野良金魚を探せ・2022(奈良県・大和郡山市)

野良金魚を探せ・2022(奈良県・大和郡山市)

魚類に留まらず両性爬虫類から昆虫まで探して国内外を旅する 嬉し恥ずかしの51歳。福岡県出身・おうし座。

金魚養殖の聖地である大和郡山市。数年前に養殖場を取り囲む水路に逃げ出した無数の金魚が泳いでいるとSNS等で拡散された。あれから数年後の2022年初夏、あまり聞かなくなった現地の状況を調査すべく東京から6時間かけて現地に向かった。金魚掬いに出掛けるにはかなりの遠方ではあるが、今年は初夏から猛暑。涼しさを演出する企画としては中々良いのではなかろうかと自分に言い聞かせながら‥‥

 

 

金魚資料館

先ずは金魚の事を少しは知らねばなるまい。水路に向かう前に現場近くで見かけた金魚資料館なるところへ足を運ぶ。

なんと入場料は無料。当日の最高気温は38度だが涼し気な金魚たちに癒されて、おまけに金魚の事を知る事ができると言うなんとも有難い資料館だ。因みに施設内にはエアコンはない。

施設内は所々にレトロ感漂う道具も並ぶ。素敵すぎるじゃないか。

うだるような暑さの中、高級金魚に誘われ更に施設奥へと向かう。


金魚の提灯がお出迎え。少々埃をかぶっているが、これもまた一つの風情だな。

 

元々数千年前の中国で鮒の突然変異としてうまれた金魚。中国ではお金を呼び寄せる縁起物としても重宝されたそうな。そんな金魚たちが日本にやって来たのは室町時代。そこから日本独自の改良種もつくられ現在に至る。改良に伴い彼らの身体は丸みを帯び、体色は美しく映える。更に鰭は美しく広がり遊泳力を失う。もはや観賞用として完成され、自然化で生きていくには適さない姿となってしまう。以下、資料館でお目にかかった高級金魚達をいくつか紹介する。その美しい造形美をご覧いただきたい。

 


らんちゅう
卵の様な形からその名前を付けられる。江戸時代に原型が中国より渡来し更に品種改良がなされた。

 


秋錦・しゅうきん
明治時代にオランダ獅子頭とらんちゅうの交配により生まれた。

 

だるま琉金
琉金と比較すると身体が丸みを帯び尾鰭が短い。近年中国より輸入され日本でも養殖されている。

 

魅惑の金魚の世界を覗かせて頂いた。どうやら今年の暑さは少々金魚を眺めたくらいで涼めるような生半可な暑さではないようで、野良金魚捜索以前に大汗をかいたが、僅かな時間ではあったが楽しませていただいた。

 

 

野良金魚捜索開始

さて、いよいよ養殖場脇の水路へ向かうとする。無数の養殖池が並ぶが、養魚池を覗くと驚くほどの数の金魚が泳いでいる。

金魚掬いと言えば夏祭り→盆踊り→涼気な浴衣の美女→美女と楽しい金魚掬いと妄想の無限ループがぐるぐると回りそうだが、今回は炎天下の水路に逃げ出した野良金魚掬い。そんなにあまくはないしワイルドだ。更に養魚場周辺に網を持ってウロウロすれば、属にいう不審者として認定される事は確実である。

 

水路にはドジョウ、モツゴやメダカ等が泳ぐ。

メダカは詳しくないが数種類のメダカが泳いでいるようだ。このメダカたちもメダカの養魚場から逃げ出したものなのか?詳細は不明。

 

水路に沿って歩く事30分。その間『暑い』と嘆く事幾度となく。遂にメダカの群れの先を泳ぐ赤い魚を見つけた。『野良金魚だ!!!』

金魚の方も私に気付いたのか一目散に疾走。『速っ!!!』金魚なのに滅茶苦茶逃げ足が速いぞ。

自然下で一際目立つ彼らは、水路で外敵から逃げきり生き残ったエリート中のエリート金魚のようだ。その遊泳力は妄想で美女との金魚掬いで眺めたものとは姿形は同じでもまるで別物。凄まじい。

金魚を追って走り続ける事さらに30分。ほとばしる汗。やっと4匹の手強い野良金魚達を捕獲するに至った。

金魚の原種であるヒブナ。
色が黒くまばらに入った個体も捕れたぞ。かなり満足。

 



用意した木桶に入れて更に清涼感をあげてみる。皆様少しは涼しくなりましたでしょうか?

 

奈良の野良金魚はここ数年で著しく数を減らしたようだが、梅雨明けで増水した際に幼魚池から僅かに逃げ出している様だ。今回も4匹ではあるが、掬う事が出来た。

ただし、一言付け加えておくと野良金魚は掬った瞬間、『我が家の金魚』に名前を変える。野良金魚はあくまでも人間都合で作り出された姿で厳しい自然下で生き残っているものをいう。

 

元野良金魚達は我が家の玄関先で今も元気に泳いでいるが、彼らが我が家に大金を招き寄せる縁起物になるかどうかは定かではない。

1 / 4