ブルーフィンマシール(Tor khudree)とは
マシールといえば前回の記事でも書いたゴールデンマシールを想像するかと思います。そのゴールデンマシール編でも書きましたが、南アジア・東南アジアには16種類Tor属の魚が生息しています。インド国内に限定すると8種になります。
今回はその中の1種である、ブルーフィンマシール(Tor khudree)について紹介していきたいと思います。
タイにもブルーマシールと呼ばれている鯉科の魚がいますが、どちらのマシールも鱗が大きく、銅色の体色に青い鰭が特徴です。インドのブルーフィンマシールはTor属の魚になりますが、タイの魚はNeolissochilus属ということで、同じ鯉科の魚ではあるのですが、両種は別種の魚ということになります。
ブルーフィンマシールはインドの比較的広範囲に生息するということになっていますが、現時点では南インドのカルナータカ州、ケララ州のみで釣ることができています。
ブルーフィンマシール釣行記
今回の釣行はカルナータカ州。
ITで有名なベンガルール(旧名バンガロール)という都市がある州で、比較的高地にあります。年間を通して過ごしやすい気候で、長袖1枚あれば冬も過ごせる暖かい地域です。デリーからは2,000km離れており、飛行機で3時間くらい南東に下がった場所。出張が入れば、必ずブルーフィンマシールを狙いに行くことにしています。
観光などに特に興味もないので、早朝からやっているレストランで南インド料理の朝ごはんを食べます。
途中生ぬるいヤシの実ジュースを飲み、休憩をしながら3時間半かけて釣り場に向かいます。
ヤシの実屋さんはナイフで手を切るんじゃないかと思うくらいの早業でヤシの実を切ってくれます。
当初は大まかな釣り場を現地のインド人に教えてもらい、日本人だけでゴールデンマシールと同じくスプーンやミノーで狙っていました。
しかし、その狙い方では小型のマシールがポツポツと釣れるだけで、数も大きさも芳しいものではありません。どうやらルアーの選択や細かいポイントの選定に問題があったようです。
ある日、釣りに精通したインド人の友人に細かく状況を聞くことができ、そして案内をしてもらう事になりました。
そして、今回は釣り部のサダヲ会長と一緒です。
インド人の彼曰く、ペンシルベイトとかのトップウォータープラグが良いとの事、まさかと思いながらも念の為いくつかのペンシルベイトを準備します。
そして彼に案内されたのは、ダムからの放水が激しく流れて来るポイント。急流です。こんなところで魚は泳げるのか?魚が釣れるのか?ルアーはちゃんと泳ぐのか?疑問だらけでした。
急流の中上流からルアーをドッグウォークさせるのも、かなりの早巻きをしなければならず、ハイギアのリールが必要。ノーマルギアのリールだと間に合いません。ただルアーが、流れて来るだけになってしまいます。
ハイギアのリールを使い、できるだけ綺麗にルアーにアクションをつけようと四苦八苦していると、なんとかドッグウォークしているペンシルの下から突き上げるように食ってくる魚がいました。
後ろから追ってきて食ってきたというよりは、上流から川の流れに乗って川底を魚雷のように突っ込んできたかと思うと、真下からルアーを猛スピードで突き上げる感じです。
この写真ではあまりヒレが青く見えませんが、この魚がブルーフィンマシールと呼ばれているTor khudreeです。
水の中に入れると鮮やかな青が映えます。
鱗が大きく、ゴールデンマシールに比べると体高があり、鯉に比べると胴回りはスマートです。格好良い魚をまさかのペンシルベイトで釣ることができインドの友人に感謝です。
釣り部会長のサダヲさんはシンキングペンシルで。
まあまあサイズを釣っています。
ブルーフィンマシールはこの急流の中で生活しているので遊泳力が高く、過去の淡水魚最強レベルと思うくらいの引きが強い魚です。
下から突き上げてくる魚なので、ルアーのフロントフックにかかることが多く、フックもスプリットリングも強いものに変更する必要があります。
ルアーに食らいついてからの初速が凄く50cmくらいの魚でもリングが見事に伸ばされてしまいます。この魚の強さがよくわかります。
さて、先ずは釣れたのでサイズアップを狙いポイントを変えます。
少し川沿いに歩くと崖があり、ダムの放水路のすぐ下にあるポイント。激流です。
そろりそろりと降りて行き、釣り開始です。先ずはサダヲさんに釣ってもらいましょう。
流れが早すぎるので、バイブレーションを投げてもラインを止めておけば、ルアーは沈まずに水面直下でゆらゆらと泳ぎます。しばらくその状態で放置します。
たまに水流の影響で適度なアクションが生まれるのが良かったのか、下から突き上げて来るまあまあサイズの魚がいるのです。
何回かアタリを逃し、やっとフッキングできた魚は急な流れに乗ってどんどん下流へ泳いでいきます。
リールを巻いては出されてを暫く繰り返し、やっと上がってきた魚は見事な50cmオーバー。
なかなか立派!
