石垣島の気温は12月末においても日中は20度以上、夜間でも17度ほど。あとは暖かい雨が降ってさえすれば両生類・爬虫類達の活性も爆上がり。続々と林道にさえ姿を魅せ始める。
あと数日で2023年を迎えるこの日、2022年も良い行いに努めた私に恵みの雨が日中から降り始めた。今夜は忙しくなるぞ。
今回は石垣島に棲む10種のカエルと爬虫類などをご紹介させていただく。中でも注目は子育てを行う唯一の国内種。石垣島と西表島にのみで観ることができる固有種アイフィンガーガエルだ。
アイフィンガーガエル(Chirixalus eiffingeri)
アイフィンガーガエルは、国内においては石垣島と西表島のみに生息。また、海外においては石垣島のお隣台湾にも生息している。3~4cmほどの大きさで樹上性の強いカエル。比較的山奥の森林に住む。彼らはオウギバショウの葉の隙間や樹木の洞(うろ)に溜まった雨水を好んで産卵を行う。産卵は一年を通して行われる。
このアイフィンガーガエルは洞などに産卵した後、洞で暮らすオタマジャクシに定期的に無精卵を産んで、それを食べさせることにより成長を促すと言った育児行為を行う。この特徴はヤドクガエルの一部にも観られる行動であるが、日本に生息するカエルの中では育児行為を行うのは唯一この種のみである。
オオハナサキガエル(Odorrana supranarina)
小型種が多い石垣島のカエル達の中では、大型のアカガエル科の国内種。基本は渓流沿い周辺に見掛けることが多いが、雨の降った後は林道でも比較的多く姿をみせてくれる。ハナサキガエルの仲間は沖縄諸島にハナサキガエル。奄美諸島にアマミハナサキガエル。八重山諸島にオオハナサキガエルと後述するコガタハナサキガエルの4種。その中でも特にオオハナサキガエルは大型になる。
コガタハナサキガエル(Odorrana utsunomiyaorum)
上記したハナサキガエルの仲間では最小種。オオハナサキガエルよりも上流部に生息している事が多い。
またオオハナサキガエルとの違いは大きさ以外に、背中のざらつきがある、目が大きい、鼻先が短い等の特徴がある。
ヤエヤマアオガエル(Rhacophorus owstoni)
石垣島で観られる唯一鮮やかな緑色のカエル。他のアオガエル同様樹上性が強い。森林から平野部まで幅広く生息している。
ヤエヤマハラブチガエル(Rana okinavana)
写真の様な泥地に穴を掘って産卵を行う。開発などで砂が流れ込み産卵場所が減少しており、今後の個体数の減少が懸念される。吸盤は発達しておらず、枯れ葉や倒木の下などに身を潜めている事が多い。
ヤエヤマカジカガエル(Buergeria choui)
奄美諸島から沖縄諸島まで生息するリュウキュウカジカガエルと同種とされていたが、2020年に新種として分けられた。リュウキュウカジカガエルとの外観相違は頭部が小さい。下顎周辺に黒い斑紋が入るなどの特徴がある。
ヤエヤマヒメアマガエル(Microhyla kuramotoi )
ヤエヤマカジカガエルと同時期に、ヒメアマガエルと別けられて新種認定された。宮古島からトカラ列島に生息するヒメアマガエルと比較すると鳴き声の相違、比較的大型と言った特徴がある。
サキシマヌマガエル (Fejervarya sakishimemsis)
宮古諸島及び八重山諸島に分布する。個体数は少ない訳ではないが警戒心が非常に強く逃げ足が速い。
2007年にヌマガエルから分かれて新種とされた。
シロアゴガエル(Polypedates leucomystax)
南アジアから東南アジアまで広く分布する。日本では琉球列島に生息域を広げ、現在では特定外来生物に指定されている樹上性のカエル。
オオヒキガエル(Rhinella marina)
中米原産のヒキガエル。世界各国にサトウキビ畑の害虫駆除を目的とし移入される。大型で強い毒をもつ本種は繁殖力も強く、外敵もいない事から大幅に個体数を増やしている。残念ながら石垣島で最も観察しやすいカエルである。
石垣島の蛇
サキシマハブ(Protobothrops elegans)
八重山列島の固有種。ハブと比較すると毒性は低いとされるが非常に危険。カエルや小型の哺乳類などを食べる。
サキシマアオヘビ(Cyclophiops herminae)
無毒。ミミズなど食べる大人しい蛇。八重山列島の固有種。
ヤエヤマヒバァ(Hebius ishigakiensis)
石垣島・西表島のみに生息する。有毒でカエルを好んで食べる。写真の奥に観られるのはヤエヤマアオガエルの卵塊。
今回7年ぶり石垣島でのカエル探しとなった訳だが、短時間で外来種も含めて、全10種のカエル達に無事再会できた。
生態系のピラミッドの中層に位置する彼達もまた他の生物同様で、環境変化などの影響を受けやすく、希少な種はいとも容易く自然界から姿を消す可能性がある。
厳しい大自然のつながりの中で今後も逞しく生き残っていってほしいものです。