日本海 ヤマトイワナ 太平洋 瀬戸内

想定外のイワナと出会えた源流2泊3日の山籠もり(イワナの世界へようこそvol.10)

初めての1匹との出会いに最も価値を置き、世界中何処へでも行く怪魚ハンター山根ブラザーズの兄。釣りや採集だけでなく漁業者や研究者と協力してまでも、まだ見ぬ生き物を追い求めてフィールドに立つ。 テレビ東京・緊急SOS池の水全部抜く大作戦やNHK・ダーウィンが来た、TBS・VSリアルガチ危険生物などに出演したり、魚類生態調査に参加したりと幅広く活動中。

もう二度とこんな藪漕ぎはしない
こんな辛いとは思っていなかった
いつも同じ愚痴ばかり言っている
ケド、気付けばまた藪の中にいる

 



山釣りの楽しさは世界共通

ジャングル泊 テント泊 山釣りメコンオオナマズ漁 野営 船上泊山釣り 料理 テント キャンプテント泊 山釣り 源流泊状況によってはロッジで快適に過ごすこともあるが、猛烈に不便な野営が性に合っている。
寝床を整地し、シートを張って、薪を集める。
川の水で米を炊き、釣った魚を主菜にエネルギーを補給する。
そんな非日常的な魚釣りなんてさ、熱帯雨林でしか体験できないと思いきや、日本の山でもそこそこ楽しめる。

 

 

 

山釣りの撮影は体力勝負

源流釣り イワナ釣り テント泊以前、赤イワナの記事で登場した片山氏、そしてベッコウゾイの記事で登場したマサと釣り竿のPVを撮影するために23日の源流釣行に出掛けることになった。
ブレコ読者の方ならお分かりだろうが、対象魚はイワナである。
演者は片山氏と僕。マサはディレクター兼カメラマンだ。
マサが提示した動画のコンセプトは“源流泊で楽しむイワナ釣り”。
『兄貴が好きな変わったイワナは釣れなくても良いけど、水中映像を撮りやすい流れと魚の量が多い場所が良い』とのこと。
片山氏の要望は、『美味しいご飯を食べられる沢ならどこでもOK』らしい。
僕の希望は、3人とも初めての沢に行きたいことだった。

 



情報の無い釣り場と知名度満点な釣り場

源流釣り 雪渓 敗退実は、このメンバーでの撮影は今年2度目。
1度目のロケは、僕の希望により情報が乏しい川を撮影地に選んだために散々たる結果となってしまった。
恥ずかしくて書きたくないが、ブレコ読者の方は口が堅いと思うので手短に説明しよう。
藪漕ぎを経て入渓すると、泳いでいる魚はなんとウグイ……。
標高が変わればイワナが出るはずと士気を上げ、ゴーロ帯をへつったり、泳いだりするも雪渓の連続となり竿を振ることなく敗退した。
そんな失敗を経て、二度目の撮影地にはイワナ釣りで比較的知名度と実績がありそうな場所を選択した。
つまり、二度も失敗できない僕は自分の好奇心よりも撮れ高を優先したのだ。

 



沢通しよりも藪漕ぎの方が楽と判断するも…

イワナ 藪漕ぎ 源流 沢登り食材と幕営機材の担当は片山氏と僕だ。
14合、トウモロコシ、ジャガイモ、枝豆、素麺、調味料各種と調理器具。ご想像どおり2人のザックはメチャクチャ重たくなっていた。
防水性能を重視し、背負いにくいドライバックにドローンやカメラなど撮影機材をコンパクトにまとめてくれていたマサは、インスタント食材を一切用意しない2人に呆れ果てていたのは言うまでも無い。
15kg以上ある重たいザックを背負いながら沢通しで源流域を目指す気にはなれず、山中を歩くことになった。
車を降りて藪に突っかけてみたのだが、背丈を遥かに超える藪の中では全然ペースが上がらない。
体力自慢のマサを先頭に3人がピッタリ連なり本格的な藪漕ぎ体制を取った。

 



沢山のイワナ達。でも様子がおかしい

イワナ テント泊 源流釣りイワナ飯 テント 源流泊 釣り焚火 源流釣り テント イワナもう二度と藪漕ぎが必要な沢には来ない!なんて決まり文句を言い合いながら、過酷な藪漕ぎを経て目的の沢に到着すると、早速イワナの姿が確認できた。
イワナの魚影は濃そうだが、やはり泊り込みでの入渓者が多い川のようで焚火の後も見受けられた。
使用済みのテン場は使いたくないので、遡行しながら適地を探してみると、丁度3人横並びになれそうな砂地が見えてきた。
重たいザックを下ろし、シートを張って寝床を作り、テン場の周りで釣りを始めてみたのだが、イワナは沢山いるのに動きが鈍い。
さっきから感じてはいたのだが、沢の水温がやけに高いのだ。
結局、ルアーで釣ることができず、餌を使ってなんとか姿を見ることができた。
野営地に戻り、片山料理人の作る、最高の晩御飯を頬張りながら明日の作戦会議を行った。




 

