯と焚き上げた際に鮭に充分な水分が染みわたり、パサパサ感は解消。ふわふわの食感が楽しめます。
以上の調理と実食を加味して、調理方法によってはメスの身も充分美味しく頂けることが判った。折角の育まれた命。こちらも工夫して余すことのない様に皆様にも召し上がって頂きたい。
*この記事は2018年9月12日にMonsters Pro Shopに掲載されたリメイク記事になります。