コスタリカのジャングル。夕闇が訪れるとともに大粒の雨が降り注ぎ、美しい草木と生命の息吹に潤いを与える。この美しくも厳しいジャングルで生き抜く為、毒を持つもの、走る事や木に登ることに長けたもの、そして保護色を駆使するもの、様々に進化を遂げた生き物達。
今回は身体を透かすことに進化したグラスフロッグ達の世界をお届けする。何故彼らがそのように進化したのかは依然不明な点が多い様だが、究極の保護色を手に入れて言う事だけは間違いない。
その美しさと可愛さを是非ご覧いただきたい。
グラスフロッグとは
中南米に多く生息するアマガエルモドキ科のグループに分類されるカエルで150種以上が確認されている。大きさは2㎝～4㎝と小型。目が他のカエルと比較すると前方に位置している事も特徴的。
ほとんどの種の体表はライムグリーンがベースカラーで腹部が透明もしくは半透明であり、心臓・肝臓・及び消化器官等が腹部の皮膚を透して観る事ができる。また、特に彼らが睡眠をとっている際は透明度が低い赤血球の多くを肝臓に集約することにより体表の透明度は更に上がるとの研究結果が発表されている。
樹上性が強く、産卵期以外は樹木の高所に生息するが、産卵期になると低地の水辺に突き出た葉の裏などに産卵を行う。オスが卵の側に暫くの間、残り、外敵の寄生ハエや蜂、そして乾燥から卵を守る事も知られている。
コスタリカのグラスフロッグ達
今回のコスタリカの旅も佳境を迎え、夜間のカエル探しに雨に打たれるのもすっかり恒例となり、汗と泥を洗い流してくれる大粒の雨にも心地よささえ感じる程。何よりも雨が降ればカエル達の活性も高く、ジャングルに木霊する雨音とカエル達の声が私をジャングルの奥へ奥へと誘ってくれる。
お陰で自然下の貴重なグラスフロックにも逢うことができ大満足な遠征を締めくくった。下記に今回会うことができたグラスフロッグ5種をご紹介させていただく事としよう。
Emerald glass frog（Espadarana prosoblepon）
エメラルドグラスフロッグ。エクアドル、パナマ、コロンビア、ニカラグア、ホンジュラスそしてコスタリカに生息する。大きさは2㎝～3㎝程。他のグラスフロッグと比較すると色彩に富み、黒や黄色の強い個体群も観られる。
コスタリカの一部で個体数が著しく減少したケースが報告されたが、現在他の地域では安定している。しかしながら、他のカエル達と同様で森林破壊、皮膚や呼吸器系の組織を破壊するツボカビ菌などの脅威などに晒されており予断を許さない状況だ。
Dwarf glass frog (Teratohyla spinosa)
ドワーフグラスフロッグ。コスタリカで観られるグラスフロッグの中で最小種である。生息域はエメラルドグラスフロッグと同様。
Cascade glass frog（Sachatamia albomaculata）
体表の黄色い斑点で他のグラスフロッグと区別しやすい。他のグラスフロッグ同様で骨格は緑色をしており透き通った身体が一層に葉などに溶け込みやすいようになっている。
Ghost glass frog (Sachatamia ilex)
別名リモンジャイアントグラスフロッグ。中米最大種のグラスフロッグである。目は銀色で黒い網目模様がある。
Reticulated glass frog（Hyalinobatrachium valerioi）
体表に黄色と黒の斑紋が観られる。これは彼らが羽の裏に産み付ける卵塊に似せたもので、外敵などから卵塊を守る為のもの。なんとも健気な体色となる。大きさは2㎝～3㎝程の小型種で腹部の透明度は他のグラスフロッグと比較しても透け感が強い。消化器官や心臓は白い内層で覆われているが黄色く見えるのは胆嚢、赤い静脈も観られる。骨格は白。
透明感のある女性が好きという男性も少なくないが、グラスフロッグは更にその上を行く透明感。いや。透明です。全国の透明感愛好家の貴方が何度もこの記事を読んでくれることを祈りつつジャングルを後にする事としよう。
