ゴライアスグルーパーとは
スズキ目・ハタ科・マハタ属に属する魚。アメリカのフロリダ州・メキシコ・バハマ・カリブ海・ブラジル周辺の熱帯海域を中心に生息する。日本に生息するタマカイとは別種である。寿命は50年ほどで、体長約2.5m、体重約360Kgにまで成長する巨大魚として知られる。一時期は絶滅寸前まで数を減らしたこの魚、最近は手厚い保護により、僅かではあるが個体数を増やしつつあるという。
ゴライアスグルーパー釣行記・初日
婚前20年前から嫁の希望であった、本場のディズニーワールドへ立ち寄る。2日間歩き詰めで楽しんだのち、体力の限界が近づいている状態の中、我々はフロリダへ向った。フロリダ州の小さく、そして、美しい街、エングルウッドに到着したのは、既に深夜1時を回った頃だった。到着後、殆ど睡眠をとることもなく、翌朝4時にはガイドのケリーに連れられて港に向かう事となる。
小さな港ではあったが、映画に出てくるような美しい港で整然と船が並んでおり、湾内にはマナティが現れることもあるという。
今回は全てレンタルタックルという話になっており、僕らは手ぶらで船に乗り込んだ。先ずはゴライアスグルーパーの餌に使うエイを、ボウフィッシングで確保した後に、ポイントに向かうという。ケリーの指示の通り、船は暫く走り、小さな島が連なる浅瀬に到着した。非常に澄んだ海で、海底までしっかり視通すことができる。初めてのボウフィッシングに躊躇いながらも、ゆっくりと船を流し、エイを探した。
私もなんとか1匹のエイを射抜くことができ、1時間程経った頃には、ボートの生け簀には2匹の小型のエイと、1匹の大きなエイが入っていた。ゴライアスグルーパーを釣る為の餌としては十分のようで、いよいよゴライアスグルーパーのポイントへと船は向かった。
僅か15分程走るとポイントに到着。そこは海岸から数百メートルしか離れておらず、桟橋が崩れたのであろうか、無数の木の柱が海から突き出た場所であった。水深は僅か10m程だろか。
先ずは、私が竿を握った。600LBのナイロンラインがpenn international v70vsのリールに巻かれており針は20/0のサークルルフックの中通し仕掛け。
このフックに、先程の小型のエイを掛け海底に落とした。
着底したかと思った瞬間、竿から私の全身に強烈な衝撃が伝わる。嫁の前で、少々格好良いところをみせようかと企んでいたが、あまりに突然のバイトと引きに全身を引っ張られ、格好悪く前のめりになる。
必死の形相で何とか踏みとどまり、強烈な重みと時折みせる衝撃的な引き込みに耐えながら、必死に引き上げた。水深が10m程であったことがせめてもの救い、数分後には海面に巨体が現れた。
推定100㎏のゴライアスグルーパーであった。
次は嫁の出番だ。私の苦行を観ていた筈だが、予想に反して張りきっている。私は確信した。女性とは巨大魚より遥かにたくましい….
私の確信は直ぐに現実のものとなる。嫁の投入したエイも再び瞬時に引き込まれたが、息を切らして必死に竿にしがみつき、リールを巻き上げていた。
数分後…なんと推定250㎏の巨大なゴライアスグルーパーを引っ張り上げた。今年一番のサイズに、ガイドのケリーも私も興奮し驚愕した。嫁は静かに出産より楽だったと呟いた。
今回のポイントは浅いとはいえ、巨大なサメも目撃されており、入水して写真を撮るのは危険。ゆっくりと海岸際までゴライアスグルーパーを誘導し撮影を行った。
嫁は千載一遇のチャンスをものにし、嫉妬の化身の様な顔の私を尻目に満面の笑みで写真におさまった。
この後、嫁はあまりの奮闘に放心状態に陥り、再起不能となる。
その後、一番大きなエイを4つに切り分けて60㎏~100㎏ほどのゴライアスグルーパーを3匹引き上げたが、私もこの日の体力は全て使い切り、納竿となった。
ゴライアスグルーパー釣行記・最終日
ゴライアスグルーパーのポイントから僅か300m程沖合ではターポン、サメが水面に鰭を躍らせる。多くの釣り人もターポンを狙って船を出していた。勿論我々もターポンを狙う事も可能であった。しかし、嫁に負けたままで収まりもつかず、引き続き再起不能の嫁をしり目にゴライアスグルーパーを狙う事を選択した。
この日もエイ4匹を早々に確保し、昨日のポイントへと向かった。早速、1匹目の100㎏ほどのゴライアスグルーパーが現れ、私の体力を奪いさった。
続いて第2投目。
初日の150㎏を超える強烈な引き込みが襲った。もう言葉も出ないほどの疲労感の中での釣りである。
無心に竿を引き上げ、続けてリールを巻く。数分後には、水面に巨大なゴライアスグルーパーが浮き上がった。嫁には遠く及ばなかったが推定200㎏越えの満足サイズ。
これで国へ帰れます!!
しかし、私に更に2匹のエイが残っている現実が突き付けられ、さらに2匹のゴライアスグルーパーとの闘いが待っていた。
その数時間後、放心状態の私を乗せた船は港に戻った。
帰国後、直ぐに仕事で出張にでた私に、嫁からメールが入った。『素敵で楽しい旅行をありがとう。』素敵で楽しい旅行がディズニーワールドだったのか、ゴライアスグルーパー釣行だったのは定かではないが、既婚者にとっては、円満な夫婦関係が次の釣行の可否に大きく影響する事は間違いないようだ。