怪魚とは、価値観によって『ターゲット』になるのか『外道』なのか見解が大きく異なるし、魚の扱いも天と地ほどの差がある。
今回、僕たちが釣り狙った魚たちを読者の方はどちらと捉えるのだろうか。
大学時代からの友人と軟骨魚類を追うことに
北海道の旅で久しぶりに大学時代からの怪魚釣り友達である“ペスカトーレ中西”と一晩を共にした。
数年ぶりに中西くんと生き物を捕まえる時間がとても楽しくて、近いうちにまた一緒に釣りをしようって話しになり、水温下降期でも比較的餌に食いつきやすい軟骨魚類をターゲットにすることになった。
それにしても、たった数時間の夜釣りで次から次へと僕の釣ったことのない魚や生き物と出会わせてくれた中西くんは、昔と何ら変わっていなくて、どこか嬉しかった。
軟骨魚類界のレア魚“サカタザメ”を狙う
今回の釣行の大本命はまるで楽器のギターのような形をしていることから『ギターフィッシュ』とも呼ばれるサカタザメだ。
見るからに特徴的な魚が好きということは、怪魚好きの共通点といっても過言ではないだろう。
初めてのイッピキを求める人って、釣り好き以前に生き物好きなのだが、言わずもがな中西くんもその一人だ。
サメとエイの違いとは
サカタザメは名前にサメとついているものの、厳密にはエイの仲間だ。
因みに、エイとサメは鰓孔(えらあな/さいこう)の位置で見分けることができる。
体側に鰓孔があればサメ、裏側にあればエイといった具合だ。
サカタザメを狂ったように狙った時代
軟骨魚類が釣りたくて色んな場所でブッコミ釣りをしまくっていた時代がある。
ネコザメから始まり、ウチワザメ、ヒラタエイ、シロザメ、ドチザメ、シビレエイ…他にも幾種か釣ってきた。
中でもとりわけ苦戦したのがサカタザメだった。
もう釣れないんだったら、潜って探そうと思い、サカタザメ狙いのファンダイビングまでやった。
結果、大きく課金しても出会えず。
激レアだと思っていたシビレエイは釣りでもダイビングでも出会えたのに、サカタザメとは相性が悪いってことだと開き直ったりもした。
ヒトデ釣り時々、太いアナゴ。
ダイビングの際に、インストラクターの方に教えてもらったサカタザメが出没する環境や時期を僕なりにかみ砕き、色んな軟骨魚類を釣った実績場に通うのをやめて、全然違う場所へ行ってみることにした。
砂地に突き出した堤防で30分置きに掛かってくるヒトデを外す作業をしながら、待つ事7時間。
ようやく、僕はサカタザメを釣り上げることができた。
実釣回数1回でも遠征するんですか?!
僕は1魚種1匹で満足するタイプの人間だ。サカタザメの他に、ヒトデと大き目のアナゴくらいしか、魚が釣れなかった堤防にその後、通うことは無かった。なんなら、サカタザメが釣れた瞬間に寒すぎて帰った。
つまり、『まぐれで釣れたのか、再現性があるポイントなのか、分かりませんケド…。それでも良いの?』
そう、中西くんに伝えたのだが、『釣れなくっても構わん!サカタザメが釣れた場所に一緒にかちこんで欲しい!』ってことで、前置きが長くなったがこれが今回の釣行のキッカケだ。
僕的に釣れる確率は60%ってとこ
とは言え、わざわざ遠征するには実績が少なすぎる。一回り前の潮で下見しようかなって思ったが、せっかくなら再現性を確認するっていうドキドキ感を中西君と一緒に味わいたいなと思って敢えて下見は控えた。忙しかったのもあるが…。
まぁー釣れなくても、1匹釣れた実績がある砂地の環境を把握してもらうことで、別の地域でサカタザメを探すヒントにもなるし。サカタザメがダメならホシザメにスイッチするということでサカタザメ釣りが始まった。
冬の風が吹き荒れる厳しい夜
夕方から爆風の予報が出ていたが、風裏の地域だから大丈夫と思いきや、背後からもの凄い風が吹き抜け、堤防から落ちそうになるくらいだ。
沢山の釣り人がいる中で、数年前にサカタザメを釣った場所だけ釣り座が空いていた。
ゲテモノ…いや、怪魚が良く釣れる場所は、一等地ではないってことは良くあることだ。
陽が沈むまでは、五目釣りを楽しみ夜釣りに備えた。
開始僅か1時間、サカタザメ現る
釣り場の地形と水深、サカタザメがヒットした距離を中西くんに伝え、3本の竿を出して待つこと1時間。幸先良く鈴が鳴り、回収開始!
