今から遡ること20年以上前。石垣島のとある民家で飼われていたグリーンイグアナ20匹程が小屋から逃げ出した。
その後、温暖な気候の中で環境適応した彼らは繁殖を繰り返し、そして爆発的に数を増やした。
現在、希少な在来種への影響などが危惧され、駆除活動など継続されている様だが、依然個体数の減少とは至ってなさそうだ。
2019年12月。グリーンイグアナの実態を把握し、捕獲&駆除活動へ参加すべく石垣島へと向かった。
グリーンイグアナとは
グリーンイグアナはイグアナ亜科の一種。イグアナ亜科は想像より多くの種で構成されている。
ツナギトゲオイグアナ(Ctenosaura similis)
スベヒタイヘルメットイグアナ(Corytophanes cristatus)
そんな数多くのイグアナの種類の中でも、最も人気のあるはグリーンイグアナ。
その人気は某大御所タレントのイグアナ芸を凌ぐとさえ言われているとか。
本来の生息地は中米から南米に渡りかなり広い範囲で、熱帯雨林を好んで生息している。
樹上性が強く、最大で180㎝まで成長する。
食性は、基本的に植物や果実を好むが、幼体時は昆虫なども好んで食べるとされる。
グリーンイグアナを探す。
先ずは、初日は生息地の確認。
海岸線から少し内陸に入った丘陵地から双眼鏡で彼らを探す。
海岸には、アダンの木が生茂りアダンの森といった様相だ。このエリアに住むグリーンイグアナ達は、以前はビーチや民家の屋根で日光浴を楽しんでいたようだが、ここ数年続く駆除活動や採取圧の影響で、住処を背丈の高い樹木やアダンの茂みの中へと移しており捕獲は非常に難しいものとなっている。
グリーンイグアナは非常に賢く、警戒心が強い。
海岸沿いに頻繁に見掛けるイソヒヨドリ。グリーンイグアナを見つけるべく、隈なく丘から見える範囲を探していく。
1時間程探したであろうか、遠くに見えるアダンの木に違和感。何度もその木は眺めていたつもりだったが、グリーンイグアナの素晴らしい保護色で見落としていたようだ。
彼等の体色は鮮やかな緑や茶色。通常は目立ちそうなものだが、生茂った木々に動かずにいると探しだすのはかなり厄介だ。
無事初日の偵察も終わり翌日を迎える。今回の駆除活動に参加したのは精鋭6名と足手まといの私。
的確にグリーンイグアナの居場所を特定するため、クレーン車まで投入した。まさに不退転の覚悟で臨む捕獲劇の開始である。
先ずは、クレーン車に乗ったリーダーがグリーンイグアナの場所を的確に把握、残りの精鋭達と私を無線で誘導する。
アダンの森へ突撃していく訳だが、アダンの葉は鋭い棘を有しており、その棘が我々の行く手を阻む。
傷だらけになりながらも、やっとの事でグリーンイグアナがくつろぐアダンの木の下へ到達した。網を木の下に張り巡らせ、木の上のイグアナを払い落とす。
木から落下したグリーンイグアナは必死に逃げまどうが、精鋭の一人に取り押さえられ万事休すとなった。
その後も同じ要領で2匹を追加。クレーン車と精鋭たちの大活躍であっという間に3匹のグリーンイグアナの雄を捕獲に至った。
中でも3匹目の雄は非常に立派で、180㎝に迫る超大型個体であった。あたかも自分で捕ったかの様に写真に納まったが、私はあくまでも足手まとい。精鋭達とクレーン車の功績が99.7%である。
グリーンイグアナの細部
この度も男運にまみれ、女運には全く恵まれないという私の人生の縮図のような 雄のみの捕獲劇とあいなった。しかしながら、捕まえた三匹を細かく観察してみる事とする。
頭部は大きな鱗で覆われている。まさに太古の恐竜を彷彿させる顔立ち。
また、グリーンイグアナには三つの目が存在する。頭部中央に観られる透明の円状のもの(赤丸)がそれであり、頭頂眼と呼ばれる。頭頂眼は光や方向を感知することに役立つ。
喉元には大きなコブが見受けられる。これは鼓膜下大型鱗と呼ばれ、雄が特に発達しており威嚇行為に役立っているようだ。またコブの上部に観られる小さな円は鼓膜。所謂、耳である。
喉元のデューラップという袋状の器官。こちらも雄に発達する器官で、発情時や威嚇する際に広げることにより活躍する。
頭部後方から首元に観られるビスの様な鱗。
首元から尾の先まで生えるクレストと呼ばれるたてがみの様な器官。尾に近づくにつれクレストは小さく硬く、そして鋭利になる。
前足。爪は樹上性に役立つ鋭さを持つ。
後ろ足。前足同様で指は5本。
グリーンイグアナを食べてみる。
もともと中米では『森の鶏肉』と称され、食用にもされるグリーンイグアナ。石垣島の通常の駆除では、ほとんどが無駄に殺してしまうと言う事で、今回は有難く頂く事にした。
皮は非常にむきやすく、解体はスムーズに進んだ。中から現れたのは美しい赤身。臭いは殆どなく食べやすそうだ。
先ずは外来種料理の定番から揚げ。ニンニク醤油に一晩漬けて頂く。食感は鶏肉。癖がなく非常に食べやすく旨味も強い。
続いては尾の部位を使ったテールスープ。4時間程煮込んだ。最高の出汁が出て美味い。
続いてはもつ煮。脂も染み出て濃厚だ。睾丸の歯ごたえが印象的な珍味だ。
炭火焼き。宮崎地鶏の炭火焼き風にアレンジ。ニンニクとの相性が非常に良い。
最後はモモ肉のロースト。旨味がしっかりと濃縮された一品にかぶりついた。
総じてグリーンイグアナは非常に優秀な食材で、後味に微かに香る草木の匂いが特徴的な美味しいお肉でした。
石垣島のグリーンイグアナ達。
警戒心の強い彼らは、年々人目の触れない場所にその生息場所を移し、生き続けている。確かに駆除は可愛そうだが、近年では彼らの体内の寄生虫も問題視されており、石垣島独自の生態系へ及ぼす影響も少なくないとされている。
せめて飼育している方は最期まで責任をもって飼っていただきたいものです。