アカメによく似た魚に『バラマンディ』という魚がいる。
釣って楽しく、食べて美味しい、そして何より見た目がカッコ良いアジアを代表するスーパースターだ。
今回は、そんなバラマンディを始めて訪れる『スラウェシ島』で釣り狙ってみた。
ついでの旅路、バラマンディ以外にも釣りたい魚がいたので、制限時間は36時間とかなり短め…。果たして岸からバラマンディが釣れる場所までたどり着けるのか…。
ゲスト様たちを見送り、インドネシア・スラウェシ島へ渡る
ボルネオ島でのジャングルフィッシングを終えて、僕はゲスト様方と共に下山した。渓流域に生息するパプアンバスという猛魚を狙った釣行だったのだが、今回のパプアンバス釣行には物語の続きがある。したがって、この釣行記はまたの機会とさせていただくとして、今回の目的地、スラウェシ島について紹介しよう。
スラウェシ島はインドネシア中部に浮かぶ約17.4万平方メートルという大きな島だ。因みに、世界で11番目に大きな島らしい。形はアルファベットのKのような形状で、島内最大都市はマカッサルだ。
スラウェシ島に渡った経緯
『デカいバラマンディが岸からルアーで結構釣れているらしい!それも街中で。』…。こんなフワッっとした情報の真相を探るという名目でスラウェシ島に向かう事になった。
釣り人の間で交わされる、デカいと結構釣れるというワードは非常に曖昧な情報だ。リテラシー能力を試される単語と言っても過言ではない。
バラマンディが釣れる街がどんな街なのか、本当にバラマンディは狙って釣れているのか、信頼できる人を探し、情報を仕入れること。できればこの手で釣り上げる。与えられた時間は36時間。さぁー釣り場開拓ミッションの始まりだ。
そもそもバラマンディってどんな魚?
バラマンディは、アジアからオーストラリアにかけて広く生息するアカメの仲間だ。
近年、タイや台湾における釣り堀(通称:バラ堀)で人気ターゲットとして日本人にも親しまれる魚だ。野生個体を高確率で釣ろうとするならば、資源管理が行き届いたオーストラリアでのボートフィッシングが最も手堅く釣果を揚げられる。一方で岸から野生のバラマンディを釣ろうとすると、これが意外と難易度が高く、生息域タイやマレーシア、シンガポールや台湾でも釣れるのだが、日本でアカメを釣るのと同じくらい、もしくはそれ以上に難しかったりする魚だ。
インドネシアならでは。釣り人集うお茶会に潜入
人脈形成という観点からバラマンディを釣り狙うアングラーと知り合うことが先決と考え、釣具店などを尋ねて『日本からバラマンディを釣りに来た!』と大袈裟に言って回った。
外国人が釣りに来るような街ではないので、僕の存在はSNSという電波の流れに乗り1時間もしないうちに町中に広がった。予想通り、近くのレストランに連れていかれ、あれよあれよという間に釣り人達が集り、20人規模の長い食事会が始まった。
ところで、インドネシアでは宗教上お酒を公の場で飲むことができない地域がある。その為、酒の代わりに飲むのがコーヒーや紅茶だ。僕はこのような飲み会を勝手に『お茶会』と呼んでいるのだが、とにかく長い。一刻も早く釣りがしたくてたまらない短期間遠征者にとって、これが退屈極まりなく、そして焦らせられるひと時だ。
とは言え、その土地のフィッシングチームとそれを束ねる人物に挨拶しておくに越したことはない。インドネシアでの旅的釣行はお茶会の時間も考慮してスケジュールを取るべきなのだ。
退屈なお茶会ではあるが、生の情報が沢山集まってくるため非常に効率的な情報収集術とも言える。一人ひとりのスマフォを見せてもらい、沢山のバラマンディの釣果写真や動画をチェックし、釣った場所と日時を自分のグーグルマップに記録していく。
皆が日常的にバラマンディを釣獲していることが明白となり、これまでフワッとしていた情報が現実のものとして確信する瞬間となった。そして、明日、パプアンバスを狙ったボートフィッシングに連れて行ってもらう約束を取り付けることもでき、決してコミュ力が高いとは言えない僕にしては上出来なお茶会となった。