何やら、首を振りながらの重たそうな引き…。そして、海面に姿を現したのは大本命のサカタザメ!
2人でウォー!ウォー!と叫び合いながら、タモで掬い上げハイタッチからのハグ!
周りの釣り人たちが何事かと駆け付け、網を覗きこみ『あっサメですかw』と辛辣だけど定番の一言をかけてくれた。
僕らの価値観にとってはメモリアルな怪魚なので、気にせず喜びをぶち上げさせていただく。
ホシザメもあっさりと釣れた
ピントを合わせ辛い中西くんのカメラで爆風に煽られるサカタザメの写真を頑張って撮っていると、別の竿が引き込まれた。
ドチザメかなーって想像しながら回収を見守っていると、何と第二ターゲットのホシザメだ!
再び、ウォーウォーと叫びながらネットイン。さすがに2度目は誰も僕らの釣り上げた魚を見に来なかった。
ダイナンウミヘビ、アカエイ、そしてサカタザメ
今回の遠征で中西くんが釣りたかった魚が2種類釣れてくれたところで、僕も仕掛けを良い場所にブッコんでみた。
すると、すぐにアタリ!上がってきたのは、強烈に長いダイナンウミヘビだった。
ウミヘビと戯れていると、中西くんの竿にアタリ!上がってきたのは、なんと2匹目のサカタザメだ!
2匹目のサカタザメが釣れたことで、このポイントがサカタザメを狙うのに好条件な場所ということが僕ら2人の共通認識となる。
僕も久しぶりにサカタザメを釣りたいッ!と意気込むが、掛かってきたのはアカエイだった。
何はともあれ、サカタザメの再現性を確認できて大満足の一夜となった。
2晩目はのんびりとブッコミ釣り
サカタザメとホシザメが釣れたことで大きな目標を失った僕たちは、2晩目は違う漁港で特に狙いを定めずにブッコミをかけることに。
サカタザメとホシザメが釣れたのだから、次はカスザメとか出るんじゃね?!なんて希望に満ち溢れた会話をしながら仕掛けを作る。
中西くんはじめ、友人知人の怪魚ハンターたちが釣り上げてきたカスザメを僕はまだ釣ったことが無いのだ。
いつも通り死に餌で釣りをしていると、ご親切なお隣の釣り人がもう帰るからと言って、活き餌を分けてくれた。
マゴチやヒラメ、運が良ければハタが釣れるらしい。死に餌だとエイやらウミヘビばっかりになるぞとご忠告までいただけた。
言わんこっちゃないとばかりに、僕が仕掛けをあげるとホタテウミヘビが掛かっていた。
憧れのカスザメ現れる
潮変わりのタイミングで、僕の竿にアタリが出たので竿を煽るとそこそこ重たい!
小さなエイが掛かったかと思いながら海面を滑らせてくると、何やらパカパカッとエラ洗いをした。
と、同時に中西くんが大声で『カスザメじゃーー!』と叫び出す。
みたび、2人でウォー!ウォー!と叫びながら無事に釣り上げることができた。
普通はルアーで狙う魚なのだが、まさかブッコミ釣りで釣れるとは。驚きを隠せなかった。
特大サイズのネコザメで遠征終了
カスザメの一件で心が満たされた僕たち2人は、いつ納竿しても良いと感じながらも何となく惰性で釣りを続けていた。
サカタザメ、ホシザメ、カスザメ、日中にも色々と初物を釣っていたので、成果の大渋滞だったが、締めの一発が中西くんの竿にヒットした。
とんでもない重量感との戦いの末に上がってきたのはネコザメだ!それも余裕で1メートルを超す結構なサイズ。
言わずもがな、大はしゃぎしながらのランディングとなった。
1つの成果と引き換えに、1つの目標を失う。それが僕らの釣り
今回は冬の怪魚釣りをお届けした。釣れた魚たちは一般的には『外道』と言い捨てられる魚たちばかりだが、釣ったことがない『初めてのイッピキ』は僕らのような釣り人にとって輝かしいターゲットになる。
初めてのイッピキを求めるアングラー同士の釣り旅はやっぱり楽しいし心地良い!そう再確認できた2晩であった。