撮影二日目、別の川へ

藪漕ぎ イワナ探し 源流初日の釣果があまりにも悪かったので、二日目は尾根を越えた先にある別の川を速力の出る軽身で目指すことにした。
尾根越えは初日と同様に猛烈な藪漕ぎとなり、曇り時々雨という薄暗い天候も相まって、もはやiPhone無しでは方角すら分からなくなるレベルだった。
沢に降りて水温を感じてみると温くはない。コレは期待できそうだと3人ではしゃぎながら準備を整える。
試しにミノーを泳がしてみるとすぐに良型がヒットしてきた。グネグネと身をくねらせて抵抗するイワナの姿がハッキリと見えて、自分の視野がギュッと狭くなるのを感じた。
陸地に抜き上げようとした瞬間……。針が外れてしまった。

 


まさか。こんなところにヤマトイワナが……

ヤマトイワナ 源流 ニッコウイワナイワナの模様がハッキリと見えていただけに、竿を投げて素手で捕まえに掛かる。
僕にとって絶対に逃がしたくない魚だったのだが……。
浅瀬でパニックになっているイワナを掴むも、ツルンと滑って取り逃がしてしまった。
信じがたいが、今の魚は明らかにヤマトイワナに見えた。
見間違えか?いや、そんなはずはない。
ケド、こんな場所にヤマトイワナがいるはずも無い。
まさか、今回の釣行で白斑の有無に一喜一憂することになろうとは。次にヒットするイワナが楽しみで仕方なかった。

 




噂には聞いていたが、まさか出会うことになるとは

相模川 ニッコウイワナ画像は相模川産のニッコウイワナとブレコネット

記事はコチラ
相模川に棲む白斑の無いイワナを求めて(イワナの世界へようこそ Vol.6)

BRECOLランディングネットはコチラ


今年、相模川で身を持って経験していたし、白斑を持たないイワナが釣れる沢は他にもあると噂には聞いたことがあった。
相模川では自分なりに目的を持って出会えたイワナだったが、今回はそんなつもりも期待も皆無だった。
綺麗渓相で源流泊を楽しみながらイワナを釣る動画を撮りにきたはずが、もしかしたらとんでもない沢に巡り合ってしまったのかもしれない。
写真すら撮っていないのに、自分好みの沢を見つけた時に感じる独特な満足感に浸っていた。つまり、些か有頂天な気分になっていた訳だ。
ところが、その後ヒットしたりチェイスしたりしてくれたイワナには白斑が見えた。
この2尾のイワナも釣り上げられなかったのだが、さっき捕まえ損ねた個体が特殊だったことが明々白々となり、有頂天な気分が一転して、猛烈な喪失感に変わっていく。
あの個体。絶対に釣っとかなあかん奴だった。

 



1匹だけじゃなかった

日本海ヤマト 太平洋ヤマト 瀬戸内ヤマト3連バラシをした場所から少し遡行したポイントでまたしても真っ黄色なイワナが掛かってきた。
今度は抜き上げず大切にネットで掬った。そして……。
魚体を確認して手が震えはじめた。白斑を全く持たないイワナなのだ。
大興奮で大はしゃぎする僕に片山氏は『何が凄いか解説してー』と言うので、ニッコウイワナとヤマトイワナの一般的な外見と生息域について簡単に説明した。
マサはというと、『初めて見るヤマトイワナが棲息域外になったわー』とゲラゲラ笑っていた。
このイワナがヤマトイワナなのか、ニッコウイワナなのか。そんなこと、僕らには分からないのだけど、白斑の有無という分かりやすい特徴に一喜一憂するのもイワナ釣りの醍醐味だったりする。

  

 

 

白斑の量は個体差あり

日本海 ヤマトイワナ 太平洋 瀬戸内日本海 ヤマトイワナ 太平洋 瀬戸内北陸 日本海 ヤマトイワナ一頻り撮影を終えて、先行者を片山氏と交代する。
今回は実釣時間が短く、沢山の個体を釣って確認できた訳ではないが、この沢のイワナの白斑の量は個体差があるようだった。
感覚的には、サイズが大きい個体程、白斑が少ないor無い印象を受けたが、如何せん実釣時間も釣果も少なく何とも言えない。
おいそれと来られる場所ではないが、また機会を作って再訪することになるだろうなと感じさせられる美しい川だった。

 




藪の中でもイワナを発見

エゾイワナ 本州 東北野営地を構えた川に戻る途中、藪の中の小さな沢筋を頼りに歩いていると、先頭を歩いていたマサが『魚がおる!』と言い出した。
ほとんど水のないこんな場所だからこそ、どんなイワナがいるのだろうと期待して、提灯釣りで狙ってみると1匹だけイワナを釣ることができた。
時間も押していたので深くは探釣せずに竿を仕舞ったので1匹しか見られなかったが再訪する理由付けとしては程良かったかもしれない。
因みに僕の価値観は今、“白斑が無いから凄い”とか、“白斑があるから悪い”とか。イワナの世界ってそんな単純な話しじゃないかもしれん……ってことに気が付き始めている段階だ。

 



今日の沢とイワナ達に乾杯

イワナ テント泊 源流泊源流泊 星空 イワナ釣りイワナ釣り テント泊 源流泊こうして家に帰ってきて文章を書いていると、時間をかけて再訪したい気持ちも勿論あるが、やっぱり次は違う山に行ってみたいという気持ちの方が強くなる。
自分の価値観に見合った成果を得られた今回のような釣行の後は特にね。
言わずもがな、藪漕ぎの辛さなんてとうに忘れている。

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