バイブレーションの放置釣法で2匹釣れ、大満足のサダヲ会長。
私も50オーバーの魚釣ってみたい!
そのポイントは暫く休ませることにし、一旦下流に戻り、40cmくらいのを何匹か追加し、ダブルヒットもやってのけ、
そのポイントへサダヲ会長には内緒で戻ってみることにしました。
川幅は10mもなく、深さは3mほど、ダムは放水していないのですがこの勢いで流れ込んできています。ラフティングするには狭いですが良い感じですね。
ここには大きい魚が潜んでいるに違いない。トレブルフックを外し、事前に自作していたヒラマサ用のシングルフックに交換しました。勝負です。
もちろん使うのは実績のあったバイブレーション。
先ずはルアーを沈めてみて、流れに乗せながら扇状に探って行きます。
40cm位のアベレージサイズ。
やっぱりこの魚の引きは良い感じで楽しませてくれます。
まだヤツはいるだろうと思い、そのままキャストを続けます。
扇状にルアーを流し、足元の流れ込み直下のところでドスンというアタリがありました。今回の釣行では無かった確実に大きい魚を思わせるこのアタリは、前回悔しい思いをした釣行の時と同じで、悔しくも針を伸ばされて獲ることができなかった感触が過ぎりました。
フッキングできたけど、でもそこからが困るわけです。
強烈な引きの魚は流れに乗って下流へどんどん泳いでいきます。ドラグは比較的強く締めているのに糸もどんどん出て行きます。
自作フックとリングの強度を信じて焦らずゆっくり戦おうと思い、魚に主導権をくれてやります。しばらく続いた我慢比べに体力がなくなってきたのか、徐々にこちらに寄ってきました。
が、この急流のため、反撃に出られるとまた振り出しに戻ってしまいます。
何度もそんなにやり取りを繰り返し、やっと手にした魚は!
今まで見たサイズよりも大きく、立派なブルーフィンマシールでした。
自作したフックも頑張ってくれました。やっぱりフロントフックを食ってきます。
内緒でこの場所に戻ってきてナイスサイズな魚をこっそり釣っていたにも関わらずサダヲ会長は戻ってきてくれてランディングのお手伝い&写真を撮ってくれました。感謝です。
体高があって背鰭のところの盛り上がりが実にかっこいい魚ですね!
日本の鯉とは違い、どちらかというと太ったニゴイみたいな感じですが、この魚もインドを代表する淡水魚の1種と思っています。
しかも今回の釣行の最大サイズの65cmというサイズを釣ることができ、ちょっと満足しました。
帰り道はこの地域の名物料理
小山羊の片足が入ったマトンビリヤニ(インドではヤギがマトン肉となります)とバターチキンカレーを食べて終了です。
インド料理といえばただ辛いものを想像されることが多いですが、こちらは日本人の口に合ったスパイスの風味が効いたまろやかなお味。美味しくいただけました。ただ、量がもの凄いです。食欲も釣り欲もお腹いっぱいです。
後日談
後日、釣り部メンバーのロクさんが別カルナータカ州のとある場所でもっと大きい魚を釣ったという情報が届きました。送られた写真を見せてもらうと‥‥
なんとも羨ましいサイズを釣っているじゃないですか。
聞くと82cmで7kgだったそうです。
僕が釣って浮かれているサイズがお子様サイズのように見えてしまいます。かなり羨ましい。
こんな魚をみせられたら、次の出張が待ち遠しくて仕方ない。
このブルーフィンマシールは今まで最大で50kg以上の大きさまでなることが確認されているらしく(Wikipediaによる)、かなり大きくなる種でもあるようです。
確かに他の場所ではかなり大きいマシールが悠々と泳いでいるところも発見したので、次回記録更新を狙って探しに行きたいと思っています。
インド国内の飛行機の乗り継ぎが必要な釣行ですが、比較的楽に行ける釣行です。
アスリートのダッシュ並みの引きとパワーを体験されたい方歓迎します!是非!