いざ!コモド島へ
2016年9月22日、インドネシア・バリ島まで仕事で訪れていた私は、休日を利用し、デンパサール国際空港から朝8時発のIW 1888便で中継地点であるラブアンバジョへ向かい、最終目的地のコモド島への上陸を目指した。
IW 1888便、冒険旅行には付き物の聞いたことのない航空会社、ライオンエアーで中継地点フローレス島を目指す。
フローレス島に無事到着。何故だか此処にKOMODOとの表記がある。如何にこの地域一帯の経済がコモド島とコモドドラゴンという観光資源で成り立っているかが分かる。
プロペラ機のフライトに怯えながら、何故だかKOMODOと書かれたフローレス島の空港に到着し、車でラブアンバジョの港に向かった。
ラブアンバジョの港。インドネシアは島々の物価差を無くす為、各島の港湾の整備を行い、物流の強化を行っているようで、ラブアンバジョの港も素晴らしい港湾施設であった。
海図の通りFLORES ISLAND からKOMODO ISLANDへ船で向かう。
出港してから幾つもの小さい島々を横目で見ながら、1時間ほど船に揺られたところで、目の前にひときわ大きな島、コモド島が現れた。想像していたよりも大きく、たった1日で、この大きな島の中からコモドドラゴンを探し出すのにいささか不安を感じた。
島に近づいてみると熱帯雨林のジャングルに覆われた島という私の想像とは違い、どちらかというと剥げた山が多く驚かされた。
船はゆっくりと旋回し、砂浜に突き出た小さな船着き場に静かに横付けする。いよいよ上陸である。
船着き場から島に伸びたウッドデッキを渡りながら、期待と緊張が高まった。
船着き場から伸びた美しいウッドデッキ。突き当りにはコモドドラゴンのレリーフが飾ってある。
コモドドラゴンとは
上陸してコモドドラゴンにいつ遭遇するかも判らない。此処でコモドドラゴンに対してのおさらいを簡単にしておこうと思う。
コモドドラゴン(Varanus komodoensis)という名が定着しているが、コモドオオトカゲとも呼ばれており、全長2m~3m程まで成長し体重は70㎏程にもなる。
以前より毒はなく、口内に多くの腐敗菌を保有し、噛みつかれた獲物は敗血症を発症し1週間ほどで致死するとされてきた。
しかし、最近の研究では、腐敗菌以外にも、ヘモトキシンという血液の凝固を妨げる毒も保有している説が有力となっている。つまり、簡単に言うと巨大・細菌・毒トカゲという最恐の爬虫類と言う事になる。
上陸
護身用というには心もとない棒。果たしてこの棒でコモドドラゴンの突進を止められのであろうか?
ウッドデッキを渡り切ったところに管理事務所が置かれており、その壁には護身用と思われる棒がいくつも立て掛けられていた。そして、気付けばいつの間にか私もその棒を一本握りしめていた。
先ずは高台を目指して出発。そして歩き出して15分もした頃だったろうか、目の前の林の中に物影が動いた。
鹿の親子。あまり人間を恐れていないようで、近づいても逃げる様子はなかった。
更に山の奥に入ったところで目の前を素早く横切る鳥を見かけた。更に山の奥に入ったところで目の前を素早く横切る鳥を見かけた。ガイド曰く野生のニワトリだと....つまりワイルドチキンである。
鹿やワイルドチキンもコモドドラゴンの餌にしか過ぎない。そんなことを考えながら、歩みを進めるとガイドが一つの塚を指さした。
その塚から更に10分程歩いただろうか、一匹の鹿を見つけた。
その鹿の歩みは遅く、我々がかなり接近しても、逃げようとはしなかった。毛は抜け落ち、体に薄っすら血がうっ血したような様子。
そして気付いた。首元には噛み跡がある。
『あっ!』思わず叫んだ。
遭遇
コモドドラゴンは獲物を噛んで細菌&毒を獲物にぶち込み、その獲物が弱って倒れるまで追い回す。
つまり、いよいよ、コモドドラゴンは近くに居る!!
静かにそして慎重に辺りを見回した。
ゆったりと大木のように横たわるコモドドラゴンが遂に奧の茂みに現れた!!!
遂にコモドドラゴンと遭遇。その大きさに驚愕する。
かなりの巨体2m50cm程はあるだろうか。
前足。爪の鋭さも最驚レベル
後ろ足。同じく最驚レベルの鋭い爪。
恐々、可能な限り近づいてみる。1m圏内まで近づいただろうか、コモドドラゴンが舌を出し始めた。どうやら威嚇体制らしい。
一通りの観察と撮影を行い、また、棒を盾にしながらコモドドラゴンに接近した。触ることは危険だが、どうしても、どうしても、持っていた棒で突いてみたいとの衝動にかられた。
そして、軽く突いた。
その瞬間、ガイドが驚くほど大きな声で『危ない!!(danger!!)』と叫んだ。
その声に仰天した私は、猛ダッシュで逃げた。後ろに迫ってくる気配を感じながら必死に……
気付けば追ってきたのはコモドドラゴンではなく、怒り狂ったガイドであった。
そして、こっ酷くガイドに叱られ、その場を後にした。
その後、山頂を過ぎ、そして下山をしたが、その間は全くコモドドラゴンの痕跡さえも観れなかった。
山を下りきるとそこには美しい海岸が広がっていた。管理事務所まであと少しの距離だ。今回は一匹だけだったと。少し残念に思い海岸を見回してみた。
すると….
そこには方々に6匹のコモドドラゴンたちが群れていた。まさにそこは最恐トカゲの住む島KOMODO ISLANDであった。
最初に見た個体よりもさらに大きな3m程のコモドドラゴン
海岸沿いに悠遊とたたずむコモドドラゴンたち
コモドドラゴンの群に遭遇し感動も最高潮。最高のエンディングを迎えた。
しかし、その群れのいた場所から最初にスタートした管理事務所までの距離は30m程。
つまり、スタート地点から容易く見える距離だったのである。勿論、ガイドもこのコモドドラゴンの群の存在を最初から知っていたようだった。
私は疑問に思いガイドに尋ねた。
『なぜ、海岸にコモドドラゴンの群が居るのを知って山を2時間も歩いたの?海岸から回れば良かったのに。』
ガイドはそれに対して胸を張って答えた
『これは冒険旅行だ(that is adventure !!)』
コモド島は野生のコモドドラゴンと人間の観光という経済活動が共存共栄するエキサイティングな島であったことは間違いない。
*この記事は2016年10月1日にMonsters Pro Shopに掲載されたリメイク記事になります。