街に到着してから8時間という時を支払い、情報の収集と腕が立ちそうな釣り人を目利きができたところで残り28時間…。翌日は徹夜になりそうなので、ビジネスホテルで良質な睡眠を取った。
お茶会の副産物“ボートからのパプアンバスフィッシング”
僕が滞在した街から昨日知り合った釣り人の車で移動し、昔ながらの造船所が数件並んだ河口部の小さな村にやってきた。
海から透明度の高い水が入り込み、水面にはボラやサヨリの姿が確認できる。期待に胸膨らませながら出船。幸先よくマングローブジャックがヒットしてきたものの、パプアンバスは5kgサイズが1チェイスのみで終了となってしまった。
個人的にとても悔しく、翌日もボートを出してもらいたいところだったが、残された時間は14時間。この後の夕マヅメから明日の夜明け頃までがラストチャンスだ。
夜通し案内してくれたA氏B氏C氏に感謝
昨日のお茶会でひと際物静かで控えめながら、バラマンディの釣り方を尋ねた時の答え方が一人だけ異次元だった人物がいた。皆から〇×川の橋が良く釣れる。とか、雨の後が良いと言った答えが返ってくるなか、A氏は紙に簡単なタイドグラフを書いて、この潮位は×〇川河口の左岸に入ってみて。とか、一般的には夜バラは上げ潮が良いんだけど、◇〇川の明暗は下げでベイトが流れた時がチャンス。とか。とにかく、アドバイスが具体的だった。そして何より俺が案内してやる!っていうオラオラ感が全くなかった。
そんな彼に僕は賭けていて、『明日の夜、バラマンディの夜釣りを案内して欲しい。できれば少人数で』そうやってお茶会後にSNSでお願いしていた。
約束の時間15分前にA氏はB氏とC氏を連れて現れた。最初は、ちょっと4人で陸っぱりすると、釣果的に厳しくなるかもと予想したが、彼らは僕にバラマンディ釣らすべく、キャストせず、それどころかB氏とC氏はベイトやボイルを探すために車で動き回ってくれた。こんなにも良くしてくれたら、バラマンディを釣らずには終えられない!久々にモチベーションが100%を振り切った。
夕マヅメにスーパーボイル発生!
夕マヅメ、案内されたのは一面10cm前後のボラだらけの船着き場だった。日暮れと同時にまるで高知の浦戸湾のようなスーパーボイルが発生したのだが、ベイトが多すぎてバイトさせられずに四苦八苦しているとA氏から移動を提案された。何でも、2時間後に下げ潮が効き始めるタイミングで時合を迎える明暗があるらしい。
明暗下げ始めで待望のバラマンディがヒット
ポイントに到着したのは丁度満潮のころ。照らされた水面には時々、サヨリやボラの姿が確認できる。流れが海に向かって効き始めると、『バンッ!!』というバラマンディらしい捕食音が響いた。時合開始の合図だ。
A氏からはポッパーの使用を勧められたが、まずは自分の理論を優先してシーバス用のミノーを結び、ロングキャスト。そしてゆっくりと糸フケを取りながら、ミノーを明るい場所から暗い場所へ流しこんでみると、金属的な『カンッ!』という衝撃が竿に響いた!疑いようもない。水ごとルアーを吸い込むバラマンディらしいバイトだ!
途中、何度も豪快なエラ洗いで応戦されるも、何とか浅瀬にズリ上げ、C氏が泥の中にも関わらずバラマンディに駆け寄り無事ランディング!
真っ暗な川に明かりを灯す橋の下で、大人4人が大はしゃぎだ!代わる代わる、皆と記念写真を撮り合いながら、旅をしていて最高の瞬間を僕は存分に味わった。
さぁー次は10kg越えを頼むぞ!と言われたが、3人の優しさと1匹のバラマンディのお陰で戦意喪失となった僕は、『インドネシア流のバラマンディマンチングが見てみたい!つまりは、4人で一緒に釣りがしたい!日本のルアーを使ってみたかったら俺のルアーを自由に使ってくれ!』そう提案した。
すると、3人とも満面の笑みで車に竿を取りに向かった。やっぱ、どの国でも、本当に釣りが好きで、ガチで釣りが上手い人達は、心に余裕があって凄いな!そう感じさせられる、スラウェシ島のバラマンディフィッシングだった。